多方面で活躍する三浦氏が語った「超・実用理論」
今回紹介する書籍は『1シート・マーケティング』。著者は「天狼院書店」店主の三浦崇典氏です。三浦氏は、同書店の経営者として全国に10店舗・1スタジオを展開。テレビの報道番組や経済誌にも多くの出演・掲載経験を持ち、雑誌『週刊ダイヤモンド』『日経ビジネス』においては書評コーナーを連載するなど、多方面で活躍する人物です。
本書では、三浦氏が事業のグロースを行う上で実際に活用している独自手法として「1シート・マーケティング」を解説しています。
本書の特長として挙げられるのは、読者の業界を問わない汎用性です。三浦氏はプロカメラマンとしての一面も持っており、近年では女性限定のフォトサービス「秘めフォト」を展開。サービス開始から4年あまりで1,700名以上の顧客が利用しており、月に15,000枚の撮影、6,000枚の納品を行っていると言います。三浦氏は、前述の書店経営だけではなく、このカメラマンの仕事にも1シート・マーケティングの理論を応用してきたと語っています。
では、三浦氏を継続的かつ多面的に成功を導く1シート・マーケティングとはどのようなものなのでしょうか。
マーケティングを体系的に理解するための7要素
三浦氏は本書冒頭で「僕が提供するのは、高校生でも理解可能な稼ぎ方(マーケティング)」だと述べています。マーケティングという言葉の定義はさておき、1シート・マーケティングが「高校生でも可能」だとする理由は、この理論の基本的な考え方が“紙一枚”に集約されるからだと言います。
本書では、複雑に考えられがちなマーケティングを次の7つの要素に分け、それを紙一枚にまとめて整理する方法を伝えています。
<7つのマーケティング・クリエーション>
(1)STORY(ストーリー):旅立ちの理由
(2)CONTENTS(コンテンツ):商品
(3)MODEL(モデル):仕組み
(4)EVIDENCE(エビデンス):実数値
(5)SPIRAL(スパイラル):上昇螺旋
(6)BRAND(ブランド):信頼
(7)ATOMOSPHERE(アトモスフィア):空気
(p.10)
こちらを見るとわかる通り、この理論には「(ビジネス)モデル」「ブランド」という一般には大きな要素が単に1つの要素として包括されています。なぜこの7要素で分けて考え直す必要があるのでしょうか? 三浦氏は次のように述べています。
単に「ビジネスモデル」や「ブランディング」という言わば各論のトピックを作ろうとしても、うまくいくはずがありません。それは家を作ることで言えば、煙突や窓をつけるといった部分的なことでしかなく、マーケティングは、家全体をどう作るかを設計しなければうまくいくはずがないからです。(p.48)
本書では、言わば家の“基礎”にあたる、マーケティングの土台から解説しています。第1講「ビジネスは『再定義』によってまた蘇る〔ストーリー/STORY〕」では、マーケティングの土台たるストーリーの重要性から、定義、構築の方法を紹介。続く第2~7講でも7つの要素を1つずつ、丁寧に紐解いています。
また第0講「マーケティングの正体を探る マーケティング・ジャーニー」では、はるか太古の世界へと遡り、時代ごとに順を追っていくことで、現代からはわかりにくいマーケティングを単純化して解説。マーケティング用語を1つも知らないという人も理解できるようになっています。
ビジネスにおいて重要な要素を、幅広く体系的に学んだ上で、読者自身が紙一枚に落とし込めるようになる。これによって、読むだけでは得られない学びが得られるのではないでしょうか。新年度が始まり、これから改めて体系的にマーケティングを学びたい、新たなビジネスを0から考えたいという方にお薦めの書籍です。