コカ・コーラとペプシコーラ、ブランディング戦略の違い
多くの人にとって「コーラ」と聞いて思い浮かぶのは、コカ・コーラとペプシコーラではないでしょうか。両者は長年にわたりシェア争いを繰り広げています。しかし、コカ・コーラとペプシコーラの味の違いについて自信を持って語れるでしょうか。また、どちらのほうが質が高いか説明できるでしょうか。こう問われると、なかなか難しいのではないかと思います。
ここで、興味深い実験結果を紹介します。科学雑誌「ニューロン」のホームページで公開されている実験結果によると、ブランド名を明かさない状態でペプシコーラ、コカ・コーラを被験者に飲んでもらい、どちらが好みか選んでもらったところ、結果はほぼ同じ割合で、好みが分かれていました。しかしブランド名が明らかになった状態で飲んでもらうと、コカ・コーラがより多くの人に選ばれるようになったというのです。
この結果が示していることは何でしょうか。それぞれのブランディング戦略に注目して、考えてみたいと思います。
ペプシコーラは商品の味を追求し、広告についても商品を前面に出したものや、有名タレントを起用したものが多くなっています。一方、コカ・コーラは運動会やデートなど、日常を切り取った広告を打ち出しています。つまり「コカ・コーラがある日常の物語」を作ろうとしているようです。東京オリンピックは延期となってしまいましたが、コカ・コーラを飲みながらオリンピックやスポーツを観戦している様子を描いたCMを見かけた方も多いのではないでしょうか。こうしたブランディングによって、「スポーツ観戦のお供と言えばコカ・コーラ」というイメージを定着させることに成功しているのです。
その違いは、両者のInstagramアカウントを見ると一目瞭然です。コカ・コーラが商品をほとんど出さず、人の写真やメッセージを前面に出しているのに対し、ペプシコーラは商品の写真が目立ちます。

ブランディング戦略の違いがわかる
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単に「おいしい炭酸飲料」を売っているのではない
公式YouTubeチャンネルで配信されている動画にも、両者の特徴の違いが表れています。コカ・コーラの動画の一つである「ONE LAST SUMMER」では、若者の夏休みの風景と物語を描いています。そして、肝心の商品はさりげなく映されているのです。徹底して「コカ・コーラがある日常の風景」を伝えているようです。

一方、ペプシコーラの公式YouTubeチャンネルの動画「What Would You Do for Crystal Pepsi?」はなかなか強烈です。ペプシコーラのロゴが入ったシャツ、靴下、パンツを着用した青年がペプシコーラを一気に飲み干します。ちなみに、この動画は透明なコーラである「クリスタルペプシ」の宣伝動画です。

ちなみにデータサイエンスサービスを提供するポルトガルのKalinaxのリサーチによると、世界シェアはコカ・コーラが圧倒しているとのことです。今のところ、「おいしい炭酸飲料」といった商品の質ではなく、「どんな世界を提供したいか」といったことを前面に押し出しているコカ・コーラがリードしているようです。
とはいえ、前述の実験結果にも表れているように、味に関してペプシコーラが劣っているわけではありません。「それぞれのコーラの味の違いがわかる。そのうえでペプシコーラのほうが好きだ」という消費者も一定数いるはずです。「違いがわかる」という層に商品そのものの魅力を訴えかけるのも、ブランディングの手法の一つであると言えます。
ここまで見てきた飲料メーカーはBtoCのため、消費者と比較的近い距離にあります。一方、BtoBの場合は直接消費者と触れる機会が少なく、どうしてもエンドユーザーとの距離が遠くなりがちです。そのた、「ブランディングと言ってもどうすれば良いのか」と、悩む方もいらっしゃるかもしれません。BtoBのコンテンツについても、事例とともに考えてみましょう。