新時代のデータ統合基盤として注目されるData Clean Room
MarkeZine編集部(以下、MZ):株式会社電通と株式会社電通デジタルは、2021年10月、Meta(旧Facebook社)が提供する次世代型のデータ統合基盤「Facebook Advanced Analytics」を活用したマーケティング施策の分析ソリューションの提供を開始しました。今回は、具体的な活用例として、ネスレ日本が展開するペットフードブランド「ピュリナ ワン」での事例をいち早く紹介するとともに、同ソリューションの持つ可能性を探りたいと思います。
はじめに、電通と電通デジタルが今回のソリューションを開発した背景についてお聞かせください。
電通 井崎:2021年は、来年春施行予定の改正個人情報保護法の発表や、AppleによるIDFA取得の規制強化など、データ規制に関するトピックスがとても話題になった1年でした。デジタルマーケティング業界では、サードパーティCookie依存からの脱却が活発に模索されており、これについては様々なアプローチがあります。
そうした中で我々は、引き続き“人単位”を維持し、顧客体験の向上に繋がる形でデータを活用していくためには、生活者にメリットを提示した上で許諾を得ている、デジタルプラットフォームの“人単位”のデータが重要になってくると考えています。
Facebookをはじめとするデジタルプラットフォームでは、許諾済みのアカウントデータを数千万の規模で保有し、“人単位”での接点を維持されています。我々はここに広がっている可能性に着目し、各プラットフォームより提供される「Data Clean Room」を活用したソリューション開発に取り組んできました。
MZ:Data Clean Roomとは、どういったものなのでしょうか?
井崎:プラットフォームより提供される許諾済みのデータをプライバシーが保全された状態で企業がマーケティングに活用できるよう、各プラットフォームから提供されている新しいデータクラウド基盤のことです。
もともとClean Roomという言葉には「無菌室」という意味があり、Data Clean Roomは特定のスキルセットを持った人間のみがアクセスできる部屋(=データ環境)のことを指しています。個人情報を見えなくなるようにする機能や、個人が特定できないように集計時のサンプル数を自動で制限する機能などが実装されており、プライバシー保護と企業のマーケティングニーズの両方を実現することができるデータ統合基盤となっています。
電通と電通デジタルは、Data Clean Roomを活用したソリューション開発の一環として、2018年よりMeta様の「Facebook Advanced Analytics(以下、FBAA)」の活用に取り組んできました。
保有するアカウントは、Facebook2,600万/Instagram3,300万
MZ:FBAAでは、具体的にどのようなことができるのでしょうか?
井崎:FBAAでは、広告接触や動画視聴、バナー広告のクリック有無などの情報が、利用者の許諾に基づいて、国内のFacebook利用者2,600万人、および3,300万のInstagramアカウントのデータに統合されています(2019年3月時点 公表数字)。
具体的には、テレビ視聴データや位置情報データなどを含む電通のPeople Driven DMPのデータ、または購買データなど各企業が保有するファーストパーティーデータをFacebookのアカウントと突き合わせ、プライバシーが保全された状態で利用することが可能です。たとえば、Facebook・Instagram広告への接触データと、コンビニエンスストアやドラッグストアでの購買状況を掛け合わせて、購買者がどれだけ増えたか、購買の奥行がどれだけ広がったか、などの効果検証をすることができます。
Facebook Japan 田中:FBAAの使い方としては、外からデータを流し込むというのがオーソドックスな方法です。井崎さんがおっしゃった通り、電通さんがお持ちのPeople Driven DMPのデータと結合させるのも1つの使い方ですし、各企業様で保有しているファーストパーティーデータを入れて分析をすることもできます。あるいは、Meta広告の出稿データのみでも十分示唆のある分析が可能で、Metaの広告の管理画面にはない独自の指標や切り口で分析をすることができます。