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Apple元日本法人代表が説く真の顧客目線とは【お薦めの書籍】

 オンライン化が進み、生活者のニーズは大きく変化を遂げ、eコマースの躍進や、オンライン会議の台頭など多くのイノベーションが起こりました。その中で、マーケターは生活者のニーズの変化をどのように捉え、何をすべきなのでしょうか? 本記事ではApple元日本法人代表の著者がマーケターに必要な視点を説く書籍をご紹介します。

人は他と違う選択ができない

 今回紹介する書籍は、『学び続ける知性 ワンダーラーニングでいこう』(日経BP)。著者は、成長し続けることの重要性を発信し、セルフ・イノベーションの方法論を説くリアルディア 代表取締役社長の前刀 禎明(さきとう・よしあき)氏です。

『学び続ける知性 ワンダーラーニングでいこう』<br />前刀 禎明(著)日経BP 1,980円+税

『学び続ける知性 ワンダーラーニングでいこう』
前刀 禎明(著)日経BP 1,800円+税

 前刀氏はソニー、ウォルト・ディズニー・ジャパン、AOLジャパンなどを経て、2004年にアップル米国本社マーケティング担当バイス・プレジデント(副社長)兼日本法人代表取締役に就任。独自のマーケティング手法で「iPod mini」を大ヒットさせ、日本市場でアップルの名をとどろかせた方です。アップル退社後は、2007年にリアルディアを設立。様々な企業とともに事業を展開しています。

 日々情報が更新され、世間が目まぐるしく変わる中、ふとした場面で閉塞感を感じることはありませんか? そうした状況について前刀氏は「画一的な価値観で縛られて、多様性がなくなっているからだ」と言います。

 たとえば、家電量販店で売れる商品とは「よく売れている商品」だと前刀氏は指摘します。なぜなら、店頭に張り出された売れ筋ランキングや、店員さんに人気の商品を尋ねて最終的な判断を下す人が多くいるからです。さらに「売れ筋商品」に似た製品をメーカーが作り、さらに価値基準が画一化されていきます。こうした現象は家電量販店に限らず色々なところで起こっています。

 そうした画一的な価値観から解放されて、自分なりの視点を持つにはどうすればいいのでしょうか?

顧客目線を身に付けるために大事なこととは?

 アップル創業者のスティーブ・ジョブズは「客が欲しがるものなんか分かりようがない。だから自分が欲しいものを作るんだ」と言ったそうです。「この言葉こそ究極の顧客目線だ」と前刀氏は言います。

 自分が欲しいものを思えばいいなら簡単な話だ、と思われるかもしれません。ところが人は案外自分の気持ちに鈍感です。自分の欲しいものが何なのか、ある物事に対して自分がどんな気持ちでいるのか、自分でもよく分からなかったりします。なんとなくの気分はあっても言語化できるほど明確になっていないこともあります。日本人の多くは幼い頃から周りと足並みをそろえるように教育を受けていますから、それも当然でしょう。自分の本音を引き出そうと思うとトレーニングがいるのです。

 では、本当に自分に欲しいものを選び取るためにはどのようなことを行えばいいのでしょうか? 前刀氏はまず何かを選ぶときに「自分で決める」ことを日常生活の中で取り入れることを提案しました。

 自分で選ぶ。そんなこと当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、実は当たり前ではないんです。自分で決めているつもりでも、口コミと値段の二つを軸にバランスをとっているだけでAI(人工知能)でも肩代わりできそうな選び方をしている人が多々います。

 これは口コミや他人の意見を聞いてはいけないということではなく、最終的に自分の判断軸で選びその思考を観察することが大切です。現代においての顧客目線を獲得するためには自分自身でその意思決定を体験し観察することが重要だと指摘しています。

後ろ向きなマーケティングは不要

 前刀氏はビジネスの現場において、過去のデータ分析に時間を費やす”後ろ向きなマーケティング”が有効な場面はほとんどないと主張します。過去のデータを基に未来を描こうとすると、結局従来の製品やサービスの延長になり、新しいイノベーションは起こしづらいためです。

 では一体何を行うことが有効なのでしょうか? 前刀氏は「今を観察することが重要」だと説きます。

 米アップルにいた頃、僕は携帯音楽プレーヤーの「iPod mini」を日本市場に広める担当をしていましたが、発売当時はよく電車の中で白いイヤホンコードを数えていました。当時白いイヤホンコードを採用しているのはアップル純正イヤホンぐらいだったので、白いコードを数えることで日々変わってい普及状況をリアルタイムでつかめたんです。市場のことを知りたいなら、たった今、目の前にあるものを一番大切に見るべきですよね。

 マーケティングとは流行りを追うことではありません。また市場調査・分析により流行りを予測して当てに行くことでもありません。マーケティングは自分たちがモノを作り出したときに、そのモノがどんな価値を提供するのかを突き詰めて考え、提示することだと前刀氏は同書で述べています。

 そのために重要なのが、「”創造的知性”を5つの要素において働かせていくこと」だと前刀氏は言います。その5つの要素として前刀氏は「観察する」「自問する」、仮説を立てて「試してみる」、自分とは全く違った価値観の人に「相談する」、そして何かと何かを「関連付ける」ことを挙げました。

コモディティ化を打破する一手とは

 多くの商品がコモディティ化していく中、企業はイノベーションを起こしていくことが重要です。しかし、新しい技術でなくても「この課題をこの技術で解決することを提示することが真の意味でのイノベーション」だと前刀氏は言います。

 本書では、イノベーションを起こしていくためにマーケターが持つべき視点を、前刀氏の様々なエピソードと一緒に解説しています。今の目まぐるしい変化をつかみたいマーケターや経営者の方々にお薦めの書籍です。時代が変容する今だからこそ、本書を通して創造的知性を働かせるヒントを得て、実務に活かしてみてはいかがでしょうか。

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この記事の著者

齋藤 優(編集部)(サイトウ ユウ)

大学卒業後、広告代理店に入社しマーケターに。主にデジタルデバイス・ヘルスケア製品を担当。その後、事業会社に転職。金融・美容・占い分野のマーケティング・企画・運営・セールスに携わる。マーケティング業界を俯瞰して見てみたいという理由から2020年、翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。好きな食べ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/07/09 08:30 https://markezine.jp/article/detail/36729

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