顧客接点・体験をデジタルだけで考えてはならない
もちろん「聴く」のはSNSの声だけではない。CRMやデバイスなど様々なデータからも顧客の声を聴く必要がある。
その観点で重要なものが「集める」だ。顧客に関する様々なデータを集め、マーケティング・ビジネス要件に合わせて細分化していく。
「デジタルマーケティングの歴史は、データ収集と分析の歴史といってもいいかもしれません」と、熊村氏はデータ収集の重要性を説く。
これまでもマーケターは、顧客の直接的なデータであるCRMから始まり、Web・アプリ等の行動データ、SNS等から導き出せる行動データなどを集め、顧客像を類推してきた。しかし、データの質を考えた時に最も重要なのは、やはり顧客から直接集めるデータだ。
オンライン・オフライン含めて、ありとあらゆる接点から顧客の動きを理解・把握するデータを集める。それをもとに顧客の期待値を見極めて、期待を上回る体験を提供することが重要だと熊村氏はいう。
実現するためには「お客様の人となりを把握できるだけの情報を集めているか、ビジネスやマーケティング要件に合わせて細分化できるか、様々なチャネルに合わせて有効活用できているかが問われる」と熊村氏。
これまでのデジタルマーケティングは、デジタルな接点から顧客データを集め、デジタルな接点からデジタルな体験を提供する取り組みが大半だった。しかし、近年のデジタルマーケティングは、その姿を変え始めている。
「そもそも体験はデジタルに限りません。デジタルの接点だけでは足りないのです。オンライン・オフライン問わず、最良の体験を提供する。ここが、『お客様を中心にした体験の質』が問われる部分です」(熊村氏)。
例えばセールスフォースのCustomer 360 Audiencesではすべての顧客データの取得し、セグメント化、アクティブ化する。このように、あらゆるデータを分析し、適切なあらゆるタッチポイントに出力するツールを軸として、顧客中心の体験をデザインすることが求められているのだ。
「適切なメッセージをリアルタイムに」を実現する
「話す」とは、適切なチャネルを用いて適切なメッセージを届けることだ。
今、企業自らの情報発信姿勢が問われている。特にコロナ禍中は玉石混交の情報が氾濫し、情報に対する信頼度が低下している。今、企業に求められるのは、「顧客の属性やニーズに合わせたメッセージを、直接、素早く正確に投げかけていくことで信頼を得る」ことだ。
「デジタル上できちんとした情報を提供できない企業は、お客様のニーズに応えられなくなっているといってもいいかもしれません」と熊村氏は危惧する。
だが、単純にメッセージを発信すればいいというものではない。実際のオペレーションに落とし込んでコミュニケーションを考え、カスタマージャーニーを設計する必要がある。
一言で表現すればシンプルだが、「理想のOne to One」のカスタマージャーニーを構築するためには、こなすべきタスクも多い。当然、ツールが必要だ。「Salesforce Marketing Cloudはこの分野を長くリードしてきた実績があります」と熊村氏。
続く4つ目の「応じる」とは、顧客のリクエストや行動に合わせてリアルタイムに応じることだ。
顧客体験の質を決定づけるのは「Why・What・Who・Where・When・How」(5W1H)の徹底だ。このうち今、最も重要視されているのが「When(いつ)」だという。
「提供のタイミングが『今すぐ』となった時点で、残りの5項目がすべて用意されていなければなりません。これは簡単そうに見えて、非常にハードルが高いです。なぜなら、この5つは異なるシステム上で回っており、それぞれ異なるオペレーションで行われている場合が多いからです」(熊村氏)
リアルタイムの重要性が高まる時代には、「今すぐ」体験を提供できる体制を整えておく必要がある。
セールスフォースではInteraction Studioを提供。リアルタイムの人軸かつ時系列のデータ統合を行い、顧客の体験スピードに合わせたセグメント化をしていき、オンライン・オフラインを問わないアクション指示を出すことを実現できるという。