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タイミー×TENTIALに学ぶカテゴリー戦略 “No.1になれる新たな市場”をどう作り、広げるか?

「新しいカテゴリー」をどう作り、広げていくか

田岡:次に、これまで存在していなかったカテゴリーをどう作り、どう広げていったのかについてもお伺いできればと思います。

中川:最初はもちろん誰もタイミーのことを知りませんから、まずは基本的な価値である「面接なし」「履歴書なし」「即金です」といった部分をしっかり伝える必要がありました。その上で、毎年スポットCMで伝える内容を変化させていきました。同じことを言い続けても、市場には刺さりませんから。

田岡:タイミーさんが非常に興味深いのは、スキマバイトと言い続けながらも“WHO”と“WHAT”を変化させている点ですね。その時々の「コミュニケーションマーケットフィット」を毎回やっていくような感じでしょうか?

中川:おっしゃるとおりです。最初の頃は20代の大学生を中心にしていましたが、途中からコミュニケーションターゲットを30~40代に変えました。もちろん、彼らの考えや生活スタイルは20代とは全然違いますから、メッセージも変えていく必要があるんですね。

田岡:TENTIALさんはいかがですか?

岩松:弊社も、最初のうちは販売数を上げるのにとても苦労しました。これは本当に地道でおもしろくない話なんですが(笑)、カテゴリーを広げるために「なぜ今までこのカテゴリーが存在しなかったのだろう?」という点をひとつずつ明確にして潰していくということをやっていました。

 たとえば「2万円のパジャマを試着せずに買うことに抵抗がある」という声が多くあったので直営店にトライしましたし、「自分用には高いけど、プレゼントでならあげたいかも」という声があれば、ギフトラッピング対応をすぐに開始しました。また「好みのデザインを選びたい」というご要望に応えるべく、BAKUNEをご愛用いただいているアスリートやアーティストの方々と一緒に商品を開発したりもしました。このようにお客様のニーズをとにかく見逃さないことで、安心感を醸成しながら徐々にカテゴリー需要を生み出していきました。

田岡:なるほど。これはまさに価値を伝えるだけではなく、「心理的なバリアー」を取り払うための試みといえますね。

「想起」が先か、「信頼」が先か

田岡:続いて、カテゴリー戦略において特に重要だと思うことがあれば聞かせてください。

中川:タイミーでは、初期の段階からテレビCMを含めた「認知度を高める活動」を継続的にやってきました。通常、スタートアップのマーケティングでは効率と効果が最重要視されるため、デジタルマーケティング中心の投資になりがちなんですね。ただ、それでは飽和状態に陥る上に、認知の獲得においてかえって時間がかかりかねない。そういう意味では、筋がいいカテゴリーを見つけたら早めに認知度を高める活動をやったほうがいいなと思いました。

岩松:私たちは、タイミーさんとは真逆です(笑)。「疲労回復できるパジャマがある」とお客様が知った時、価格の高さから必ず「比較検討」の段階に入ります。そのため、我々はいろいろと比較された上で「やっぱりこのブランドにしよう」と思っていただける点に非常にこだわり、そこで圧勝するまでは「認知」を取りにいかないという戦略を取っていました。

 反対に、先に認知を取りに行ってしまうとプロダクトをマネされ、購入のフェーズを他社に持っていかれる可能性が出てきます。そこで、我々はリカバリーウェアの一般医療機器に関する基準が見直され、新たに「家庭用遠赤外線血行促進用衣」というカテゴリーができたタイミングでテレビCMを開始し、一気に認知獲得に打って出たのです。

画像を説明するテキストなくても可

田岡:なるほど。真逆であることが印象的ですが、お二人の共通点としては顧客を十分に理解した上で意思決定をしているという点ですよね。お客様の心理を理解した上で、「想起」が重要なカテゴリーもあれば、まずは「信頼」を積み上げるべきカテゴリーもある。意外とここを間違えてしまって、失敗している企業が多いように感じます。

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「顧客理解」こそが差別化の源泉になる

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/07 08:00 https://markezine.jp/article/detail/48808

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