「Cookie代替」の考えは2021年で終わり
Cookieレスを受けて、2021年は「Cookie代替」というワードも目にすることが多かったのではないでしょうか。これは、従来のデジタルマーケティングに必須であったCookieに代わってユーザーをターゲティングする手法のことを指しますが、そもそもCookie規制が進んできた背景を考えると、この言い回し自体あまり適切でないことがわかります。
サードパーティCookieは、複数のサイトをまたいでユーザーの行動を追跡することで広告のターゲティングの効率化を可能にしてきました。しかし、こうした企業都合でのオンライン上の行動追跡やデータ収集に対する消費者の懸念が拡大したことで、今規制が進んでいます。つまり、「追跡」自体をよしとしないことが前提ですので、Cookie同様に追跡ができるものを代替案として求めることは、これからの社会では受け入れられ難いのではないかと思います。
たとえば、コンテクスチュアル広告はCookieの代わりに人を追跡するものではありません。広告が出るWebページの内容と関連性の高い広告を表示することで違和感や押しつけがましさを極力与えることなく、そのページを見ている人の興味関心に訴えかけることを目的とした広告です。ユーザーの広告体験を重視し、広告主企業に対してできるだけ良い印象を持ってもらおうという主旨ですので、追跡するという発想とはある意味逆のものであると言えます。これはコンテクスチュアル広告に限った話ではありませんが、従来のやり方・仕組みの枠を超え、時代に合った消費者との関与の在り方を考えることが、マーケターのみなさんに今必要な視点であると考えます。
2022年、議論はより本質的な部分へ
2023年までにあらゆる広告がCookieレスになることは確実で、業種や規模を問わず全ての企業が何らかのCookieレス広告・マーケティングを行うようになります。2022年以降も広告事業者によるアピールは続くでしょうが、「Cookieが使えないから仕方なく○○に変える」という段階を終え、「この成果を得たいから○○を選ぶ」という段階に進化すると見られます。
この時点で、手法としてのCookieレスだけを謳う事業者は淘汰され、実際のところの広告効果が議論の焦点になっていくでしょう。様々な手法の組み合わせや、多様な業種による具体的事例が展開され、より本質的な議論が活発になると予測します。最終的に「売り」につながる方程式を確立したプレーヤーが勝ち残るのは明白ですが、その過程で広告効果の検証の在り方にも変化が生まれると考えられます。
この変化は、広告事業者側だけでなく、広告主企業側の明暗も分ける可能性があります。まず、理由の如何を問わず、Cookieレス対応が進んでいない場合は早急に対応を始めることが必要ですが、いち早く対応を進めている企業でも「Cookie代替」という手法的な変化にだけ目を向けるか、Cookieレス移行の意味を理解してユーザー体験と広告効果の両立を追求するかで、今後の成否が分かれてきます。
本連載が「Cookieレス祭りに惑わされない」と主張するのは、このポイントによるところが大きいです。