BtoBスタートアップのPMF(Product Market Fit)ストーリーを紹介する本連載。今回取り上げるのは、オンライン広告・オフライン広告の効果分析ツール「ADVA MAGELLAN(アドバ マゼラン)」を提供するサイカだ。顧客の課題を起点にプロダクトを開発し、1年目から順調な売上を創出していた同社だが、PMFを実感するまでには約3年半を要したという。その過程には、いかなる試行錯誤があったのだろうか。
エンタープライズ企業への導入実績が多数
サイカが運営する「ADVA(アドバ)」はテレビCMを中心とした“広告のPDCA”を、データサイエンスの技術を駆使しながらサポートするプロダクト群だ。中でもCheck(評価)の工程の課題を解決する広告効果分析ツール「ADVA MAGELLAN(アドバ マゼラン、以下MAGELLAN)」が主力製品で、広告の効果を正しく評価し、最適な予算配分をするための土壌を整えてきた。
特にテレビCMに関して課題を抱える顧客が多いこともあり、現在はMAGELLANから派生するかたちでCMに特化したプランニングサービスや制作サービス、バイイングサービス(出稿サービス)などを展開。企業の広告ROIの向上を総合的に支援している。
サービスを導入する顧客の数は累計170社を超えており、パナソニックやNTTドコモなど日本を代表するエンタープライズ企業も多い。この顧客層は必ずしも当初から意図していたものではなく、PMFを模索する過程で「自分たちがアプローチするべき顧客」の対象を絞り込み、その顧客にとって最適なサービスの在り方を追求した成果ともいえる。
サイカ代表取締役CEOの平尾喜昭氏によると、現在は顧客の満足度や利用状況を測定するための独自指標も開発しており、定量的にもPMFを実感できる環境が整ってきている。ただそこに至るまでには試練も多く、約3年半の時間を要したという。
慶應義塾大学総合政策学部卒業。父親の倒産体験から「世の中にあるどうしようもない悲しみを無くしたい」と強く思うようになる。大学在学中に出会った統計分析から経営支援の可能性を見出し、2012年2月に株式会社サイカを設立。統計学と経済学をベースに、これまで数多くの大手企業でマーケティング最適化のコンサルティングを行なってきた。
順調に売れる一方、リテンションに課題が
「今思えば、最初の1年半は勢いだけで走っているような感覚でした」。平尾氏はMAGELLAN(当時の名称はXICA Magellan)をリリースした当初の状況をそのように振り返る。もともとサイカではMAGELLANを立ち上げる前に「xica adelie」というクラウド型の統計分析ツールを手がけていた。平尾氏たちがデータ分析のコンサルティングを行っていた際に感じた課題を基に、サイカ社内の分析業務を効率化する目的で開発されたものだった。
このツールを「誰でも簡単に統計分析ができるサービス」として他社にも提供してみたところ、興味深いことに、買ってくれた企業のユーザーのほとんどが“マーケター”だったという。
「話を聞いてみると『企業はマーケティングに多額の予算を投資しているものの、それがどれくらい売上につながっているのかがわからない』という課題があることに気がつきました。この課題に寄り添うかたちで生まれたのがMAGELLANだったのです」(平尾氏)
MAGELLANで解こうとしている課題は顧客から出てきたものであり、具体的な機能も「広告の事業成果に対するROIを把握して予算配分を最適化したい」というニーズに基づいて設計した。だからこそコンセプトが市場にフィットしており、「(1年目から)かなり売れた」という。
しかし売上を見ると順調だったが故に、結果的にPMF到達までに時間がかかってしまったと平尾氏は話す。
当時のサイカでは何が起きていたのか。しばらくすると、導入はしてもらえるもののリテンション(継続)しないユーザーが多いことが明らかになっていった。あくまで単発の利用が多く「リテンションレート(継続率)と逆なのではないかと思うくらい、解約率が高かった時期もあった」という。
コンセプトは受け入れられているはずなのに、なぜ顧客は解約してしまうのか。当時はその理由がわからず、頭を悩ませる日々が続いた。そのような時、“ある1冊の書籍”と出会ったことが、サイカに大きな変化をもたらすことになる。
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- この記事の著者
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大崎 真澄(オオサキ マスミ)
ライター。大学在学中&休学中に複数のIT系スタートアップでインターンを経験後、フリーランスとして独立。DIAMOND SIGNALに関わる以前には「TechCrunch Japan」などでスタートアップ企業のプロダクトや資金調達を中心としたインタビュー・執筆活動を行っていた。4年前から長野県在住でフルリモートワーク...
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