女性が自分らしく輝くのをサポートする
MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、ユニリーバがLUX Social Damage Care Projectを始めた背景を教えてください。
古松:ラックスは1989年に「ラックス スーパーリッチ」を発売してから、今年で31周年を迎えるヘアケアブランドです。女性が理想の自分に近づくために社会のルールや固定観念に囚われることなく、自分らしく輝くためのサポートをすることをブランドパーパスに掲げています。
しかし、ジェンダーに関する社会課題は山積みなのが現状です。女性の就業環境や進学率などは良くなっているものの、世界経済フォーラムが発表したジェンダー・ギャップ指数2021によると、日本の総合スコアは0.656、順位は156ヵ国中120位と、主要7ヵ国(G7)では最下位という状況になっています。
古松:女性を応援するブランドとしてこの状況を少しでも改善すべく、無意識のジェンダーに対する固定観念への気づきを与え、問題解決に貢献するためのプロジェクトとしてLUX Social Damage Care Projectをスタートしました。
MZ:プロジェクト名の由来はどこからきているのでしょうか。
古松:ラックスは髪や肌のケアをしているブランドですが、それだけでなく、女性が社会で感じている痛みをケアできるブランドを目指すという意味でLUX Social Damage Care Projectと名付けました。
Twitter利用者の会話から気づきを与える
MZ:LUX Social Damage Care Projectでは、Twitterを中心にコミュニケーションを展開したと聞いています。Twitterにどのような役割を期待していたのでしょうか。
渡部:Twitterは、様々な方が自分の意見をシェアしたり発信したりするプラットフォームだと思っています。そのため今回のプロジェクトでは、様々な方からのジェンダー問題に関する会話を期待すると同時に、どのようなインサイトが潜んでいるかを探る役割としてTwitterを活用しました。
このようなテーマのコミュニケーションをブランド側から行うだけだと、ネガティブに捉えられてしまうケースもあります。Twitterであればブランド側が問題を提起して、それに対して様々な人が考えを発信するきっかけを作ることで、自分たちにとってジェンダー問題が関係ないと思っていた人にも気づきを与えられると思いました。
古松:本当に社会を良い方向に変えていくためには、ブランドが一方的にコミュニケーションするだけでは足りなくて、多くの人から思いを発信いただく必要があり、TwitterをはじめとしたSNSの力は必須だと考えています。加えて、Twitterは拡散力のあるプラットフォームなので、想定よりも多くの方へのリーチが見込めるというのも、Twitterに期待していました。
広告×ライブ×インフルエンサー×マンガの4軸で訴求
MZ:では、LUX Social Damage Care Projectを通じてどのようなコミュニケーションを展開してきたのか教えてください。
古松:2020年の3月にプロジェクトを発足し、「#性別知ってどうするの」というキャンペーンを展開しました。採用の履歴書から顔写真と性別欄をなくし、採用における性別のフィルターを排除するための取り組みです。
具体的には、日本経済新聞への広告出稿、採用にまつわるWeb動画の配信、ハフポストでのタイアップ記事の出稿など、様々な形で採用において応募者の性別を知ることの必要性について疑問を投げかけてきました。
MZ:Twitterはどのように活用したのでしょうか。
渡部:Twitterでは3月と6月に第1弾、12月に第2弾という形でキャンペーンを展開しました。第1弾では、カンバセーションボタンや画像・動画広告による広告配信に加え、NewsPicksの「THE UPDATE」のライブ配信を実施しました。
MZ:第1弾の取り組みから第2弾の取り組みでは、どのような点を改善したのでしょうか。
古松:第1弾のコミュニケーションでは、ジェンダーに関する議論が生まれていたものの、それがラックスのキャンペーンである認識が広まっておらず、もっとキャンペーンの実施背景や想いが伝わるキャンペーンにする必要があると思い、「ホットリンクAmplify Sponsorship」の一環によるマンガでのPR投稿を施策に追加しました。特にマンガに関しては、通常のツイート文字数の140文字では伝えきれなかった部分が補足できたので、背景や想いがきちんと伝わり、エンゲージメントも高かったです。
通常の広告メニューだけでなく、ライブ配信、インフルエンサー投稿、マンガタイアップの4軸でコミュニケーションを行ったことが、非常に効果的だったと考えています。
会話を途切れさせぬよう話題を作り続ける
MZ:4軸でのコミュニケーション展開以外に、キャンペーンを行う上で意識していたことはありますか。
古松:ティザー、ローンチ、サステインの3つのフェーズに分けてTwitter上でのコミュニケーションを展開した点です。ティザーでは、ライブ配信の告知と投票機能やカンバセーションボタンによる会話の醸成を行い、ローンチではライブ配信で話題を最大化させました。そして、ライブ配信後のサステインではライブ配信に出演した方やハフポストによるアーカイブの告知を行い、話題の持続化を狙いました。
そして、マンガやインフルエンサー投稿をこの流れに組み込んだことで、常に会話が途切れない設計を実現することができました。
渡部:ライブ配信では、配信に関する感想ツイートなどを見ながら視聴できるイベントページを採用したことで、ライブ配信を見ながらツイートするという空気作りができたと思います。
3月実施時の1.5倍の会話量に
MZ:12月に行った第2弾のキャンペーンでは、どのような成果が得られたのでしょうか。
古松:中長期的に会話を醸成できたのが、一番大きな成果でした。3月と6月実施時は、序盤に話題のピークが来て少しずつ会話が減っていってしまいましたが、12月実施時は採用時の性別欄について常に会話が起きている状態を作ることができました。
この要因としては、4軸での発信が非常に大きいと考えています。4軸でそれぞれリーチできるターゲットも変わってきますが、各ターゲットに親和性のある形でコミュニケーションを展開できたため、会話数はもちろんエンゲージメント率の改善につながりました。
さらに、会話の中身もポジティブなものが多く、ブランドの想いがきちんと伝えられたと思います。
MZ:渡部さんはいかがですか。
渡部:3月実施時と12月実施時を比べると会話量が1.5倍に増加していました。ブランドリフト調査でも良い結果が得られているので、非常に良かったです。
同じブランドメッセージを様々な形で届けることが重要
MZ:今回の施策を通じて、得られた気づきや学びはありますか。
古松:私は大きく3つの気づきが得られました。1つ目は、同じメッセージを様々な方向でアプローチすべきだということ。2つ目は、ライブ配信は配信中だけでなく、事前・事後の告知も非常に重要だということ。そして3つ目は、深く知ってもらうコンテンツを作ることの大切さです。
特にジェンダーなどセンシティブなテーマを扱うときは、3つ目が欠かせません。一言で伝えるだけでは、本来意図していない形で会話が広がってしまう可能性があるので、マンガやタイアップ記事など、深く理解してもらうためのコンテンツが必要です。
渡部:私はTwitter広告の様々なプロダクトを組み合わせて活用することの重要性に気づけました。マンガなどは広告会社のADKマーケティング・ソリューションズ様にご提案いただき、タイトなタイムラインにもかかわらず実行まで支援いただきました。今後もパートナーの皆様の力をお借りしながら、新しいフォーマットやプロダクトのトライアルをキャンペーンに合わせて行いたいです。
よりインサイトを捉えたキャンペーン設計を
MZ:最後に、今後の展望を教えてください。
古松:今回は採用をテーマにしたキャンペーンでしたが、今後も社会にインパクトを与えるアクションを行いたいです。そして、社会を変えるためにはTwitterの力が必要になるので、今後も会話の大きな波を起こせるよう、様々な広告プロダクトを活用したいと思います。
渡部:引き続きTwitterを活用したコミュニケーションを実施すると同時に、インサイトの発掘も強化したいと考えています。Twitterを見てジェンダーに対するインサイトの解像度をより高めて、今後のキャンペーン設計に活かしていきたいです。