提案時にCGをつくることも 今後は「仲間と協力して映像をつくりたい」
――業務のなかで、CGの仕事はどれくらいの割合を占めていますか?
グラフィックデザインと3DCGで考えると、時間的には6対4くらいでしょうか。最近とくに、3DCG制作の割合が増えているように感じています。大規模な撮影を行うよりも、金額をおさえられるケースが多いことも、ひとつの要因かもしれません。
Cinema 4Dを使うようになって非常にクオリティが上がり、入稿作業にも使えるものが制作できるようになったので、それをベースにレタッチしたりすることも徐々に増えてきました。
企画のはじめから案件には関わっているので、最初の相談時に聞いた内容をもとに、自主的にCGをつくり、それを次回の提案でお見せすることもあります。一度3DCGをつくればほかのビジュアルに転用することもできるので、とくに飲料や消費財のボトルといった物や、物理的にいちからつくることが難しいプロダクト・背景などを制作することが多いです。
――業務で使用しているCinema 4Dの印象について教えてください。
Cinema 4Dは非常に使いやすく、質の高い画像や動画がつくれるようになったと感じています。私はS24のバージョンから使い始めたのですが、なんとなく使いかたがわかってきたところでR25のバージョンが登場。インターフェースががらっと変わったこともありすぐには移行できず、レンダリングをするときにだけ使うなどしていました。徐々にR25のインターフェースに慣れてきましたが、今年4月にS26のバージョンに。まだすべてを使い切れていないのですが、基本となるライティングが自動で最初にセットされるなど新機能もいくつか登場したようです。またレッドシフトが標準でついているのもすばらしいです。デザインで活用しているアドビのソフトとの相性も良いように感じますし、年間のCinema 4D サブスクリプションも数万円程度と、3DCGソフトとしては比較的安価で導入しやすい点も魅力ではないでしょうか。
――印象に残っているプロジェクトはありますか?
ある施設の展示スペースをデザインするプロジェクトに参加した際、当時は施設が建設中のため、内部の空間をデザインしなければならないにも関わらず、実際には中に入ることができませんでした。そのため、設計図面を頼りにするしかなく、なかなか広さや空間、実際の見えかたを把握できずに苦戦していたんです。
そこで私は3DCGを活用し、図面をもとに正確なサイズで立体的なビジュアルに落とし込むことに。デザインを張りこみ、空間における見えかたを検証したところ非常にわかりやすくなり、デザイン作業もやりやすくなりました。クライアントにも大変喜んでいただくことができ、かつ大きな賞もいただけたので印象に残っています。
――最後に、これから挑戦してみたいことについてお聞かせください。
映像部門のディレクターからいつか一緒につくりたいと言ってもらっているので、3DCGでありながら、どこか人間味がありあたたかく、人の思いのようなものを伝えることができる3DCG、人に楽しんでもらえるような動画作品をつくりたいですね
もともと自転車ロードバイクが趣味なのですが、昨年の夏はほとんど自転車には乗らず、休日も3DCGばかりに夢中になって制作していました。そのほとんどが、仕事ではありません。弊社の社員を3DCGでつくってほしいと依頼を受けて、制作部長とディレクターをキャラクター化したり、キッチンカーを始めた後輩に3DCGでキッチンカーをキャラクラー化して動画にして送りつけるなど(笑)、趣味作品として制作したものです。デジタル上で立体にした物を動かして見ることができる点がプラモデルや人形を作って自由に動かしているような気分になることができ、それがとても楽しいんです。

身近な社員をモチーフに市川さんが制作した3DCG動画(画像をクリックするとInstagram上で動画を閲覧できます)

市川さんが制作した、キッチンカーをキャラクター化した3DCG動画(画像をクリックするとInstagram上で動画を閲覧できます)
可能性は無限なので、今後もいろいろな案件につなげられたらと思います。肩書も「グラフィックデザイナー」だけでなく「CGクリエイター」も名乗り始めています。人の思いをかたちにする、どこか人間味のあるような3DCGの制作をしていきたいです。
――市川さん、ありがとうございました!