8指標からなるビルボードジャパンチャート
ビルボードジャパンチャートのメインチャート「JAPAN HOT100」は、米国のHOT100の公表を開始した1958年から遅れること50年後の2008年2月より公表を開始しました。ラジオやテレビ番組に紐づかない、複数のデータをコンバインした複合ソングチャートで、現在8種類のデータを合算する網羅性の高いチャートです。
JAPAN HOT100を構成する8種類の指標データは以下の通りです(カッコ内は文中で用いる略称)。
- CDシングルセールス(CD)
- ダウンロードセールス(DL)
- オーディオストリーミング再生数(STRM)
- 動画再生数(MV)
- ラジオ放送回数(R)
- Tweet数(TW)
- ルックアップ数(LU)※PCによるCDシングル読み取り回数
- カラオケ歌唱回数(K)
※データ詳細については弊社ビルボードジャパンサイトのページをご参照ください。
これらのデータを合算することで、様々な方法で音楽を楽しむユーザーのアクティビティをカバーし、変わり続ける“ヒットのありかた”をチャート化しています。
2021年には、ビデオリサーチの提供する番組平均視聴率(関東地区/世帯/個人)と、エム・データの提供するTVメタデータとを組み合わせ、テレビ番組における楽曲使用実績や効果を計測する「Chart insight plus」や、博報堂のコンテンツファン消費行動調査データと組み合わせ、多面的な分析レポートをもとにしたマーケティング支援やコンサルティングを行う「Artist Watch Plus」を新たに開始するなど、法人向けサービスの提供もしています。
本稿では、これらのデータ分析結果をもとに、BTSの世界的ブレイク以降脚光を浴びることとなった、コンテンツやトピックに自律的に関わることでマーケット自体の拡大に大きく寄与している「ファンダム」にフォーカス。そのアクティビティから見える“ヒットのありかた”を読み解きます。
「楽曲起因型」ファンダムと「アーティスト起因型」ファンダム
2022年度上半期チャートのアーティストランキング「Artist 100」で首位となったYOASOBI。2020年「夜に駆ける」の大ヒットにより、一気にスターダムを駆け上がった彼らの勢いは今年も続き、複数楽曲がチャートイン、アルバムもロングセラーを記録しています。図1はYOASOBIのJAPAN HOT100における各指標の占有率を半期ごとの推移でまとめたものです(2022年下半期は2週分のみ。以下、どのグラフも同様)。
今年度上半期において、STRMが82.28%と大部分を占め、MV6.38%、DL6.08%、R3.52%と続きます。このような、ストリーミングや動画再生、ダウンロード指標が高い割合を示すアーティストを「楽曲起因型ファンダム」をもつアーティストと定義すると、類似のアーティストとして、「ドライフラワー」「ベテルギウス」がヒット中の優里、2021年12月24日に劇場公開されたアニメ映画『劇場版 呪術廻戦 0』の主題歌「一途」とエンディング・テーマ「逆夢」をヒットさせたKing Gnuが挙げられます。
一方、上半期複合アルバムチャート「HOT ALBUMS(アルバムセールス、ルックアップ、ダウンロードアルバムセールスの合算)」で首位となったSixTONESに着目します。2022年1月5日にリリースされたアルバム『CITY』には、21年にリリースされたシングル『僕が僕じゃないみたいだ』『マスカラ』が収録され、セールス、ルックアップで1位と、この2指標が牽引して総合首位を獲得しました。
前項のYOASOBIと同様に、JAPAN HOT100におけるSixTONESの各指標占有率は図2となります。
今年度上半期において、MV31.36%、LU23.88%、CD22.88%の3指標が大半を占め、K11.93%、TW9.46%と続きます。このようなフィジカル指標が高い割合を示すアーティストを「アーティスト起因型ファンダム」と定義します。類似のアーティストは、Snow Manやなにわ男子などのジャニーズ系、AKB48や乃木坂46のような女性アイドルなど、アーティストの訴求力の高さによって生成されたファンダムを持つアーティストが挙げられます。