自社の世界観と役立つ情報を両立させた投稿
池田:Twitterでの歩留まりから、Instagramの活用も開始しました。こちらでは、一度インナーブランディングのため、オシャレな方向性に振ってみたところ、既存のユーザーとの乖離が大きく、結果インプレッションが伸びないという失敗も経験しています。
朝山:InstagramでUGCを出すには、UGCの起点となってくれる良質なフォロワー基盤を作っていくことが大事です。そのためにはリーチを伸ばし、アテンションを取っていくことが重要になります。
リーチを伸ばすためにどのような投稿をすれば良いのかを池田さんと分析したところ、ユーザーにとって有益な情報で、保存されるコンテンツが圧倒的に伸びることがわかってきました。

ホットリンク マーケティング部部長 兼 コンサルタント 室谷良平氏
朝山:保存数やリーチが伸びる投稿にはどのような傾向があるのかを細かく分析すると、「ヘアスタイリングの仕方」や「商品が多くて選べない人に向けたポジショニングマップ」といった情報が求められているとわかりました。また、カルーセル投稿で画像を複数枚入れる際の枚数、色味、キャプションの文字量と文字の大きさ、追加すべきハッシュタグなどについても、成功確率が高まるポイントがわかりました。
池田:7月末からはコンテンツを変え、カルーセルの投稿を入れてエンゲージメントを伸ばしてみたり、親和性を感じやすいクリエイティブに変えてみたり、試行錯誤をしました。今はUGCが出るようになっています。
室谷:たとえば、画像投稿では単に情報量の多い投稿を行うのではなく、1枚目はビジュアル重視の画像にし、2枚目以降に情報を伝える画像を設定する、といった工夫をしました。ぱっと見はブランドイメージに沿った美しさを担保しながら、情報の濃さによって保存数、エンゲージメントも伸ばすという狙いです。これによって、ミルボンとしてのブランディングも保ちつつ、Instagramでの伸びやすさを兼ねた、ハイブリッドな投稿を量産できる体制になりました。
メンション付きのUGCが約6倍に増加
竹渕:わかりやすいコンテンツを出していくと、ブランドの世界観が好きな方からすれば、ダサい印象になってしまう。「髪が美しくなる5つのポイント」みたいな投稿をすると伸びますが、それがずっと続いていると、ユーザーが飽きて、離れていってしまうんですよね。
いいたか:ブランドにはブランドの想いがあるので、バランスは難しいですよね。理想との間で、分析からユーザーが共感する投稿を導いたのは、とても大きな成果だと思います。
朝山:結果的に、そこから3ヵ月ほどでフォロワーが約3万人増えましたね。その間に行ってきた投稿の中には、保存数1.2万、リーチが63万インプレッションを記録したものもあります。これらの投稿が発見タブやおすすめに表示され、多くのユーザーに見てもらえたことが大きいですね。
UGCも増えていきました。メンション付きの投稿は2020年1月時点で1日10件ほどだったものの、同年9月時点では1日60件という日もあり、6倍近く伸びています。ストーリーズのメンションのスタンプを付けた投稿は、4月時点では1日に多くて9件ほどだったのが、9月には10倍の90件に。「#ミルボン」を付けた投稿は3月時点で1日200件ほどだったのですが、約1.3倍の300件ほどになっています。
竹渕:美容師さんのUGCも増えた印象があります。やはりセンスがある投稿へのリアクションは増えていきます。ブランドのアカウントのタイムラインを見て、お客様をリードするような投稿かどうかを判断されているようです。
朝山:メンションすることで自身の世界観が崩れることを懸念する美容師さんもいます。しかし、ミルボンさんの投稿はブランドイメージと情報量のバランスが取れているので、彼らもメンションがしやすくなったと思われます。