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売上昨対140%超のつくりおき.jp、顧客体験の一貫性を守る「番人」Antway CX部の活躍に迫る

 新興企業が実践するマーケティング戦略から、これからのビジネスのヒントを探るべく、2018年創業のD2C企業 Antwayを取材。「あらゆる家庭から義務をなくす」をミッションに掲げる同社は、家事負担の大きい「家庭料理」に着目し、手作りおかずの冷蔵宅配サービス「つくりおき.jp」を提供している。2020年2月のサービス開始以来、右肩上がりに成長し、2023年度には35億円、2024年度は50億円の売上を達成。2023年には串カツ田中と工場のフランチャイズ契約を果たし、さらなる売上拡大を見込んでいる。同社取締役CPO兼CX部 部長(取材時)の鷲頭 史一氏に、CX部を軸としたマーケティング戦略について話を伺った。

つくりおき.jpは「日々のゆとり」を生むサービス

──まずは、つくりおき.jpのサービス概要について教えてください。

 つくりおき.jp は、冷蔵のお惣菜が週に1度届くサブスクリプションサービスです。

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株式会社Antway 取締役CPO兼CX部 部長 鷲頭 史一氏(※取材時 現CX部 部長 兼 マーケティング責任者)
株式会社mixiに入社し、ゲーム事業の新規開発に携わる。ライフスタイル事業部へ異動後は、事業責任者として転職支援SNSの立ち上げを担当。その後、ヘルスケア領域のベンチャー企業でプロダクトマネージャー担当を経て、Antwayに参画

 具体的には、お子様を含めた家族4人分の食事が3日分または5日分、週替わりのメニューで届きます。コンセプトは「つくらなくても豊かになるライフスタイル」であり、メインターゲットは共働きで自炊に疲弊しているご家庭です。

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冷蔵なので、温めて食卓に並べるだけで食事の準備が整う。5食プランは、1食あたり798円で提供している

──サービスの強みを聞かせてください。

 自社でキッチンやメニュー開発機能を持っていることが、大きな強みです。それによってお客様のニーズに臨機応変に対応していけるわけです。他社の場合、製造ラインを別会社に委託するケースも多いため、製品が改善されるまでに数ヵ月かかることもあります。

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つくりおき.jpのキッチン

 当サービスでは、週1回集計するお客様アンケートのデータを基に、高速でPDCAを回しながら、わずか1〜2ヵ月というスピードで各種改善を行えます。また、注文率や継続率などのデータやリサーチを基にお客様の声を分析し、次の開発に活かす体制を築いています。 

「日々にゆとりを持ちたいとき」に想起されるサービスを目指す

──デリバリーサービスは競合だと考えていないと伺いました。その理由を教えてください。

 我々が目指しているのは、家族との時間、キャリア、趣味や社交で充実した余暇などの機会に対して“前向き”に取り組める世界を、あらゆる家庭から義務をなくすことで実現するサービスです。いわゆるデリバリーサービスや冷凍のお弁当でその目的を達成するのは難しいですし、ライフスタイルの一部として長くご利用いただくという意味では、競合関係になり得ません。

 また当サービスでは、カテゴリー自体を想起させる「カテゴリーエントリーポイント」を重視したマーケティング戦略に取り組んでいます。我々の商品カテゴリーは「つくりおき」ですが、それを想起させるカテゴリーエントリーポイントとして「安くて美味しい」や「メニューが豊富」などで勝負しようとすると、レッドオーシャンなんですね。そういった領域では、広告獲得単価も高騰しています。そこで、カテゴリーエントリーポイントとして定義したのが「日々にゆとりを与えるもの」でした。

 そもそも料理は、献立作りから買い物、調理、洗い物までの一連の作業が大変であり、ストレスの原因になります。我々はそこを定量的に示して市場ボリュームを確認した上で、「日々にゆとりを持ちたいとき」に想起されるサービスを目指すことにしました

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Antwayでのカテゴリーエントリーポイントの設計ステップ
※クリックすると拡大します
カテゴリーエントリーポイントの計算方法
【画像上】「顧客課題のカテゴリーの洗い出し」を実施したときの資料。「食事を用意するのが面倒なシーン」などを顧客にリサーチ。回答をWhy、When、Where、Whomで分類し整理。
【画像下】顧客の課題カテゴリーの精緻化と絞り込みを行った後に、各カテゴリーの顧客単価や購入単価を計算し決定した
※クリックすると拡大します

 ここで言う「ゆとり」には、2つの意味があります。1つ目は、文字どおり家事負担が軽くなって生活に余裕が生まれること。もう1つが、食事の支度に使っていた時間を家族のための時間や自分の時間として活用してほしい、ということです。こういった切り口のコミュニケーションを通じて、新規顧客の獲得単価も非常に満足のいくものになりました。現在、同業他社が我々のやり方を追いかけているという意味でも、弊社がこの分野におけるリーディングカンパニーになっているのを感じます。

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/28 09:00 https://markezine.jp/article/detail/48535

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