デジタルシフトをピンチと捉えるか、チャンスに変えるか
今年6月に開催したMarkeZineDay 2020 Summer Kansai参加者アンケートで、最も関心の高いテーマに選ばれた「マーケティングオートメーション(MA)」。スピーカーの高畑氏が代表を務めるマーケティングユニットは、Webサイト構築からMA導入、人材派遣まで、月額定額制で企業のマーケティングを支援している。また、MAツール(以下、MA)「SATORI」の公式パートナーとして、2019年度の販売実績数1位を誇る企業だ。本セッションでは、高畑氏のMA導入支援の経験を基に、MA導入・活用のポイントが語られた。
まず高畑氏は、コロナ禍にともなう環境変化とデジタルシフトについて触れた。2020年、多くの企業がテレワークやオンライン商談、ウェビナーの開催など、マーケティングやセールス活動のデジタルシフトを迫られた。しかしそれは、「コロナ禍で突然起きたことではない」という。
「マイクロソフトCEOサティア・ナデラ氏が決算発表で『この2ヵ月で、2年分に匹敵するほどのデジタルトランスフォーメーション(DX)が起きた』と述べましたが、今は既に起こっていた変化が加速している状態。つまり、イノベーター理論で言うところの『キャズムを超えた状態』です」(高畑氏)
キャズム理論とは、イノベーター理論における初期市場(「イノベーター」と「アーリーアダプター」)とメインストリーム市場(「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」)の間には、「キャズム」と呼ばれる深い溝(市場に製品やサービスを普及させる際に超えるべき障害)があり、この溝を超えることが市場開拓において重要だとする理論。
中小企業を中心にセールス支援や講演活動を行う高畑氏は、コロナ禍以前、全国各地に出張していた。しかし、今年はそのほとんどがオンライン商談やウェビナーへ変わったと話す。世のデジタルシフトがうかがえるエピソードだ。
また、オンライン商談の増加にともない「ジャケットなどのトップスの売れ行きは伸びたが、ボトムスは低調」という、ウォルマートの事例を紹介。「消費者の行動が変化しています。自社にとって、今の時代をピンチと捉えるかチャンスに変えるかは企業次第です」と続けた。
セールスと対面で話したい顧客はわずか12%
では、企業はどのように変化するべきか。高畑氏は、BtoBバイヤーを対象に実施された調査結果を示した。本調査によると、セールスと対面で話したいバイヤーはわずか12%。バイヤーの71%は、オンラインや電話で情報を得るという。
さらに別の調査では、多くのバイヤーがデジタルコンテンツを参考に、購入リストやベンダーリストを作成する結果が出ている。
高畑氏は、「オンラインで情報を収集・選択するお客様が増えた今、セールスの役割も変わっています。セールスとコンタクトをとるときには、既に購入プロセスの終盤戦なのです」と、従来の営業スタイルに警鐘を鳴らす。続いて、このような状況の中で普及してきたインサイドセールスについて言及した。
インサイドセールスとは、一般的に架電やメールなどの手段を用いて、非対面でのアプローチを行い、顧客の購買温度を高める役割をもつ。最適なタイミングで、実際に商談を行うフィールドセールスへと受け渡すセールス部隊のことを指す。高畑氏によると、既に米国企業では、セールス人員のうち約50%をインサイドセールスが占めているという。対して日本企業全体では11.6%、創業21年以上の企業では8.5%。老舗企業ほど新たなセールスのスタイルに対応できていない事実を突きつけた。
「コロナ禍の前の状態に戻ることはない」と語る高畑氏。インサイドセールスを導入する基盤として欠かせない、MAの解説へと進んだ。