海外で「分析の自動化」を実現させてきた仕組み
――そうした背景の中、御社ではデータをインテリジェンス化するためのツールとしてユーザー行動分析ツール「Amplitude」をグローバルに展開されています。改めて、その機能の概要と強みを教えてください。
米田:Amplitudeはいわゆる分析基盤で、よく比較されるアナリティクスなどとの大きな違いは、よく使われる分析・グロースハックの手法を自動で実行できる「チャート」機能があることです。これにより、分析の専門家がいなくともデータから施策改善の示唆を得ることが可能になります。
チャートには、先程の事例のように「マジックナンバーを見出す」分析や、あるいは「同一の行動を取る人をまとめペルソナ化する」といった14種類を用意しており、これによって本来時間のかかる作業を省力化・自動化しています。
このチャートのベースとなる、分析手法、グロースハックの手法は、随時アップデートしています。弊社が開催する年次イベント「Amplify」において、世界1万人以上の参加者らと共に最新の事例・手法を学習することで、厳選した意義のある手法を取り入れています。
4週間かかる分析を5分で完結
――Amplitudeに用意されたチャートでは、具体的にどのような分析が可能なのでしょうか。いくつか実際に見せていただけますか。
米田:3つのチャートを用いて解説します。
1つ目は、過去データからお気に入り登録やコンバージョンに至るまでの動線がわかるチャート「Pathfinder」です。動線がわかれば、効果的な接触ポイントでクーポンを出す、離脱があれば違う導線を案内する、導線に有効なUXに変えるなどの施策を打てます。
たとえば、音楽配信サービスで、ある音楽をお気に入り登録した人たちをPathfinderで分析すると、そのうち実際に音楽を聴いてから登録した人は66.7%、残り33.3%は音楽を聴く前に登録した人たちだとわかります。このように指定した結果(コンバージョン)に至るまでの、ユーザーの行動の流れが詳細にわかるのです。
米田:多くのユーザーがたどる「太い」動線を探れるだけでなく、対象を特定月の新規ユーザーなどに絞り、各月の動きを比較することも可能になります。
2つ目は「Lifecycle」。これはユーザー全体を、アクティブユーザーの新規ユーザー/定着ユーザー/復帰ユーザー、そして休眠ユーザーに4つに分類し、割合の比較などができるチャートです。
米田:これで分析すればサービスが新規、定着、復帰どのユーザーで支えられているかなどがわかります。たとえば、新規が大半なら登録が途絶えた瞬間にアクティブが激減するという潜在リスクと課題が見つけられます。
また休眠についても「新規→休眠」「定着→休眠」「復帰→休眠」といった変化も可視化でき、「新規→休眠」が多いのであれば「ニーズとサービス内容のミスマッチが生じているため要改善」という分析結果を出せるわけです。
そして3つ目が「Compass」。いわゆるマジックナンバー抽出チャートです。たとえば、新規ユーザーの4週間後のリテンションを相関関係スコア、アルゴリズム、公式を用いて予測できます。これで「7日間に2回プッシュする」「UXを変更する」といった取り組むべき改善の示唆を、自動的に出せます。
米田:このように人力では4週間かかるような分析をAmplitudeなら、わずか5分、10分でできることになります。また複数チャートを組み合わせて分析にかけることで、統計学に詳しくなくても精度の高い結果を得られます。