コロナ禍で「ネットスーパー」の需要も拡大
西垣氏は続けて「オンライン販売の強化」について解説した。イオンリテールは、生活が多様化し、店舗で買い物をする時間がなかなか取れないという消費者の増加を受けて、店舗に行かなくても買い物ができるサービス「イオンネットスーパー」を2008年に開始。ネットスーパーのサービスを提供する事業者は他にも数多あるが、その中でイオンリテールの強みは、「総合スーパーである」ということ。生鮮食品はもちろん、肌着・靴下などの衣料品、医薬品など、品ぞろえは3万点以上に上る。
「2020年、コロナ禍で一気にネットスーパーの需要が高まり、広い駐車場を利用したドライブスルー式の受け取りサービスも生まれました。日々、お客様の声を聞き、お客様の視点で様々なサービスを付加し続けています」(西垣氏)
データドリブンなマーケティングは、アプリを起点に実現
そして、「顧客接点の強化」に向けた取り組みである『イオンお買物アプリ』を軸にした施策の共有が本講演の目玉。同アプリは、会員数が約730万人(2022年2月時点)と膨大なファーストパーティーデータを有しており、これを店舗の購買データと紐づけることで、データドリブンなマーケティングを実現している。

「アプリでは、チラシやクーポンの配信のほか、店頭の販促施策と連動したキャンペーン情報などをお届けしています。このアプリを起点に顧客接点をデジタル化することで、お客様の理解が進み、実施する施策の精度の向上につながっています。また、打つ施策の数とスピード、施策実施コストの大幅削減も実現しています」(西垣氏)
たとえば、クーポンは毎週100万枚以上利用されており、施策実施の前後でクーポン対象商品の売り上げが300%以上伸びることもあるそうだ。また、売り場で試食や試飲を勧めるかわりに、応募者に抽選で当たる無料クーポンを発行。これは、毎回100万人程度が参加する人気の施策となっている。
抽選はユーザーの購買行動をAIで分析し、「新商品やおすすめ商品のトライアル」というクーポン配布の目的に最適なユーザーへ配布される仕組み。西垣氏は、「今後はさらに精度を高めて、商品をトライアルしたお客様のリピート購入を促すような施策も考えています。レジゴーやネットスーパー、ECサイトとアプリを連携し、さらなるお客様の利便性向上と相互送客による売り上げ増大も図っていきます」と、直近の目標を話した。