「店舗のワクワク」をオンラインでも
田中氏もまた、店頭でのワクワクするような体験が何物にも代えがたい魅力であり、これが消費者にとって魅力的な思い出となることを強調した。
化粧品などの商品は、単に目的を持って買うだけのものではなく、店頭での偶然の出会いや情緒が深く関わる商材だ。化粧品のような商品は、予期せぬ出会いや意図しない発見があるため、リアル店舗での体験がより一層重要だというのだ。
続いて田中氏は、OMOが果たす役割について語った。店頭では体験の豊かさが魅力だが、ECでは利便性や確実性というメリットがある。自宅や思いついたその場から容易に注文ができ、在庫表示が正確だ。オンラインイベントを通じて、多くの人々が店頭の魅力を疑似的に体験できる点も特徴だ。最近ではSNSを中心としたツールの増加により、この傾向が高まっている。
「個人的に期待しているのは、消費者の生活に密着したサービスで、リアルとECがシームレスに自然に融合することです。無理にECや店舗に誘導されるのではなく、消費者が自然に両方を利用している、そんな理想的な状態を構築できるよう、私たちは日々サービスの進化に努めていかなければならないと感じています」(田中氏)
向原氏は、店頭の魅力について、その場でしか体験できない独特の情報量や視覚的体験だと話す。これは今後も変わらずに存続する要素だ。たとえば、口紅が欲しくて来店したが、他に魅力的な商品があって購入するといった経験を持つ顧客も多い。向原氏は「そのような体験はPLAZAが重要視しているポイントですので、ぜひお店に足を運んでいただきたいと思っています」と説明した。
一方、ECの魅力について向原氏は、特に限定品や先行品などの提供や商品を一覧できる点だとし、それらの訴求によりシナジーが生まれるとの考えを示した。
店舗とECが相互に影響を与え合い、よりワクワクする買い物体験を
PLAZAとアットコスメは、それぞれがリアル店舗の魅力とECの利便性を結びつけ、一層のサービス向上を図る試みを進めている。各社が目指しているのは、リアルとECが互いに影響を与え合い、さらには融合することで、新しい価値を生み出すことだ。
両者の取り組みから得られた知見は次の3つのポイントにまとめられる。1つ目は、コロナ禍を契機としてECが充実し、その中でリアルの重要性が再認識されたこと。これは大きな転機となり、新たな構想が生まれ、それが今、具体的な実行段階に入っている。
2つ目は、オンラインと店頭での体験が、それぞれのチャネルの特色を活かしながら、スムーズかつ自然に進行しており、多くの独創的な施策が実施されていること。3つ目は、リアルの魅力、つまり五感を通じた体験、物理的な感覚、一度に得られる情報量の多さなどが、買い物体験をエンターテインメント化し、店頭の魅力を一層高めていることである。
これらのポイントを踏まえ向原氏は「今後もこれらの魅力が相互に補完し合いながら発展し、消費者の新しい体験として展開していければ」と話し、セッションを締めくくった。