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MarkeZine Day 2025 Autumn

消費者調査からひもとく生活の変化

食事の変化から見えてくる、コロナ禍で顕著になった「考えたくない」消費者心理

なぜ考えたくない人が増えているのか

 ではなぜ「考えたくない・考えることに疲れた」人が増えているのでしょうか。私は背景に以下の三つのことがあるのではないかと思いました。

1.多様性(役割からの解放・自由化)

 女性の社会進出が進み、働く女性が増えています。また、男性が主夫業を担ったり、DINKs(共働きで子どもを持たない夫婦)を選択するなど、家族や世帯の在り方も変化していきます。そういった中、女性の選択肢が広がり、女性たちが忙しくなったことで、家事を家族の中で分担している家庭が増えています。今まで当たり前だった、家事は女性(主婦)がするものという概念が、若い世代を中心にだんだんと薄くなってきています。

 その一方で、実際はまだまだ女性(主婦)が家事をメインでやっている家庭も多いのが現状です。忙しい女性たちは面倒だけどやらなくてはいけないこととして、若い世代を中心に、家事や食事作りに対して義務感を覚えやすくなってきているのではないかと思います。

 このことは、20‐30代の女性のほうが50‐60代の女性よりも、「食事の献立を考える・食事を作る面倒」と感じている人が多いことからも読み取れると思います。

2.コロナ禍による生活様式の変化

 新型コロナウイルスの流行により、人々にかかる心理的負荷が上がっています。どこに出掛けるにも感染症対策を考えなくてはならなくなり、働き方やライフスタイル変化への対処を多くの場面で迫られているからです。また、コロナ禍で旅行や他者との接触をともなう趣味・娯楽などのストレス解消の手段が制限されていることにより、人々の心理的負荷は上がる一方となっているのではないかと思います。

3.自動化

 テクノロジーやインターネットの発達により、AIなどを用いて「代わりに考えてくれる」思考の代替ツールが増えてきています。たとえば、ショッピングサイトやSNSのレコメンド機能がそれに当たります。自分で調べなくても、今までの検索結果などからその人が求めているものを予想してお勧めしてくれます。人々はそこから選ぶだけでいいのです。自分で考えなくてもいいという時代になりつつあります。

考えることに疲れた消費者が求めるものとは

 以上の結果を踏まえて、今、人々が求めているものは何でしょうか?私はさらなる思考の代替サービスなのではないかと考えます。

 たとえば「食事」においては、冷蔵庫にある食材を入力すると作れるメニューが表示される、家族や自分の好みを踏まえて1週間の献立を自分の代わりに考えてくれる、などといった、メニュー決めをしなくて済む商品・サービスの需要は高いと考えられます。

 また、コロナ禍で利用する人が多くなった、デリバリー・テイクアウト・冷凍食品・ミールキットといったものも、買っておけばメニューを考えずに済みます。思考を放棄したい時に使えるものとして、これからも選ばれていく可能性が高いのではないでしょうか。

 今後もコロナウイルスの流行は続くと考えると、この需要はさらに大きくなることが予想されます。そこに、新たなビジネスチャンスを見いだすことも可能なのではないでしょうか。

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この記事の著者

犬飼江梨子(イヌカイ エリコ)

消費者心理分析専門家 マーケティングリサーチ会社 (株)イー・クオーレ代表取締役
15年間で約1万人の消費者心理を分析。「顧客が真に求めるニーズを見つけ出し、それを解決する方法を考える」ための調査に定評がある。消費者の変化に注目し、新商品開発のための調査や商品リニューアルのための調査を多数実施し、売れる商品を作るため...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/09/21 07:00 https://markezine.jp/article/detail/37193

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