デバイスの在庫管理、キッティングから配送まで引き受け
――OMO型ビジネス支援の内容について、具体的にお聞かせください。
松尾:サービスを導入する際に超えるべき「物理的なハードルのすべてをお引き受けする」というコンセプトでお手伝いしています。たとえばデバイスの在庫管理から加盟店ごとの個別の設定、キッティング、配送などのオペレーションを担います。また、こうしたデジタルサービスはローンチ当初は規模が小さくても、拡大するときは一気に拡大するので、それを支えるオペレーションも繁閑の差が非常に大きくなりがちです。その点、水上印刷では幅広いクライアントからお仕事をいただいており、部署を越えて柔軟に作業スタッフや作業エリアを組み替えられますので、こうした繁閑の波にも柔軟に対応可能です。あるクライアントの事例で端末をキッティングさせていただいたのですが、1発注あたりの作業台数が数百台~10,000台以上と非常に幅広いケースもありました。
植野:開発したサービスを広くリアル店舗に導入してもらいたいとき、水上印刷さんは心強いパートナーだと思います。デジタル事業者にとって、店舗廻りの業務は、幅広く知見を持っていて、ノウハウがあるところに任せてしまうほうが合理的でしょう。お店チェーンごとにまったく違うノウハウが必要になりますし、その能力を高めたとしても本業での価値を高めることにはつながりにくいからです。
――店舗とデジタル事業者、双方の課題を解決するサービスなのですね。支援の例についても教えていただけますか?
松尾:たとえば店舗にビーコン端末を置いて、近くを通った人を計測して来店分析をするようなサービスについては、ビーコン端末への個別の店舗情報の書き込みやアプリの動作チェック、製品の梱包を行い、誤配送防止のための専用ラインやシステムの開発、配送業務などを提供させていただきました。
当社は社名の通り印刷業から事業を開始しましたが、現在は印刷業で培ったマス・カスタマイズ技術やロジスティクスのノウハウを活かし、「マーケティング・オペレーション改善企業」として、お客様のマーケティング周辺業務の非効率を共に解決することを目指しています。今回ご紹介したOMO型ビジネス支援もこの一環です。
店舗からの問い合わせ対応やマニュアル作成も
――オペレーションの煩雑さが取り除かれることで、スムーズな導入・運用が可能になりますね。
松尾:はい。加えて、店舗側の負担を取り除くためのより積極的な支援として、設置や利用方法を説明するマニュアルや動画を制作したり、店舗からの問い合わせに対応するコールセンター機能を提供したりといったことも行っています。
植野:店舗の従業員へのエンパワーメントはサービスが真に使われるものとなるために欠かせないことですが、事業者がコールセンターを自社で持つというのは、難易度が高いと思います。どこまでを内製化してどこを外注化するといいかという見極めは難しいのですが、こうしたサポートは、似たような事業を自分たちで横展開しようという意思でもない限り、外注するのが良いのではないでしょうか。
松尾:コールセンターには、使い方や設定方法に関する質問から、画面がフリーズしたり壊れたりといった相談、お店が閉店したので端末を返却したいという要望など、幅広い内容が寄せられます。デジタルサービスが円滑に使われるようになるためには、こうした”泥くさい業務”を疎かにすることはできない、と改めて感じます。