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MarkeZine Day 2020 Autumn Kansai(AD)

キャズムを超えたデジタル消費――アナログ中心のセールスを展開してきた企業が知りたいMA活用の基礎

 「Get closer to Customers」をテーマに、11月20日に行われたMarkeZine Day 2020 Autumn Kansai。MAツール「SATORI」の公式販売パートナー、マーケティングユニットの代表・高畑氏が登壇し、シーンごとのMA活用事例や、MA導入を成功に導くための「4つの投資」などについて語った。

デジタルシフトをピンチと捉えるか、チャンスに変えるか

 今年6月に開催したMarkeZineDay 2020 Summer Kansai参加者アンケートで、最も関心の高いテーマに選ばれた「マーケティングオートメーション(MA)」。スピーカーの高畑氏が代表を務めるマーケティングユニットは、Webサイト構築からMA導入、人材派遣まで、月額定額制で企業のマーケティングを支援している。また、MAツール(以下、MA)「SATORI」の公式パートナーとして、2019年度の販売実績数1位を誇る企業だ。本セッションでは、高畑氏のMA導入支援の経験を基に、MA導入・活用のポイントが語られた。

 まず高畑氏は、コロナ禍にともなう環境変化とデジタルシフトについて触れた。2020年、多くの企業がテレワークやオンライン商談、ウェビナーの開催など、マーケティングやセールス活動のデジタルシフトを迫られた。しかしそれは、「コロナ禍で突然起きたことではない」という。

 「マイクロソフトCEOサティア・ナデラ氏が決算発表で『この2ヵ月で、2年分に匹敵するほどのデジタルトランスフォーメーション(DX)が起きた』と述べましたが、今は既に起こっていた変化が加速している状態。つまり、イノベーター理論で言うところの『キャズムを超えた状態』です」(高畑氏)

キャズム理論とは、イノベーター理論における初期市場(「イノベーター」と「アーリーアダプター」)とメインストリーム市場(「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」)の間には、「キャズム」と呼ばれる深い溝(市場に製品やサービスを普及させる際に超えるべき障害)があり、この溝を超えることが市場開拓において重要だとする理論。
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 中小企業を中心にセールス支援や講演活動を行う高畑氏は、コロナ禍以前、全国各地に出張していた。しかし、今年はそのほとんどがオンライン商談やウェビナーへ変わったと話す。世のデジタルシフトがうかがえるエピソードだ。

 また、オンライン商談の増加にともない「ジャケットなどのトップスの売れ行きは伸びたが、ボトムスは低調」という、ウォルマートの事例を紹介。「消費者の行動が変化しています。自社にとって、今の時代をピンチと捉えるかチャンスに変えるかは企業次第です」と続けた。

マーケティングユニット 代表取締役 高畑 欽哉氏
マーケティングユニット 代表取締役 高畑 欽哉氏

セールスと対面で話したい顧客はわずか12%

 では、企業はどのように変化するべきか。高畑氏は、BtoBバイヤーを対象に実施された調査結果を示した。本調査によると、セールスと対面で話したいバイヤーはわずか12%。バイヤーの71%は、オンラインや電話で情報を得るという。

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 さらに別の調査では、多くのバイヤーがデジタルコンテンツを参考に、購入リストやベンダーリストを作成する結果が出ている。

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 高畑氏は、「オンラインで情報を収集・選択するお客様が増えた今、セールスの役割も変わっています。セールスとコンタクトをとるときには、既に購入プロセスの終盤戦なのです」と、従来の営業スタイルに警鐘を鳴らす。続いて、このような状況の中で普及してきたインサイドセールスについて言及した。

 インサイドセールスとは、一般的に架電やメールなどの手段を用いて、非対面でのアプローチを行い、顧客の購買温度を高める役割をもつ。最適なタイミングで、実際に商談を行うフィールドセールスへと受け渡すセールス部隊のことを指す。高畑氏によると、既に米国企業では、セールス人員のうち約50%をインサイドセールスが占めているという。対して日本企業全体では11.6%、創業21年以上の企業では8.5%。老舗企業ほど新たなセールスのスタイルに対応できていない事実を突きつけた。

 「コロナ禍の前の状態に戻ることはない」と語る高畑氏。インサイドセールスを導入する基盤として欠かせない、MAの解説へと進んだ。

マーケティングとセールスを結ぶ「MA」

 高畑氏いわく、MAとは「Webサイトへ訪れた見込み顧客の行動履歴データを基に、実名化を促進し、自動追客によってセールスを最適化するデータ・ドリブンツール」。様々な企業がMAを提供しているが、高畑氏が導入支援を行う「SATORI」は、日本のマーケットに適した国産のMAとして支持されている。

 MAの代表的な機能は次の3つだ。

  1. Webフォームの入力から顧客情報をデータベース化
  2. シナリオによる自動メール配信
  3. 顧客行動の可視化とアラート

 これらを組み合わせると、一連のマーケティング・セールス活動が自動化できる。たとえば、Webサイトフォームから問い合わせをした顧客が、後日メルマガからある資料をダウンロードしたとする。MAではその行動を受け、自動的にダウンロードした資料に関連するお役立ち情報メールを送り、追加の資料などを届けることが可能だ。また、「サイトを複数回閲覧」「メールをあまり見ない」など顧客の行動に合わせて、営業やマーケターが次のアクションを判断できるようなアラートも仕込める。

 「MAは、セミナーなどのイベント集客から顧客のリスト化、追客、顧客行動の可視化、セールス活動まで、マーケティングとセールスの各フェーズを1本の線で結び、流れをコントロールする役割を担います」(高畑氏)

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シーンごとに最適な施策を/MA活用事例5つ

 続いて高畑氏は、MAを用いたマーケティング、セールス活動の事例を5つ紹介した。

1.セミナー申し込み者のフォロー自動化で、クロージングに集中!

 集客においては、自社サイトや広告、SNSから情報を発信し、Webフォーム経由で申し込みを募るのが一般的だろう。MAを活用すると、セミナー実施日の3日前や当日、申し込み者に対しリマインドメールを自動的に配信することが可能だ。セミナー終了後は、アンケートや資料ダウンロードURLの案内も自動で行える。

 また、セミナー後に配信するメールに反応した顧客にはタグという目印が付与され、「関心度の高い潜在顧客」として認識。価格表ページを複数回閲覧するなど、商談化につながるアクションにフラグを立てておき、その顧客がアクションしたら、セールス部門へアラートを出す設計も可能。これまでセールス部門が個別に対応していた領域が自動化され、クロージングに集中できるのだ。

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2.セグメント機能で「顧客の検討に対する温度感」を見える化

 MAの機能の一つに、Web上での特定のページへアクセスしたカスタマーをグルーピングし計測するセグメント機能がある。「セグメントのポイントは、顧客の“購買に対する検討の温度感”を見える化すること」と高畑氏。たとえば、顧客がサイト内の価格表やよくある質問ページなど契約前によく閲覧されているページを繰り返し見ている場合は、「情報を熱心に追っている購買意欲の高い顧客」と仮定できる。

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 また、目指すコンバージョンの1つ手前によく見られているページに接した顧客をセグメント設定しておくと、顧客の背中を押す、購買意欲を引き上げる施策を打つことが可能だ。

3.顧客のアクションへの一押しに!ポップアップ施策

 また前述のセグメント設定は、ポップアップ施策で活かすことができる。たとえば「工場の見学申し込み」をコンバージョンとした場合、申込みに至る前によく見られているページを特定し、セグメント設定を行う。すると、ユーザーが特定のページを閲覧しているとき、ポップアップを表示し、工場見学への申し込みを促すことが可能だ。「ポップアップは使うタイミングが非常に大事で、誰にでも・いつでも表示させることは効果的ではありません」と高畑氏は説く。セグメントに適したタイミングで活用すると、顧客のアクションへの最後の一押しとなる

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4.商談後のメールのテンプレート化で業務効率化

 商談後に送るメールは、テンプレートを設定しておくと、顧客との資料の共有などを迅速に行うことができ、俗人的なヌケ・モレが減り、業務の効率化につながる。また、「セールススキルの標準化」にもなると高畑氏。

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 「セールスによりメール作成の得手・不得手もあることでしょう。アクションにつながりやすいメールの文章を定型文として採用すると、セールス全員に知見が共有され、セールス組織としてのスキルアップにもつながります」(高畑氏)

5.匿名顧客の実名化を促すプッシュ通知

 プッシュ通知は、匿名顧客に自社を思い出させる看板のようなものと考えることができる。高畑氏によると、プッシュ通知により3〜10%程度の顧客がサイトに戻ってくるという。「一度サイトを離れても、プッシュ通知で自社を思い出し、再訪につながることで、アプローチできるタイミングが生まれる。匿名顧客の実名化を促すメリットがあります」と高畑氏は述べた。

MA導入が上手く行かないのは「4つの投資」ができていないため?

 先述の活用事例のように、MAの様々な機能を組み合わせることで、業務の効率化やスキルの標準化が期待できる。しかし、導入したものの上手く活用できずに悩む企業も多い。高畑氏は締めくくりのアジェンダとして、「MA導入を失敗しないための3つのポイント」挙げた。

 1つ目は、KPIの設計だ。数字を管理せず、肌感覚で案件を追う企業は少なくない。MAの運用には、データを把握し、数値で経営判断をする基盤が必要だ。「ビジネスの成否を分けるのはデータですが、知見も重要です。今まで培ってきた経験に、正しいデータが加わることで、精度が上がるのです」と高畑氏は話す。

 そして2つ目のポイントは、4つの投資だ。ビジネス成果を阻害する4つの要因は「集客」「コンテンツ」「スキル」「ノウハウ作り」。これらへ投資をせずに、事業の成長はないという。

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 集客への投資についてマーケティングユニットの取り組みを例に挙げると、ブログの継続的な更新を行っているそうだ。「どんな情報で顧客へ貢献するか?」を考え運用した結果、取り組みから2ヵ月でアクセスは3倍に伸びた。

 「MA導入を成功に導く3つのポイント」の最後は、アナログとデジタルを同等に重視することだ。顧客の消費行動が変化しているとはいえ、デジタル一辺倒になることが正解ではない。デジタルとアナログが入り交じったハイブリッドなマーケティングフローを構築することが求められる。

 「マーケティングは、お客様から買いますと言っていただくための活動のことであり、お客様のためにあります。ですから、目的と手段を間違えずに、お客様のために最適なフローを作ることが大切です」(高畑氏)

 高畑氏は、ピーター・ドラッカー氏の言葉「未来を予測する最良の方法は、自ら作り出すことである」を紹介し、「自分たちの力で、自分たちの未来を作る。そのような気概を持ち、取り組んでいきましょう」と呼びかけ、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/02 10:00 https://markezine.jp/article/detail/35021