コンテクスチュアル広告の種類
デジタル広告としての「コンテクスチュアル広告」の中にも実際にはいくつかのタイプがあり、それぞれのタイプの中で、複数の事業者が独自の方針でサービスを展開しています。最近では高度なAI機能を使ったものだけをコンテクスチュアル広告と呼ぶ傾向がありますが、ここでは公平性のため少し広めにご紹介したいと思います。
サイトコンテンツ指定型
あらかじめ内容別に分類されたWebサイトに対して広告を配信する手法。出版社サイトの特定セクションへの純広告やGoogleディスプレイ広告などで利用が可能。ゲームならゲーム系を指定、スポーツならスポーツ系を指定など、“サイトを選ぶ(枠を買う)”イメージでターゲティングできるため、広告を出したいサイトがあらかじめ明確に決まっている場合に有効。
たとえば、“リビング用家具”の広告を出したい時、「ライフスタイル・ファッション」に分類されたサイトを指定すれば確実性が高い。その一方で、一見関連の薄い「ビジネス・経済」に分類されたサイトの中にもライフスタイルと相関性が高いページコンテンツはある。分類ベースでサイトを絞ってしまうことで、本来なら見込みのあるページへの広告配信ができず、“絞りすぎによる機会損失”の恐れがある。
キーワード指定型
Webページ内に含まれる特定のキーワードを指定して広告を配信する手法。「Googleディスプレイ広告」や「Yahoo!ディスプレイ広告」などで利用が可能。
前述のサイトコンテンツ指定型と異なり、自社名やブランド名など自由にキーワードを指定することができ、ページ単位でターゲティングできるのが特徴。また除外キーワードを設定することで、ブランド毀損リスクを軽減することもできる。
たとえば、自社名や競合名をキーワードに指定して広告を出した場合、自社商品または競合商品について言及されている記事、つまりその商品カテゴリー自体に興味を持つユーザーへ広告を配信することができる。一方で、指定したキーワードが含まれていないページへは、その内容がいかに好ましいものであっても配信されないため、ここでも“絞りすぎによる機会損失”の可能性が残される。
文章解析型
Webページに含まれる言語情報(見出しや本文など)をAIで自動解析して、ページの内容・文脈の診断を行い、広告配信対象となるページを決定する手法。
言語学と人工知能を組み合わせた技術により、ページ内の単語の有無だけでなく、単語同士の結びつき・文章の構造や意味・複数の文章を組み合わせた文脈の解析を行い、ページ内の文章全体がどのような意味を持っているか、広告を出す内容として適切か否かをスコア判定する。そのため、コンテンツ指定型やキーワード指定型と比べて、広告内容と配信先ページ内容のマッチング精度が高く、かつブランド毀損リスクが少ない点が特徴。サイト分類やキーワードに縛られず、広告内容と関連性が高いと判断されるページに広告を出すことができるため、興味のあるユーザーに幅広くアプローチすることができる。
現在のコンテクスチュアル広告の主流と言え、様々な事業者がこの分野に参入している。日本国内でサービスを提供している代表的なところでは、Oracle社の「Oracle Contextual Intelligence(旧Grapeshot)」や、IAS社の「Context Control Targeting」、BI.Garage社の「コンテンツメディアコンソーシアム」、スリーアイズ社の「Candy」などがある。
なお、認知・ブランディング面での効果が評価される一方で、高度な技術の代償としてターゲティングに費用がかかるため、費用対効果の検証が各事業者共通の課題と言える。
文章・画像解析型
文章解析に加えて、視覚的情報(ページ内に含まれる画像や動画など)もAIで解析することで、広告内容と配信先ページ内容をさらに高い精度でマッチングさせる手法。前述の言語解析型の発展形とも言える。
画像や動画の内容を加味してページ内容の判定を行うため、言語情報だけでは判断できないブランド毀損リスク要素の検出や、特定の画像や動画に紐づく広告ターゲティング機会を発見することができる点が特徴。
たとえば、仮にページ内に含まれるキーワードや文章全体が安全だと判断される場合でも、暴力的・犯罪的・性的・差別的といった“脅威”と判断される画像を含むページへの広告配信を抑制したり、また逆に“自動車”“動物”など特定のビジュアル要素を含むページへのターゲティングを行うことが可能。
現時点では、世界的に見てもこの取り組みを行う事業者は限られている。私も携わるGumGumはその中の一つとして事業を展開しているが、今後数年間で多くの事業者による投資・研究開発が積極的に行われていくと見られる分野である。ターゲティング精度の高さやブランド訴求面での効果が評価される一方、文章解析以上に高価な手法となるため、費用対効果の面での検証が課題と言える。