SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第99号(2024年3月号)
特集「人と組織を強くするマーケターのリスキリング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

MarkeZine Day 2021 Autumn(AD)

SNS×ARで心のトリガーを引く!クラウドサーカスが考えるファンを増やすコミュニケーション方法とは

 「FUN MAKE FAN!」を掲げるクラウドサーカス。全方位でカスタマーエクスペリエンスを向上し、またARの多彩な表現技術でコミュニケーションすることで「顧客」から「ファン」を育てていくSaaSソリューションを提供している。2021年9月7〜8日に開催されたMarkeZine Day 2021 Autumnではファンを作り増やしていくコミュニケーションの重要性と、SNS×AR事例について語った。

ファンを増やすSaaSサービス「Cloud CIRCUS」とは

 2009年創業のクラウドサーカスは、顧客を増やす5つの課題領域である「情報発信」「集客」「顧客体験価値向上」「見込み顧客育成と顧客化」「解約防止・リピート増」を実現するための機能をSaaSで提供しているテクノロジー企業。

 同社のSaaS「Cloud CIRCUS」は、マーケティングオートメーション(MA)の「BowNow」やカスタマーサクセスマネジメント(CSM)の「Fullstar」、電子ブック・動画共有の「ActiBook」といったモジュールのほか、ARアプリ「COCOAR」やWeb用ARの「LESSAR」など、他のマーケティングソリューションでは見られないユニークな機能が無料から利用できるソリューションだ。

 同社の特徴は安価で使いやすいツールと共に、カスタマーサクセスが充実していること。クラウドサーカス デジタルプロモーション事業部の渡部悠奈氏によると、カスタマーサクセスに携わる社員は営業スタッフの約2倍であり、単にツールを継続利用してもらうだけでなく、二人三脚体制で顧客企業サポートを徹底している点が、成長促進の原動力だという。

 同社の事業について渡部氏は「ミッションは“FUN MAKE FAN!”。『心が動く、ファンが増える』です。心が動くことで、顧客のコンバート=登録や購入などの行動変容につなげていく支援を行っています」と語る。特にこの「心が動く」という点がポイントだ。

 「『この商品がいいですよ』『ぜひお買い上げください』といっても、情報があふれているこの世の中では、なかなか振り向いてもらえません。『心を動かす』ことはひとつの経営課題であり、悩んでいる企業の方も多いと思います。クラウドサーカスの事業活動を通じ、この部分をどのように私たちは支援しているか、どのようなミュニケーションで人の心を動かすことができるのか、具体的な戦略をお話ししたいと思います」(渡部氏)

クラウドサーカス株式会社 デジタルプロモーション事業部 渡部 悠奈氏
クラウドサーカス株式会社 デジタルプロモーション事業部 渡部 悠奈氏

めまぐるしい変化にどう対応すべきか?

 まず、顧客とのコミュニケーション方法について指南する前に、現在の企業を取り巻くビジネス環境がどのように変化しているのか、グローバル視点で見ていこう。

 渡部氏によると、現在は文字通りめまぐるしく市場が変化している時代だという。イレギュラーな外部要因としては、新型コロナウイルスの影響もあり、ビジネスのやり方やマーケティングの方向性がデジタル寄りになった。また人々の購買行動もデジタルが中心となりつつある。例えば自動車や不動産などの売買・契約も、Web上で行われることが珍しくなくなった。

 それにともない、販売店舗にはECや動画サイトとは違う価値が求められるようになり、企業の販促のやり方も変化してきた。マスに向けたアプローチより、個の時代に合ったソーシャルネットワークのコミュニティが発展してきたことも、市場変化の一要素だ。

 「私たちが買い物する時も、すぐにお店に行くのではなく、YouTubeやInstagram、それに口コミサイトなどで情報を収集し、ようやく店舗に行きます。店舗に行くゼロの段階で既に買う物の選定をある程度しているということで、Googleではこの購買意思決定モデルを『ZMOT』(Zero Moment of Truth)と提唱しています。そこで問われるのは、店舗の価値や、そこでしかできない体験です。同様にECサイトも、どのような仕掛けがあれば店舗のような温度感や体験が可能なのか、この双方向性を実現することが重要になってきます」と渡部氏は説明する。

 さらに目を世界に転じれば、SDGsに代表されるように、限りある資源や資産を持続可能な形でどのように活用し、成長していくかが問われている。

「そのため企業戦略においては、破壊的に刈り込んでいくのではなく、『守り』の概念を入れながら企業として価値ある投資、コミュニケーションをしていく必要があります。この『守り』という概念は、後ほど説明しますが、マーケティングを考えるうえでとても重要なポイントになります」(渡部氏)

自発的に口コミしたくなるメッセージの伝え方

 以上の状況を受け、販促活動をどのように考えていけばいいのだろうか。当然ながら、「買え、買え」という直球型のしつこい販促活動は消費者に最も避けられ、工夫のないメッセージなら印象にも残らない。かといって、奇抜さやおもしろさを追求しても、商品・サービスとはかけ離れたメッセージになってしまう。

 渡部氏は現在のように変化が早く、複雑な時代においては「人々が自発的に広めたくなるブランド作り」を目指す必要があると訴える。共感が共感を呼び、ファンが増えていくマーケティングだ。

 その一例として、渡部氏が挙げたのが米アップル社だ。自身もアップルユーザーという渡部氏。「iPhoneが出始めたころに初めて購入し、次にパソコン、そしてAir Podsと次々にアップル製品を購入しました。アップル社は、購入者が自らその世界観のファンになり、SNSでファンを広める活動を自分たち自身で展開する、そんなブランドに成長しています」と語り、自作したMac ProのAR画像をSNSで拡散するハッシュタグ「#MacProPhotoContest」を紹介した。

 PCや電子デバイスを提供するテクノロジー企業は多いが、熱量が高く、行動するファンの多いブランドとしてアップル社は群を抜いている。なぜ他のテクノロジー企業より、アップル社のファンの熱量が高いのか。渡部氏がサイモン・シネック氏のゴールデンサークルを用いて説明したのが、「伝え方」の違いだ。

Why?を重視したプレゼンテーション
Why?を重視したプレゼンテーション

 「パソコンの場合、最高のパフォーマンス実現=Whatのため、エンジニアがこれだけ苦労して開発しました=Howのように、『何を』『どうやって』に主眼を置いて製品を説明することが多いです。しかしスティーブ・ジョブズ氏は、『クリエイターに大きな革新をもたらすため=Why、ストレスフリーで動画編集ができる最高の環境を用意しました』というように、Whyに軸を置いてプレゼンしました。つまり視点をユーザーに切り替え、伝え方を変えることで、相手に響く形に変換したのです。こうしてストーリーを重視し、プロモーションを行いました。これが心を動かす伝え方だったわけです」(渡部氏)

詳しい説明より、心を動かすトリガーが必要

 Whyを軸にしたメッセージによるプロモーション活動で、心を動かしファンを増やしたアップル。この心を動かすテクニックのことを、渡部氏は「心のトリガー」と呼ぶ。

 同じように心のトリガーを引くメッセージを出す経営者として、渡部氏が例を挙げたのが、ジャパネットたかたの創業者である高田明氏だ。例えばテレビを売る時も、「64インチの大画面、4Kで……」とスペックから入るのではなく、「大みそかにおじいちゃん、おばあちゃん、お母さん、お父さん、お子さん、お孫さんが集まり、これで年末年始をお楽しみください」など、“理想の姿”を描写しながら商品を訴求することで、心を動かすプロモーションを展開していた。

 「昨今のマーケティングとは、このように心に触れる、心を動かすことが、購入や来店意思といったコンバート=変換を起こしていることがわかってきています。脳科学の分野でも、『なぜ』というメッセージによって心をつかさどる脳の分野が活性化することが解明されてきました。逆に、『何を』『どうやって』という理論的なメッセージは、むしろ理性によって理解しようということで、冷静になっていく傾向が見られます。心をつかさどる、つまり本能にアクセスするプロモーションが非常に大事になっているのです」と渡部氏は説明する。

心のトリガーを引くコミュニケーションの第一歩とは

 では、心のトリガーを引くコミュニケーション戦略とは、どのようなものなのか。

 渡部氏は「結論をいえば、そうしたコミュニケーションができるコミュニティにまず参加することが必要です」という。このとき重要になるのが、前出した「守るマーケティング」という概念だ。

 ここでいう「守る」とは、消極的になるという意味ではなく、消費者も企業も「コミュニティの一員」として相互に自由闊達にコミュニケーション活動を行うマーケティングを意味する。

 従来のように、企業側の一方的なメッセージを消費者にぶつけるのではなく、消費者のリアルな生の声を聞きながら、「なぜ」この人たちは商品を購入して喜んでいるのか、「なぜ」がっかりしているのか、そうした具体的なWhyを拾い上げていく。また、似た価値観を持つ人同士がコミュニティを作り上げ、「なぜ」私たちはこの商品を買って良かったと思っているのか、そうした声を発信し、コミュニティを広げていく。

 いずれにしても、コミュニティに参加し、企業も消費者も双方に情報発信することで、良いサイクルを作っていくことが第一歩となる。

 こうした個人の価値観や生の声が今日最も多く集まっている場所はソーシャルメディアだ。心のトリガーを引くためには、価値観や生の声をまず知ることが重要であり、心のトリガーを引くコミュニケーションの第一歩として、「まず企業がユーザーコミュニティに参画していくことが大切です」と渡部氏はいう。

 SNSと聞くと売上につながらないと消極的に考えるマーケターも多いかもしれない。

 「私たちクラウドサーカスは、SNSにARというテクノロジーを掛け合わせることで、心を動かすコミュニケーションができると考えており、実際に事例も多数出ています」と渡部氏は説明する。

「理解できない」が「おもしろい」へ転じる瞬間をARで作り出す

 現在、企業の情報発信モデルはマスメディアやPR戦略に基づく一方向のコミュニケーションではなく、ユーザーファーストな視点でユーザーにとって必要な情報を提供し、そのフィードバックを受け改善していくことで、ユーザーの心が動き、ユーザー自身が情報発信していくコミュニケーションモデルへ変化していると渡部氏は指摘する。そのトリガーとして、表現力豊かなARの活用が有意義な成果を生むという。

 AR(Augmented Reality:拡張現実)とは、人間が知覚しているリアルな環境に、コンピューターで作ったバーチャル要素を組み合わせ、現実空間を文字通り拡張させるテクノロジーのこと。クラウドサーカスでは、現在ARとSNSを掛け合わせたマーケティングコミュニケーションを実証している最中で、知見が蓄積されてきているそうだ。

 なぜARが心を動かす手段となるのだろうか? 渡部氏はその理由として、人が視覚などの認知機能を使って「理解できること」と「できないこと」の間に、ARを挟むことで「予想を裏切られるおもしろさ」が生まれるからだ、と説明する。

ARで現実と非現実をつなぎ、おもしろいを引き出す
ARで現実と非現実をつなぎ、おもしろいを引き出す

 例えば、かつて「透明のオレンジジュース」がはやったが、知覚的にはどう見ても水なのに、飲んでみるとオレンジジュースの味がする。この「見て理解していること」と、「脳内で起こっている目と舌の刺激の違い」のギャップが、「おもしろい」という体験価値に変わっていく。

 この「おもしろい」というポジティブな感情こそ、共感を生み、心を動かす大きなトリガーになる。このように、ARを入れて「現実」と「非現実」をつなぐデザイン設計を行うことで、心を動かすコミュニケーションが可能になる。

 取り組みの具体例として、渡部氏はまずテネシーウイルキーブランド「ジャック ダニエル」のAR事例を紹介した。同社のARアプリを商品ボトルパッケージにかざすと、ジャック ダニエルの歴史やウイスキー作りを紹介するコンテンツが出てくるもので、「今はなくなってしまった工場地帯などが絵本形式で次々と登場し、その世界観の共有と楽しさにつながっている素晴らしい取り組みだと思います」と渡部氏は話す。

 またクラウドサーカスも、ダニ捕りロボを提供する日革研究所のコンサルティングを手がけ、この夏にはARアプリを通じて巨大なダニをARで出現させ、ダニ対策の重要性とダニ捕りロボ認知を拡大するTwitterキャンペーンを展開した。

 なかなか強烈なARだが、渡部氏は「強烈だからこそ、キャンペーンにユーザーが参加し、SNSでプロモーションされていく展開につながりました」と説明する。

 ゴディバでは対象商品やポスターにスマホをかざすと、キャラクターやイメージガールのスペシャルコンテンツと共に写真が撮れる「GODIVA Camera」アプリを展開。撮った写真はもちろんSNSでシェアできる。また、回転寿司チェーンのくら寿司では、昨年緊急事態宣言中に「まぐろと一緒におもしろ写真を撮ろう」というキャンペーンを展開し、話題を呼んだ。

 これはアプリを起動すると、ソーシャルディスタンスで提唱された2メートルサイズのまぐろが登場し、一緒に写真を撮影するというキャンペーン。フォロー&リツイートで食事券を抽選プレゼントした。店舗にいけない時期でもブランド想起に役立つユニークな取り組みだ。

 いずれも、一人のユーザーの「おもしろい」という心のトリガーを引き、それがSNSで派生して拡大していく取り組みだ。

顧客の心を動かすのは1人ひとりの行動から

 渡部氏は、こうした施策を紹介しながらも、「一番大切なことは、『あなたがいたからできた行動が、顧客の心を動かす』ということです」と強調する。

 具体的にはどういうことか。当然ながら、商品を作るのも、営業するのも、プロモーションするのも、一人だけでは不可能だ。企業努力には様々な人の力が必要であり、そんな一人ひとりの行動が、「最終的には心を動かす行動につながる」ということを忘れないでほしい、と渡部氏はいう。

 SNSとARを組み合わせた企画も、顧客の心をどう動かすかというコミュニケーション戦略も、当然一人ではできない。「そんな時、クラウドサーカスが皆さまの課題に寄り添い、支援します」という言葉を最後に、渡部氏は講演を終えた。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2021/11/16 10:00 https://markezine.jp/article/detail/37328