デジタル広告の未来を拓くクリエイティブ戦略
講演を始めるにあたり、リチカのCMO・田岡氏は「Switch to the Rich」をミッションとする同社のビジネスを紹介した。
「リチカクラウドスタジオ」は、同社が提供するマーケティング動画クラウドサービスだ。動画生成ソフトとして、広告メディア業種においては2年連続シェア1位(出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所「法人向け動画自動生成・配信ソフト市場の現状と展望 2020年度版」)。また、マーケターが薦める動画クラウドサービス1位にも選ばれている(出典:日本マーケティングリサーチ機構「2021年1月期_ブランドのイメージ調査」)。
加えて同社では「リチカクリエイティブファーム」と「RC総研」という2つの事業を展開している。マーケティングクリエイティブテクノロジーの専門家で組織されたリチカクリエイティブファームは、企業のマーケティング課題を上流からサポート。大手事業会社やグローバル企業を中心に、400社以上を支援してきた実績を持つ。
一方のRC総研では「伝わるを科学する」をテーマに、海外事例も含めた最先端のマーケティングを研究。2020年にはヤフーと協業し「Yahoo!ディスプレイ広告」における動画広告の共同研究を開始した。
しかし、動画広告だけがリチカの主戦場ではない。本セッションでは「デジタル広告の未来を拓くクリエイティブ戦略」をテーマに、デジタルマーケティングにおけるクリエイティブのあり方を解説していく。
デジタル広告はクリエイティブで最も差がつく
まず田岡氏は「デジタルマーケティングはクリエイティブで最も差がつく」と述べ、クリエイティブの重要性が高まる背景を解説した。
ニールセンカタリナソリューションズが2017年に行った調査によると、デジタル広告の購買貢献率はクリエイティブが最も高く、47%を占めているという。さらに田岡氏は、2つの要素がクリエイティブの重要性を後押ししていると続けた。
1つ目の要素は、顧客や顧客接点の多様化だ。コロナ禍によって人々の生活様式は大きく変化し、その影響は価値観や働き方にも広がった。そして、音声チャネルやコネクテッドテレビといった新しいメディアの台頭により、顧客接点も多様化。つまり、マーケティング担当者は「誰にいつ何をどのようにどう届けるのか」の5W1Hを従来以上に細かく設定し、最適なクリエイティブを作成しなければならないというのだ。
2つ目は、プライバシー保護強化の流れである。個人情報保護法の改正やGDPRへの対応、サードパーティーCookieの利用制限、アプリトラッキングの透明性向上などの影響により「従来型のターゲティングが難しくなっている」と田岡氏は指摘。従来型のターゲティングに代わる有効な手段の1つとして、クリエイティブへの注目度が高まっていると述べた。
では、マーケティング担当者はどのようにデジタル広告のクリエイティブへ取り組めば良いのだろうか。田岡氏は、3つのアプローチを提案した。
クリエイティブのターゲティングで顧客の課題も浮き彫りに
1つ目のアプローチが「クリエイティブターゲティング」だ。これまでの一般的なデジタルマーケティングでは、まずターゲットを設定し、仮説やリサーチを基に訴求軸を決め、より多くのターゲットに届くメッセージをクリエイティブに盛り込んできた。
一方のクリエイティブターゲティングでは、クリエイティブをパーソナライズする。ペルソナを細かく設計し、それぞれに最適化したクリエイティブを量産。つまり、特定セグメントに刺さるクリエイティブでターゲティングを行うというのだ。
「量産したクリエイティブでPDCAを回しながら価値訴求の精度を高めていくという考え方です」(田岡氏)
田岡氏は、一般的なターゲティングとクリエイティブターゲティングのいずれにおいても「顧客課題の理解は大前提」と強調。特にクリエイティブターゲティングではターゲットやペルソナが細分化されるため、より深い顧客課題の理解が求められると述べた。
動画と静止画では反応するユーザーが異なる
2つ目のアプローチは、動画+静止画で高速にPDCAを回す「クリエイティブの高速PDCA」だ。
たとえば、ペルソナごと、ペインごとのクリエイティブを「静止画」「動画バナー」「6秒動画」「15秒動画」といった様々な形式で量産し、アジャイルに(素早く柔軟性を持って)PDCAを回していく。これにより、クリエイティブの最適化が行えると田岡氏は語った。
そして3つ目が、動画クリエイティブの活用である。ヤフーとリチカが行った共同研究の結果によると、ファッション・教育・金融の各業界横断で静止画と動画のパフォーマンスを比べたところ、動画のコンバージョン率が非常に高く、結果として購入単価やCPAの低減にもつながったという。
「動画クリエイティブは情報量が多く、見込み顧客に対してリッチな情報を提供するため、高いコンバージョン率を実現できるのです」(田岡氏)
田岡氏は動画の特徴を示しつつ、「静止画と動画のどちらが優れているか」という二元論には疑問を呈す。実際、上述の共同研究では同一期間・特定アカウントにおいて動画/静止画の双方にインプレッションしたユーザーのクリック重複率が3.7%だった。つまり、動画に反応するユーザーは静止画と異なることがわかる。
「動画と静止画の両方を駆使してより多くのユーザーにリーチし、反応を得ることが王道になってくる」と田岡氏は述べた。
2ステップでプロクオリティの動画を制作
クリエイティブを量産し、高速でPDCAを回すにはどうすれば良いのか。田岡氏は「クリエイティブ・テック」の活用が有効であるとし、同社が提供するリチカクラウドスタジオの機能を紹介した。
「誰でも簡単にマーケティング動画を作れるクラウドサービス」として開発されたリチカクラウドスタジオの特徴は、配信面や業種ごとに用意された1,500種類以上のフォーマットだ。大手企業のCM制作も手がけたクリエイティブチームによるノウハウのほか、Yahoo!やFacebookの公式クリエイティブパートナーとしての実績がフォーマットに反映されているという。
リチカクラウドスタジオの制作は2ステップで完了する。目的や用途、業種に応じて最適なフォーマットを選択し(STEP1)、テキストや画像/動画素材などを当て込む(STEP2)だけだ。動画だけでなく、静止画の一部が動く動画バナー、GIF、Instagramのカルーセルなど、幅広い形式に対応している。
「プロクオリティで多様なクリエイティブが制作できるところに、リチカクラウドスタジオの強みがあります」(田岡氏)
大企業が導入する「クリエイティブ・テック」
リチカクラウドスタジオの機能をより詳しく解説するため、田岡氏は事例を紹介。ベネッセコーポレーションは、ファーストパーティーデータを用いた動画広告の運用をインハウス化するにあたり、リチカクラウドスタジオを導入した。動画クリエイティブの量産と高速PDCAを実現し、CPAを4分の1に削減するなどの成果を達成したという。
田岡氏は「デジタル広告のクリエイティブ戦略」として、本セッションを次のようにまとめた。
(1)デジタル広告で「クリエイティブ」は最重要要素
(2)クリエイティブの「最適化×量産」がカギ
(3)「クリエイティブ・テック」の活用をおすすめ
「クリエイティブの最適化×量産をクリエイティブ・テックで実現し、マーケターの時間を顧客やその課題の理解に費やしてほしい」と話し、セッションを締めくくった。