「美容室専売」の魅力や価値を伝えるために
いいたか:近年ではSNSマーケティングが多くの企業に浸透していますが、自社のモデルとなる事例が見つからない企業も多いのではないでしょうか。今回はBtoBtoCのアプローチに取り組んできた事例として、美容室専売の化粧品ブランドであるミルボンさんにお話をうかがいます。まず、御社がSNSをマーケティング活動の一環として実施し始めたきっかけを教えていただけますか?
竹渕:ミルボンは美容室専売のヘアカラーやシャンプー、トリートメントなどを製造販売している化粧品ブランドです。元々は「表舞台に立つ美容師の方々を輝かせるために裏方に徹する」という姿勢で事業活動をしていました。
竹渕:しかし、2010年代以降は、業界のトレンドの中でもヘアケアサービスの重要性が高まり、美容室でもヘアケア商品をお客様に使ってもらう、販売することが重要になっていきました。ドラッグストアなどで販売されているシャンプーやトリートメントと、比べられ始めたのです。
そうした背景から、美容室も当社も、お客様にミルボンを裏方ではなく「ブランド」として認知していただくこと、美容室専売商品の魅力や価値を広く伝え、サロンの売上に貢献することが重要なのではないか、と危機感を持ちました。
池田:そこで、ヘアケア商品を購入する際に参考にする情報を調査したところ、雑誌などのメディアを重要視しているという声が大きかったのです。ですが、参考にしているメディアは各媒体に分散してしまうため、媒体を選択してプロモーションを仕掛けることは難しいと感じました。それであれば、特定の媒体ではなく、プラットフォームにおいてコミュニケーションをきちんと設計する方が、美容師の方々の支援になるような顧客認知を得られるようになると考え、SNSの活用を進めていきました。
また、現実的に続けられる戦略を立てていくことを考えたときに、SNSは少しずつ予算を増やしながら成果を積み上げられるだろうと思いました。最初の1年はほぼ予算ゼロでコンテンツの制作から運用まで全て内製スタートしましたね。
いいたか:ヘアケアというプロダクトでありながら、BtoBtoCであることが、メディアとチームを組むときに難しい点ですね。直接的な貢献率が出せないですし、美容室内でお客さまが参考にする情報としてはありですが、掲載時に読者側に美容室に行く気持ちがなければ、ブランド名を忘れられてしまう。SNSで得られる継続的なアテンションのほうが、質として良いのかも知れませんね。
ユーザーの中に溶け込み、役立つ情報を発信
いいたか:当初はどのような施策を行っていたのでしょうか?
竹渕:開始当時は、短期的な売上を狙うというより、カスタマーサポート的な使い方をしていました。アカウントを作る以前にエゴサーチをしたとき、「この商品はどこで買えるの?」「この2つの商品の違いは何?」といった質問が放置されているケースが多かったためです。UGCが伸びたときにリプライをしたり、質問があったときにそれを解決するコンテンツを提供したりしていました。
最初の1年の運用では、コツコツと商品紹介やオウンドメディアの記事の紹介を続け、数千フォロワーまでは増えていきました。しかし、当初描いていた”SNSを重要視されているお客さまと美容師の方にブランドのことを伝える”という意味では、思った以上に伸びづらかったのが正直な感触でした。もっと様々なお客様に知っていただき、美容師の方々に伝わるようにするためには、もう一段上のステージに上げなければと考えました。
いいたか:さらに本格的にSNSを動かすことにしてからは、取り組みがどのように変わったのでしょうか?
池田:公式としてよりアクティブになるべきだし、もっとユーザーの中に溶け込んだほうが良いという考えに至りました。ミルボン商品のツイートを積極的にリツイートしたり、引用してコメントを返したりなど、ユーザーの皆様とのコミュニケーションをしっかりと取っていきました。
ただ、そのようなリアクション型の取り組みだけでは、UGCを出してくれるユーザーや話題の広がりが弱いです。単純な商品の紹介だけでなく、Twitter上で話題になっているヘアケアに関する悩みを解決する方法の提示など、役に立つ情報を入れていきました。
ユーザー同士の会話に対するリアクションを高めつつ、オリジナルのオーガニック投稿の質も上げる。この2つを両立できるように取り組みました。