脱コモディティ EC的思考とD2C的思考
従来の売り方は「早くて安い」に価値があり、都度セールスに都度課金で、商品への関与は薄い。
だからこそD2Cは、ソーシャルグッドやつながりに価値をおいている。パーソナライズし、自分の価値観に合うもの、Good for lifeにタッチポイントをもつ。そして顧客は商品をモノとしてだけでなく体験やサービスとして受け取っている。

染谷氏はD2Cの個別ブランドとともにAmazon、楽天のような大きなEC部門の販促も担当している。両軸で実施しているので、EC思考、D2C思考の違いは肌で感じているという。
「同時並行で運用して思うのは、短期KPIの評価の仕方、マネジメントの考え方がまったく違うこと。そのため同じチームにいながら、同居は難易度が高いですね」(染谷氏)
D2Cは、スタートアップのように小さい企業や、長期での費用回収を考えていくのに向いている。かたやECは製造に対してプロダクト開発力があり、商品数を十分に持っているところ、大量に商品数を用意して売りさばく体力があるプレーヤーに向く。
D2Cを運用すると、「もっと商品を追加して売れないか」という思考はずっと働き続ける。「しかしそれをすると、結局またコモディティ商品になります」と奥谷氏は指摘する。
データを活用してよりOne-to-oneへ
顧客から取得したデータは、どのように施策に活用し、顧客メリットとして還元されているのか。顧客体験はD2CのKPIとして重要なポイントである。パーソナライズ化やソーシャルグッドなど、顧客の求める価値を模索し理解していく必要がある。
My COFFEE STYLEでは嗜好データの蓄積から、0~24時のどの時間帯にどういう属性の人がコーヒーを飲んでいるのかも可視化している。セグメント別の生活習慣の違いも活用して、よりOne-to-one化を進めていくこと。それがデータを活かし顧客体験を磨くことになる。
My COFFEE STYLEは基本的に、店舗データもECの購買データも全部1ヵ所にまとめ、LINEですべてのコミュニケーションを統括している。EC会員のLINE連携率はメルマガのパーミッションよりはるかに多い。
LINEのトーク欄を見ると、今までのメッセージが一覧でわかる。「おもしろいのは、半年前に送った投稿からも遷移があることです」と染谷氏は解説する。気になった投稿を遡って探せるのはトーク画面ならではのユーザー体験だ。
「この縦スクロールのトークすべりは、メールではできず、重要ですね」と奥谷氏も頷く。
「デジタルデバイスのスピード感とは逆に、時間をかけて顧客を理解できるのがD2Cの良さ。ぜひ多くの会社に取り組んでほしい」と奥谷氏は述べ、講演を締めくくった。