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MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine Day 2021 Autumn

直営店運営は“オフラインのD2C” Ankerが仕掛けたブランドを成長させる販路展開


直営店のメリットは幅広い認知の獲得

 5つ目はお客様の製品理解の促進。実店舗の良さはやはり実機のTouch&Tryができること。プロジェクターの明るさ、イヤホンの音質、ノイズキャンセリングの効果など、感覚に訴えるものはEC上では表現が難しい。実機での体験や専門スタッフによる詳しい説明で、顧客は自分に合った製品を納得して選べる。また、テレワーク、キャンプ、防災など、実際の利用シーンを想定し複数の製品を展示することで、使用イメージをわかりやすくし、シーン軸での製品の組み合わせも提案している。

 6つ目は顧客のファン化。店舗に来るインセンティブを作り、顧客がより満足度の高い体験ができるよう仕掛けている。たとえば、店舗限定のステッカーやグッズの配布、店舗限定セットの販売などを行っている。

 「Ankerグループをまったくご存知ない方への認知、実店舗で購入したい層の獲得など、より広い層へのブランディングとしてプラスに働いています」(猿渡氏)

スモールスタートから成功させたステップ

 アンカー・ジャパンは前述の6つの理由から販路を拡大してきたが、成功の秘訣はスモールスタートし、段階的に拡大してきたことにある。ここでは、これまでにどのようなステップがあったのか時系列で振り返った。

 まず2018年、Anker Storeは当初3ヵ月限定のポップアップストアという形式で出店をスタート。最初から常設店を出すとコスト面の懸念や撤退リスクが高くなるからだ。ポップアップストアなら家賃ではなく売上歩合制により固定費を抑えつつ、初期の内装費と少しの費用で出店が可能となる。また、実際にどのくらい売上が作れるのかを試す実験的な意味合いもあった。リスク回避の観点から、販売スタッフも在庫管理もすべて外注で運営を行った。

 結果として最初に出店したAnker Storeららぽーとエキスポシティ店は非常に好調で、現在でもファミリー層を始めとした幅広い顧客が利用している。

 2019年、店舗数は5店舗まで拡大。この頃、全店舗に共通のPOSシステムを導入した。2018年は手探り状態だったため、在庫管理などもGoogleスプレッドシートを使い、手作業で行っていた。その後、ポップアップストアが増えたことでシステム化してオペレーションを一元化した。

 2020年には、約2年をかけて蓄積した店舗ビジネスのノウハウを活かし、店舗運営を内製化を推進。「社内メンバーだからこそ、共通のマインドを持って店舗運営を行うことができます。自社採用の方がコミュニケーションやオペレーションも円滑になり、結果的に売上も向上しました」(猿渡氏)。

 そして2021年、アンカー・ストア株式会社として法人化。法人化の目的は、意思決定を早くすることと、店舗スタッフの育成強化。アンカー・ストアとアンカー・ジャパンでは、スタッフに求める人物像も評価体系も異なる。それぞれに合ったミッションやバリューの設定を行うことで、結果的にスタッフのマネジメントや教育の横展開がしやすくなったという。

 最後に猿渡氏は「今後Anker Storeが取り組みたい3つのこと」を掲げた。

 1つ目は、「主要都市圏における出店の加速」。顧客の多い主要都市圏でタッチポイントを増やし、販売力の向上とブランド認知の拡大を続けること。2つ目は「店頭体験のリッチ化」。近年は充電関連製品やオーディオ製品に加え、スマートプロジェクターやロボット掃除機などの高価格帯の製品ラインナップが増えていることを踏まえ、実際に手に取って体験いただいた上で購入ができる場を今後も増やしていく方針だ。

 3つ目は、「さらなるファンづくり」。Ankerグループ製品を購入するだけでなく、好きになってもらえるようなサービスを充実化させていくという。

 猿渡氏は「充電器やイヤホンだけでなく、プロジェクターやロボット掃除機などをAnkerグループのブランドでそろえてもらえると嬉しいですね」とファンづくりへの期待を述べた。まだまだAnkerの躍進は続く。

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/05 10:33 https://markezine.jp/article/detail/37570

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