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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

D2Cブランドの成長を支えるデジタル×マス融合の可能性

消費財メーカーのマーケターから見た、D2Cというトレンド

「一点突破」での成長には限界も?

(2)一点突破

 一点突破というのは、相性がいい広告チャネルを見つけ、そこに集中して広告費を投下していくことを指します。広告費面でも人的リソース面でも限られている企業にとっては、効率よく売上を伸ばす方法なのだと思います。

 私はLUXやDOVEをはじめ、ヘアケアカテゴリのマーケティングに従事してきましたが、当時、I-ne(アイエヌイー)さんが販売するBOTANISTは、ネット発、そして私の記憶が正しければ楽天で大きく売上を伸ばした後、ドラッグストアを中心としたオフラインで大きな売上を作っていました。

一気にユーザー数を伸ばすには、マス広告への投資も必要に

 しかし、あくまで私の肌感覚になりますが、年間の売上額が30億円以上を超えるようなブランドになってくると、デジタルチャネルだけでのユーザーの獲得が難しくなってくるようです。

 FacebookやGoogleは日本国内でも数千万人のユーザーを抱え、配信面として非常に優良かつ有力な広告チャネルですが、ある程度の規模まで達すると、獲得単価が上がってきます

 大前提として、一人あたりに配信する広告費換算をすると、デジタル広告のほうがテレビ広告より高くなってしまいます。このことは、大手広告代理店で働いている方だと当然の認識かもしれませんが、事業会社のマーケターには意外と知られていないのではないかと思います。デジタルは小規模かつ手軽にスタートできるという点でテレビ広告にはない良さがありますが、規模が数千万人へのリーチとなってきたときに効率が悪くなってしまうのです。

 D2C企業ではありませんが、IT企業でデジタル広告からマス広告へ転換をすることで成功した企業がGunosyさんだと聞きました。調達したお金で既存の延長線上ではない形で一気にユーザー数を伸ばすために、テレビCMを活用されています。その結果、ユーザー数は爆発的に伸び、現在は広告配信プラットフォームとしてD2C企業の広告配信先となっています。

 Gunosyさんの成功以降、IT企業でテレビCMの利用が普及し、その後D2C企業でもテレビCMへの出稿が増えたと記憶しています。これは特殊な例ではなく、実際に、デジタル企業の象徴であるGoogleやAmazonも、テレビを中心としたマス広告に大量の投資を行っています。

 いわゆる大企業ではない企業のテレビCMがゴールデンタイムにも放送されるのも、たまに目にするようになっています。こうした流れを踏まえると、D2C事業者によるマス広告の活用も、これからより増えていくのではないでしょうか

デジタル広告とマス広告の共存は可能か

 デジタル広告とマス広告をうまく組み合わせていくにはどうしたらよいか? ということについて、いろいろな企業の方から質問をいただきます。私自身もまだ答えがありません。業界やビジネスのフェーズ、競合状況など複雑な要素によって最適解が変わってくるので、一概に、どのタイミング、どれくらいの比率で実施すべき、というフォーマットは現状ありません。

 デジタルはデジタル広告の良さ、マスにはマス広告の良さがそれぞれあります。現状は、予算やブランドの成長フェーズに合わせて使われていますが、デジタルデバイスが普及している率が今後さらに高まることで、マス広告とデジタル広告をいかに組み合わせるかが重要になっていくことは確実です。

 たとえば、テレビを認知のためのチャネルとして使い、購入はECで、ということが今まで以上に一般的になってくるかもしれません。すでにECは普及しているではないかと思う方もいるかもしれませんが、消費財業界では商材によってはECの割合が1割にも満たないカテゴリーも多くあり、今も小売店での購入が圧倒的に多いのです。そのため、EC化のポテンシャルは十分にあります

 今後、デジタル広告とマス広告の垣根がなくなっていき、両者の良い点を引き出していくことで、マーケティングがさらに進化していくと考えられます。

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ブランド・エクイティの概念が融合のカギになる

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この記事の著者

木村 元(キムラ ツカサ)

株式会社Brandism
代表取締役

ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/06/18 08:00 https://markezine.jp/article/detail/36135

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