「カテゴリー戦略」とは、“No.1になれる新たな市場” を作ること
田岡:本日は「タイミー×TENTIALに学ぶ、カテゴリー戦略」をテーマに、40分間のパネルディスカッションをお届けしてまいります。司会進行を務めるsusworkの田岡です。

京都大学卒業後、ネスレにてネスカフェドルチェグスト、ミロのブランド担当。外資系企業のブランドマーケティング責任者、マーケティングSaaSスタートアップ CMOを歴任。現在、suswork株式会社にて、スタートアップから大企業まで数十社のマーケティング戦略支援を行う。株式会社Sales Marker外部顧問。
田岡:今回のテーマである「カテゴリー戦略」をひと言で言い表すと、「No.1になれる、新たな市場を作ること」になります。事業の非連続的な成長には、市場でNo.1になることが重要ですが、それが難しいのであれば、No.1になれる新たな市場(カテゴリー)を作り、そこで圧倒的シェアを獲得していくのです。タイミーさんとTENTIALさんはまさにカテゴリー戦略を実践し、急成長している2社だと思いますので、本日は両社の実際の取り組みも踏まえながら、カテゴリー戦略について考えていきたいと思っております。
おふたりに具体的なお話をうかがっていく前に、まずはそれぞれの事業内容について簡単にご紹介いただけますか?
中川:タイミーは「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングさせる、“スキマバイトサービス”です。従来のアルバイトと大きく異なるのは、次の2点です。1つ目は、働く際に面接や履歴書が一切いらないこと。アプリ上でマッチングしたら、当日その場に行くだけです。もう1つは、ほぼリアルタイムでバイト代が振り込まれること。アプリではQRコードで出退勤を登録できるのですが、バイト終わりに最寄りのコンビニで給料をすぐに下ろすことも可能です。弊社ではこうした体験も含めてご提供しており、現在、タイミーの登録者数は1,000万人を突破し、導入社数は16万社を超えるまでになりました。

一橋大学卒業後、2009年4月にアサツー ディ・ケイ入社(当時)。デジタル領域およびテレビCMを中心とするマス領域のプランナー/データアナリストとして、多種多様なクライアントのマーケティング活動をサポート。JapanTaxi(当時)、メルカリ/メルペイでのマーケティング職を経て、2020年3月にタイミーへジョイン。ユーザー(toC)・事業者(toB)双方のマーケティングを統括。
岩松:我々TENTIALは、「健康に前向きな社会を創り、人類のポテンシャルを引き出す。」という大きなミッションを掲げています。事業内容としては、世の中に「コンディショニング」を実装していくことをテーマに商品を作り、販売しています。コンディショニングとは、アスリートが試合に備えて体のコンディションを整え、成果を出すための手法ですが、それを一般の方々にも日常的に実践していただくことが我々の狙いです。当社の代表作といえるのが、“リカバリーウェア”として展開している「BAKUNE(バクネ)」です。着て寝るだけで疲労回復ができるパジャマで、現在までに累計100万セット(※)の販売実績がある商品になります。
※100万セット:トップス・ボトムス2点で1セット換算(200万枚販売実績)、累計販売数は2024年12月時点

2015年に株式会社デジタルガレージに入社。SNS広告の運用チームを立ち上げ、20名規模の組織まで拡大。広告運用を武器に、コスメ、教育、金融、アプリなど様々な業界のクライアント様のWebマーケティング支援に従事。2021年8月に株式会社TENTIALにマーケターとして参画。リカバリーウェアのブランドマネージャーを経て、現在は事業本部の副本部長として事業全般を統括している。
「新しいカテゴリー」をどう定義するか?
田岡:「スキマバイト」や「リカバリーウェア」といった市場は、これまで存在しなかったカテゴリーですよね。こうした新しいカテゴリーを、それぞれどのように定義されていったのでしょうか?
中川:我々が最初に「スキマバイト」という言葉を使ったのは2019年、テレビCMでその価値をわかりやすく伝えようとしたことがきっかけです。耳慣れない言葉を使っても、一般には伝わりません。そこで、スポットワークを想起させる「スキマ」と「バイト」という言葉を組み合わせ、常に自社名とセットで届けるよう意識してきました。
2021年には「誰に、何を届けるか」をさらに明確にするため、社内にPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)という職種を作りました。そこで顧客インタビューなどの定量リサーチを数多く行うことで顧客解像度を上げていき、ターゲットとマーケティングメッセージを少しずつ変化させていきました。
下の図はGoogle Trendsで過去数年の検索量をまとめたものです。これを見ていただくと、2022年頃から競合サービスと比べても伸びてきていることがわかると思うのですが、おもしろいのは「スキマバイト」よりもプロダクト名の「タイミー」のほうが伸びていることです。カテゴリーを代表する存在になれていることを表しており、事業成長のポイントになっている点であると考えています。
