本質を問いかける力に長けたZ世代
本セッションのモデレーターを務める用丸氏は、電通のクリエイティブ局に所属しながら、同社のバーチャル組織「電通若者研究部」においてZ世代のインサイトをリサーチしている。
用丸氏はまず、これからの消費を担っていくZ世代の生まれ育った時代背景を紹介。ITバブル崩壊、アメリカ同時多発テロ、リーマンショック、東日本大震災、そしてコロナ禍など、不況生まれで世界的なテロや未曾有の災害を幼い頃に経験している世代であると解説した。
このような背景を踏まえ、用丸氏はZ世代の特徴を以下の4つに分類した。
用丸氏によると、未曾有の事態を経験しながら育ってきたZ世代はそれまで当たり前とされてきた価値観を疑う力や、本質を問いかける力に長けているのだという。
「以前、Z世代の大学生に『“就職をするなら”電通も選択肢の1つです』と言われたことがありました。つまり、彼らにとって就職は起業などを含む複数の選択肢のうちの1つなのです」(用丸氏)
2つ目の「タイパ」とは、タイムパフォーマンスのことを指す。情報が氾濫する今の時代、Z世代にとって情報は「自ら探しに行くもの」ではなく「選んで捨てるもの」であると用丸氏は指摘。限られた時間を割くに値する情報かどうかを重視していると語った。
Z世代にとって「リーズナブル=安価」ではない
また、SNSネイティブのZ世代は情報発信にも積極的である。他者の目を意識し、空気を読むことが美徳とされていたミレニアル世代以前とは違い、Z世代は自身の努力や個性を隠さず発信する傾向にあるという。電通若者研究部が実施した調査でも「頑張っている姿を人に見られることに抵抗がない」と回答した人の割合は徐々に高まっている(出典:電通若者研究部「若者まるわかり調査2019」)。
「Z世代は自身の好きな対象に時間を割くことや、それについて発信する姿勢を厭いません」(用丸氏)
3つ目に挙げた「サステナビリティ・ネイティブ」について、用丸氏は「Z世代の消費行動を考えるにあたり重要なキーワード」であると話す。学校でサステナビリティやSDGsの概念を習っているZ世代は、消費活動においても社会問題に対する視点を取り入れているのだという。
また、価格が安いことを表現する際に用いられがちな「リーズナブル」という言葉が、Z世代にとっては「明確な選択理由(=リーズン)がある」という意味を持つとも指摘。商品・サービスそのものの機能だけではなく、それらに付帯する社会的・文化的な価値に共感して購買する“イミ消費”の傾向があると語った。
用丸氏は4つ目について「Z世代の感覚では現実世界の中にフィジカルとバーチャルが存在し、両者はフラットな関係性である」と解説。Z世代はクラスやサークルなど所与の単位に加えてSNSも友達作りの場として捉え、投稿内容やフォローしているアカウントの顔ぶれを見ながら相手の人となりを理解しているという。
「彼らにとってはバーチャルも透明性の高い世界であると言えます。取り繕った投稿はすぐに見透かされてしまうので、表側と裏側のギャップがある企業活動は批判の対象となり得ます」(用丸氏)