SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

海外コンテンツマーケティング探訪~業界横断で使える「型」を手に入れる

二大グローバル飲料メーカーに学ぶ、ブランディング×コンテンツマーケティングの重要性

コカ・コーラとペプシコーラ、ブランディング戦略の違い

 多くの人にとって「コーラ」と聞いて思い浮かぶのは、コカ・コーラとペプシコーラではないでしょうか。両者は長年にわたりシェア争いを繰り広げています。しかし、コカ・コーラとペプシコーラの味の違いについて自信を持って語れるでしょうか。また、どちらのほうが質が高いか説明できるでしょうか。こう問われると、なかなか難しいのではないかと思います。

 ここで、興味深い実験結果を紹介します。科学雑誌「ニューロン」のホームページで公開されている実験結果によると、ブランド名を明かさない状態でペプシコーラ、コカ・コーラを被験者に飲んでもらい、どちらが好みか選んでもらったところ、結果はほぼ同じ割合で、好みが分かれていました。しかしブランド名が明らかになった状態で飲んでもらうと、コカ・コーラがより多くの人に選ばれるようになったというのです。

 この結果が示していることは何でしょうか。それぞれのブランディング戦略に注目して、考えてみたいと思います。

 ペプシコーラは商品の味を追求し、広告についても商品を前面に出したものや、有名タレントを起用したものが多くなっています。一方、コカ・コーラは運動会やデートなど、日常を切り取った広告を打ち出しています。つまり「コカ・コーラがある日常の物語」を作ろうとしているようです。東京オリンピックは延期となってしまいましたが、コカ・コーラを飲みながらオリンピックやスポーツを観戦している様子を描いたCMを見かけた方も多いのではないでしょうか。こうしたブランディングによって、「スポーツ観戦のお供と言えばコカ・コーラ」というイメージを定着させることに成功しているのです。

 その違いは、両者のInstagramアカウントを見ると一目瞭然です。コカ・コーラが商品をほとんど出さず、人の写真やメッセージを前面に出しているのに対し、ペプシコーラは商品の写真が目立ちます。

コカ・コーラとペプシコーラのInstagramアカウントからブランディング戦略の違いがわかる(タップで拡大)
コカ・コーラとペプシコーラのInstagramアカウントから
ブランディング戦略の違いがわかる
(タップで拡大)

単に「おいしい炭酸飲料」を売っているのではない

 公式YouTubeチャンネルで配信されている動画にも、両者の特徴の違いが表れています。コカ・コーラの動画の一つである「ONE LAST SUMMER」では、若者の夏休みの風景と物語を描いています。そして、肝心の商品はさりげなく映されているのです。徹底して「コカ・コーラがある日常の風景」を伝えているようです。

「ONE LAST SUMMER」のワンシーン。商品はさりげなく映されている
「ONE LAST SUMMER」のワンシーン。商品はさりげなく映されている

 一方、ペプシコーラの公式YouTubeチャンネルの動画「What Would You Do for Crystal Pepsi?」はなかなか強烈です。ペプシコーラのロゴが入ったシャツ、靴下、パンツを着用した青年がペプシコーラを一気に飲み干します。ちなみに、この動画は透明なコーラである「クリスタルペプシ」の宣伝動画です。

商品を前面に出したペプシコーラの公式YouTubeチャンネルの動画
商品を前面に出したペプシコーラの公式YouTubeチャンネルの動画

 ちなみにデータサイエンスサービスを提供するポルトガルのKalinaxのリサーチによると、世界シェアはコカ・コーラが圧倒しているとのことです。今のところ、「おいしい炭酸飲料」といった商品の質ではなく、「どんな世界を提供したいか」といったことを前面に押し出しているコカ・コーラがリードしているようです。

 とはいえ、前述の実験結果にも表れているように、味に関してペプシコーラが劣っているわけではありません。「それぞれのコーラの味の違いがわかる。そのうえでペプシコーラのほうが好きだ」という消費者も一定数いるはずです。「違いがわかる」という層に商品そのものの魅力を訴えかけるのも、ブランディングの手法の一つであると言えます

 ここまで見てきた飲料メーカーはBtoCのため、消費者と比較的近い距離にあります。一方、BtoBの場合は直接消費者と触れる機会が少なく、どうしてもエンドユーザーとの距離が遠くなりがちです。そのた、「ブランディングと言ってもどうすれば良いのか」と、悩む方もいらっしゃるかもしれません。BtoBのコンテンツについても、事例とともに考えてみましょう。

次のページ
エンドユーザー向けのブランディングを意識する

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
海外コンテンツマーケティング探訪~業界横断で使える「型」を手に入れる連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

山田 太一(ヤマダ タイチ)

エディター、コンテンツマーケティングコンサルタント。産経新聞記者、人材採用広告会社の営業を経て、クマベイスに入社。クライアントワークにあたるとともに、コンテンツマーケティングやコンテンツ戦略の海外事例を研究する。熊本県出身。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2020/11/18 07:00 https://markezine.jp/article/detail/34636

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング