デジタル化が遅れる日本市場、伸びしろと課題
ここまで海外と日本を混ぜながら説明をしてきてしまいましたが、日本以外は、アジア諸国を含め、音楽に関するデジタルシフトが完了しています。
日本は、配信許諾の窓口であり、録音原盤市場のメインプレイヤーだったレコード会社がデジタル化を遅らせる戦略を取ったために、僕の見立てでは約6年デジタル化が遅れています。日本と似ていると言われていたドイツ音楽市場もデジタルが過半を占め、その比率は上がり続けています。日本も完全にデジタル化に舵を切らざるを得なくなりました。
ですから、日本のデジタル音楽市場は、これからが本番です。
2020年で約900億円という市場規模には成長の伸びしろがかなり残っています。一番CDが売れた頃の7,000億円とまでは言いませんが、前年比2割増をし、2,000億円規模までのスムーズな成長をイメージするのは難しくありません。しかも海外のマーケティング事例は豊富にありますので、それを日本にアレンジするトライ&エラーを積み重ねる段階なのです。
デジタル音楽市場を拡大する際の最大の課題が、音楽でのデジタルマーケティングのノウハウが日本に乏しく、スキルを持った人材が非常に少ないことです。
日本には約20社のレコード会社があり数千人の社員を雇用していますが、デジタルマーケティング人材は乏しく、フリーランスなどを含めても、私の肌感覚では、業界全体で20人程度というのが現状です。日本におけるアーティストの数、年間のリリース数や市場規模から考えて、少なくとも1,000人以上は必要ですから、職業としてブルーオーシャンです。
まだ、方法論が定まらず、ノウハウが確立されていません。欧米の事例を参考にしながら、日本に合った「音楽デジタルマーケティング」の模索を始める段階です。今から「日本一の音楽マーケティング会社」や「日本一の音楽マーケター」になることも可能です。
ユーザー行動の可視化ストリーミング時代
音楽ストリーミングサービスでは、ユーザー行動を配信事業者が掌握することが可能です。そして多くの場合、アーティストとその情報を無料で共有しています。ユーザー主導でヒット曲が形成される時代に最も重要なのは、データ分析です。データドリブンマーケティングの重要性は高まっています。
そして、音楽は他の分野の商材や企業とのコラボレーションも可能なものです。マーケターにビジョンがあれば、デジタルサービスを舞台にした企業と音楽家の連携もできるでしょう。そこには新しいビジネスチャンスが眠っています。起業を狙うマーケターにとっても音楽は有望領域なのです。
