プラットフォーム内での体験価値が一層重要に
ーープライバシーとパーソナライズの両立に関して、サーバー間連携のほかにもうひとつ対応があるとおっしゃいましたが、2つ目は何でしょうか?
中村:前編でも少し触れた、媒体内ですべて完結するパーソナライズです。Instagram広告に接触した人にInstagramショッピングをおすすめする場合は、我々のファーストパーティデータを使っているため、Cookie規制の動向には影響を受けません。
企業がInstagramのさまざまな機能を使うと、それだけ取得できる利用者データの厚みが増します。プラットフォーム内でのシグナルが増えていく、ということですね。
中村:特に日本の利用者は他国に比べて、ショッピング機能の利用がとてもアクティブです。たとえばデザイン雑貨などを扱うワンダーマーク社は、小物撮影時の下に敷く背景紙ブランドのECを、我々のパートナーであるBASEで構築しました。そのカタログをInstagramショップとFacebookショップ、そして広告に統合したところ、売上が前月比5倍になりました。プラットフォーム内でのリタゲに加え、類似オーディエンスもターゲットにしてリーチした結果です。
羽片:Instagramショッピングは、今我々もかなり注力している領域です。
日本の小売業市場は約60兆円あると言われていますが、EC化率は数%です。10%で6兆円、広告市場と同じくらい。将来的には20~30%とすると20兆円近くなり、うち5割がソーシャルのトランザクションからの売上と仮定すると10兆円。相当大きい規模になると想定しています。ユーザー視点でも、一気通貫で買い物できるのは本当に便利ですよね。
活用の大きなポイントは、広告ではなく「コンテンツ」だという思考に考え方を切り替えることだと考えています。ユーザーはあくまでコンテンツを楽しみに来ているので、インスタグラマーやYouTuberのように内容を考えていかないといけない。ユーザーに近い感性や感覚も必須なので、我々社内のInstagramショッピングチームも若手中心になっています。
広告配信と計測のモデル化:効率が改善した例も
ーー続いて(3)統計的手法によるモデルの採用についてもうかがえますか?
中村:広告配信と計測の両方で統計モデルを構築して、実行していきます。たとえば自動アプリ広告(AAA:Automated App Ads)は、我々の強みであるアルゴリズムを活かして、キャンペーン設定からクリエイティブまですべて機械学習で自動最適化します。リクルートジョブス社の「タウンワーク」では、既存の配信にくらべてCTR、CPI、CPAのいずれも改善しました。
中村:計測の部分では、特に媒体間比較という観点で、マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)を推奨しています。これまでも、CPAでの媒体間の単純な比較だけではなく、ROASや、効果が得られる飽和点などを踏まえて予算配分を最適化すべきという議論がありました。その上で脱Cookie対応もできるソリューションが、MMMです。
以前、MarkeZineでもGunosy社の事例を紹介いただきました(該当記事)が、この方法もCookieの影響をまったく受けない統計的なモデリングですので、MMMをベースにしたメディアプランニングは今後、ひとつのスタンダードになりうると思っています。