商談履歴は「空雨傘」と「報連相」を組み合わせる
続いて、経験値の少ないインサイドセールスの組織を育てるための工夫について触れたいと思います。みなさんが良く知る報連相の精度を上げることで、OJTとして商談に同席する機会を少なくしても、インサイドセールスが育つ環境ができあがります。
報連相はコミュニケーションの基本だと、社会人になって真っ先に学習する事柄の一つです。
・報告(過去):すでにやったことを共有する
・連絡(いま):いま起きていることを共有する
・相談(未来):これからやることについて意見や指導を求める
報連相の中で、自分の成果をより良くできるものは「相談(未来)」だけ。相談によって、意見を求めたり、指導を受けたりすることで、より良い成果を目指します。
だからこそ相談はできるだけ1対1の対面のコミュニケーションを狙います。その他の報告や連絡は、チャットでもメールでも構いません。報告や連絡に時間を使うよりも、自分の成果を改善できる相談に時間と質の高いコミュニケーションを使います。
続いて、空雨傘。空雨傘もコミュニケーションのフレームワークです。「空」が事実、「雨」が解釈、そして「傘」が実行を意味しています。
・空(事実):雲が多いな
・雨(解釈):午後から雨が降りそうだ
・傘(行動):傘を持っていこう

次の一文は営業日報ではよく見かける例ですが、理解しようとしてよく読むと違和感が残ります。
◯◯さんを訪問。久しぶりに1時間ほど会話。来週あたり、▲▲について提案する流れとなった。
訪問した、会話した、という事実はあるものの、行動に至るまでの解釈と、その解釈を裏支えする事実が足らないため、「なんでわざわざ来週提案する必要があるのだろうか?」という疑問が生じます。
◯◯さんを訪問。久しぶりに1時間ほど会話。テレワークにともなう営業のあり方が経営課題として持ち上がっている。担当として情報収集し、再来週には上司に報告しなければならないとのこと(ここまでが事実)。当社の▲▲が、その解決方法の1つとして検討の余地が大きいと見た(ここが解釈)。そのため、再来週の上司報告前に当社▲▲を提案うかがいのアポを取った。今週で提案書を作成する。(これがアクション)
続いての例からは、どのような状況で(事実)、その状況を元に担当者がどのように思い(解釈)、その結果としてどのような行動を取るか(アクション)が明確になります。「事実―解釈―アクション」の流れが論理的であれば良いのですが、まだ育成途中のインサイドセールス担当者はこの流れが論理的でなかったり、大事な視点が抜け落ちていることがあったりします。この部分を教育することで、インサイドセールスの担当や組織が育ちます。
インサイドセールスでもコミュニケーションの基本はとても大切です。インサイドセールスもお客様との接点をもつ、経営においては大切な組織です。なぜなら、お客様の欲しいものを作って提供することが企業の至上命題なのです。
インサイドセールスが育てば、マーケティング施策の質が上がる。デジタルマーケティング全体の施策が良い方向で改善、そして成長していきます。
商談をうまく見極めるフレームワーク
インサイドセールスに限ったことではありませんが、各商談はステージとToDoを見極めの指標にすると、シンプルかつ有益な運用ができます。
営業の商談のステージとは、お客様の購買状況を営業の視点から見た定義にあたります。かなりシンプルな商談ステージの定義を下図に示しました。

それぞれのステージにおいてやるべきToDoをあらかじめ設定しておきます。もちろん、追加のToDoは商談ごとに設定しても構いません。
従来の営業日報との違いは、日報はやったことしか見えないことに対し、ToDoはやっていないことも見える点。まだやってないことを、しっかりやるだけで営業の業務効率がアップします。
お客様との打ち合わせや電話などが終わったときに、次のToDoが決まるという営業の原則があります。ここで次のToDoが設定できない商談・案件は受注か失注のみのはずです。失注になった見込み客は再びマーケティング部門が主管の施策に戻します。
一度失注したとしても、数か月後や数年後に再び商談が進み、受注につながることもあります。例えば、担当者が製品を気に入っているものの企業内での決裁がおりなかった場合、数年後に当時の担当者が決裁者側になり、製品を受注することもあるのです。
失注となったからといって見込み客から外すのではなく、継続的に接触していくことが大切です。かといって、営業が一社一社個別に接触するのは非効率です。メルマガやセミナーなど、マーケティング部門が主管の施策で継続的かつ効率的に接触していきましょう。
このような失注となったお客様に接触する方法としてマーケティングオートメーション(MAツール)を活用すれば、Web閲覧やメール開封などお客様が自発的に情報を探している行動がわかります。
頻繁に情報を探しているお客様の行動を集計し、いわゆる高ランク客が抽出できるようになります。お客様が高ランク客になったタイミングを見計らい、最適なタイミングで連絡を入れることで、再度インサイドセールスが接触できるのです。そのため、先程のインサイドセールスから営業への流れに円滑に戻せます。この仕組みがあれば、失注が大きな失敗ではなくなるため、営業活動の心理的障壁も軽減できます。
とはいえ、無理にデジタル化しようと考える必要もありません。営業プロセスはよくできているものです。過去の経験からいろいろと軌道修正をしています。営業DXだからと言って、全てをデジタルにする必要はありません。従来のアナログ型の営業をデジタルに乗せてあげるイメージで考えてください。
リアルをデジタルに変えてしまう必要はありません。できることから始める。これが非接触時代のBtoBマーケティングの鉄則です。リアルをデジタルの乗せることで、保守派からの社内反発を避けながら、さまざまな新しいBtoBマーケティングの手法を試すことができるようになるでしょう。