Z世代の心は思想・環境視点・透明性で捉えるべし
では、Z世代の心を射止めるために企業はどのようなコミュニケーション戦略を取れば良いのか。用丸氏は次の3つのポイントを提示する。

これらのポイントを理解するための事例として、アメリカのシューズブランド「ALL BIRDS」の取り組みを紹介した。同ブランドは「地球環境に良い靴を作る」という思想のもと、自社が排出する二酸化炭素の排出量を可視化し、自らに「炭素税」まで課している。思想、地球/環境視点、透明性の全てを備えた姿勢は、多くのZ世代から「かっこいい」と支持を集めているそうだ。
自社の思想を落とし込んだブランドメッセージで顧客の心を捉えた事例は他にもある。本セッションにパネリストとして参加するヘンケルジャパンだ。用丸氏からバトンタッチした同社の猿田氏は、セルフブリーチ剤「ボンディング・ブリーチ」のプロモーション戦略について語った。

マーケティング部 ブランドコミュニケーション デジタルコミュニケーションスペシャリスト
猿田有香氏
そもそも同社がホームユース品としてセルフブリーチ剤を発売した背景には「ブリーチオンカラー(髪の毛にブリーチを複数回施してからカラーを載せるスタイル)」の広まりがあった。2017年に“傷みにくいブリーチ剤”をサロン向けに販売したところ「美容師からブリーチオンカラーのトレンドが作られていった」という。このトレンドを自宅でも楽しめる商品としてボンディング・ブリーチは誕生した。

「脱・金髪用」「脱・若者向け」で既存市場に風穴を開ける
猿田氏はプロモーション戦略を立てるにあたり“セルフブリーチ”という言葉が持つイメージの固定化に着目。「高校生の夏休み」「大学の学園祭」などの限定的な使用者およびイベントを想起する人が多く、仕上がりのスタイルも「金髪」に偏っていたそうだ。
「これらの固定化した使用者/使用シーン/スタイルを変えなければ、セルフブリーチ剤の新たな需要は生み出せないと思いました」(猿田氏)
新たな需要を生み出し、選ばれるブランドになるために何をすべきか。猿田氏はまず、Instagramのハッシュタグ投稿を手掛かりに、消費者の「潜在ニーズ」を探っていった。

Instagramで「#ブリーチオンカラー」を検索すると、表示される投稿のほとんどが美容室でのスタイリングであった。一方「#セルフブリーチ」の投稿を見ると、固定化したイメージ通り「金髪」や「学生」を思わせるものが多い。両ハッシュタグのギャップから、猿田氏は次のような見解に達した。
「単純に『セルフブリーチ剤ですよ』と売り出しても、受け入れてくれる人は増えません。トレンドに寄せた発信をすれば、ブリーチオンカラーのハッシュタグを付けて投稿している層のニーズを掘り起こすことができますし、既にセルフブリーチ剤を使用している層の新たなニーズも引き出せると考えました」(猿田氏)