ネスレ日本「ピュリナ ワン」での活用事例
MZ:今回「ピュリナ ワン」でFBAAを活用されたということですが、まずは「ピュリナ ワン」のブランドについて簡単にご紹介いただけますか?
ネスレ日本 森嶋:「ピュリナ ワン」は、ペットの健康に有効な栄養をバランス良く満たしたプレミアムペットフードブランドです。ペットの毛艶や便の状態に変化が見られる、“目に見える健康の違い”の実現と、健康寿命の延伸を目指しており、成長段階や飼育環境、健康状態に対応した豊富な商品ラインナップを提供しています。主な販売チャネルは、ホームセンターなどの量販店で、近年はECの販売構成比が急速に拡大しています。
ターゲットとしているのは、ペットの健康への意識が強く、ペットフードのブランドに対する関与度が高いペットオーナーの方です。ペットフードの購買における特徴として、購買のきっかけとなる情報源が友人や獣医師、ペットショップ、ネット上の情報など多岐にわたることが挙げられます。「ピュリナ ワン」のお客様像は、ペットの健康のために、WebサイトやSNSなどで積極的に情報収集をする方。ペットの健康意識の高まりを背景として、自分でネット上の情報を検索・取捨選択されるお客様は年々増加しています。
MZ:マーケティング戦略についても、基本的な考え方を教えて下さい。
森嶋:現在戦略として掲げているのは、「ミックスフィーディング」を軸にしたコミュニケーションです。ミックスフィーディングというのは、ドライフードとウェットフードを組み合わせて与える食事スタイルのことで、自然にペットの水分摂取を増やすことができます。お客様には、このミックスフィーディングによって目に見える健康の違いを実感していただくこと、ブランドとしてはトライアル獲得とクロスセル実現の両立を目指しています。
また、コミュニケーションは主にデジタルで展開しており、ブランディング広告とダイレクト広告でそれぞれ異なる指標を用いて運用しています。ブランディング広告の目的は、ペットの健康に役立つ有益なコンテンツをお届けし、ブランド認知と購入意向を高めること。一方、ダイレクト広告では無料サンプルの申し込みをCVとしています。ペットフードは、実際にペットに与えてみないと食べてもらえるかどうかわかりません。そのため店頭での初回購入のハードルが高く、まずはサンプルで食いつきの良さを実感してもらうことがとても重要です。
ブランディング広告とダイレクト広告の予算配分に課題が
MZ:どういった課題があり、FBAAの活用に至ったのでしょうか?
森嶋:成果がわかりやすいダイレクト広告に注力していた時期もありましたが、やはりある程度の期間や投資規模を超えるとCPAが見合わなくなってきます。こうした状況を踏まえ、ブランディング広告の比率を徐々に高めることで、潜在層に対するアプローチを強化したいと考えていました。この時に課題となったのが、効果測定と予算配分です。
まず、効果測定については、ブランディング広告とダイレクト広告の効果を個別に測定しており、全体最適のための分析ができていませんでした。加えて、ブランディング広告の場合、定期的にその効果を確認するには継続的なブランド目的への投資が必要になりますが、それを維持していくことが難しい実情もあります。また、ダイレクト広告と比べるとPDCAのスピードが遅くなることも課題で、結果としてブランディング広告とダイレクト広告の予算配分は手探りでやらざるを得ない状況でした。
電通デジタル 山田:ネスレ日本様のデジタル領域でのメディアプランニングを担当しています、山田です。FBAAを森嶋様にご提案した経緯ですが、森嶋様がお話しされた通り、これまではブランディング広告とダイレクト広告をそれぞれ分けて実施していたので、シナジー効果が可視化できていませんでした。その点、FBAAでは、Metaのもつ人ベースのアカウントを基に、広告の重複効果を見ることができます。ブランディング広告がどれくらいダイレクト広告の主要KPIであるCV/CPAに効いているのかを可視化できれば、ブランディングとビジネス拡大の両立に最適な投資配分を導き出せると考え、森嶋さんにFBAAの活用を提案させていただきました。