自社Webサイト内の検索体験が与える影響
廣川氏は検索メディアおける検索に続いて、企業Webサイト内の検索にも言及した。
廣川氏が示す企業のウェブトラフィック流入のデータによると、直接流入は29%に上り、流入者はサイト内で情報を探し求めていることがわかる。しかし、サイト内検索を設置している企業は多い一方、より良い検索体験のためのPDCAを回している企業は少ないという。
従来のサイト内検索では、サイト内をクローリングし、検索ワードがマッチしたサイトのリンク一覧を表示することが大半だった。
しかし、キーワードに反応してしまい、たとえば「求人 東京」と検索しているにもかかわらず、「求人」だけに対応して大阪の情報を表示したり、「東京」に対してセール情報が表示したりするなど、一部一致となっていた問題があった。
これにより、サイト内での質の低い検索に不満を持っている人は86%にもなるという。再訪問したくないという人も7割に上り、その結果、検索サイトに逆戻りし、他社サイトに流れるなど、検索が収益を促進するはずが逆に悪影響を及ぼしかねない。
しかし、検索を行うユーザーこそが最高の顧客になるとも廣川氏は語る。検索を行うユーザーはコンバージョンが約2倍で平均単価も高いのも特長なのだという。
収益を促進するサイト内検索という新たな世界観
Yextでは、検索メディアにおいて検索体験を向上するListingsとPagesのほかにも、自社サイト内で最適な答えに導くことを可能にする製品として「Answers」を提供している。
サイト内検索のAnswersでは、顧客の検索意図を捉え、関連する答えをセクション分けして提示することで、問題を解決するのと同時に収益への導線を敷く。
廣川氏はデモ動画を使い、Answersを導入したWebサイト内で「コロナ マスクメイク おすすめ」を検索する様子を見せた。この検索結果では、マスクメイクの崩れを防ぐ「商品」の紹介のほか、悩みの解決方法を示した「FAQ」、試してみたいが購入までのハードルが高いと感じる人に向けたモニターキャンペーンといった「申し込みの動線」、オフラインの送客を促す「近くの店舗情報」や「経路検索」なども表示している。検索ひとつで最終的なコンバージョンまでつながる導線を提供できることを示した。
またAnswersでは、検索体験が向上するだけではなく、顧客が実際に何を検索したのかという情報も蓄積される。これにより、検索した情報に対してクリックの有無やどういった情報を返したのかを確認でき、サイト内コンテンツのPCDAが回せるようになる。
廣川氏が挙げたイギリスの大手通信会社の事例では、こうした取り組みの結果、コンバージョン率が改善。サイト内検索を使用しない顧客と比較してAnswersを使用した顧客のコンバージョン率(購買率)は+2.2倍になったという。また米国州政府の事例では、サイト内検索を使用しない顧客と比較してAnswersを使用した顧客のサイト滞在時間は+3.7倍、コンテンツの閲覧量は+1.6倍というデータを紹介した。
「求められているものがシンプルに返せているため、他社Webサイトを見る必要がなくなり、結果、自社サイトのコンテンツ閲覧量が増えます」(廣川氏)
Yextでは自社サイトにもAnswersを導入。その結果、GoogleにおいてYextブランドの検索数が34%減少したという。廣川氏によると、これは自社サイト内でユーザーが求める情報を提供できている証拠であり、Googleに戻ってYextを検索し直す必要がなくなったことを示しているという。
廣川氏は「Pull型マーケティングを実現していくには、検索エンジンと自社サイトの両面で顧客の求める情報を正しく提供すること、それらを数値的に証明できる仕組みを持つことが重要」と述べ、セッションを締めくくった。