※本記事は、2025年5月刊行の『MarkeZine』(雑誌)113号に掲載したものです
【特集】“テレビ”はどうなる?
─ テレビは「主」から「従」へ 横山隆治氏が考える、脱“テレビ1強”時代の広告コミュニケーション
─ オンオフ統合バイイングでテレビCMに閉じない展開を 「日テレNEWS NNN」が目指す世界
─ 先駆者ABEMAに聞くCTV市場 テレビの現在地と未来は、マルチスクリーン化でどう変わるのか(本記事)
─ ショート動画×テレビCMのプランニングは生活者を主語にする。博報堂横山氏に学ぶ考え方
マルチスクリーン化が進む中、テレビが発揮する価値
──ABEMAはスマホやPC、タブレットなど様々なデバイスで視聴ができます。他のデバイスと比べ、テレビデバイスの特徴をどうお考えですか?
テレビは「家庭内にあるメディア」として、様々な視聴スタイルが存在するデバイスです。視聴時間帯が幅広い他、一人あるいは他の家族と一緒に視聴するケースもあります。家庭内に置かれ、かつ大画面ということもあり、視聴時間が長い点も特徴ですね。
この視聴時間の長さは、CTVにとって大きな意味を持ちます。AVOD(Advertising Video On Demand:広告付き動画配信)のビジネスモデルでは、ユーザーが長時間視聴すればするほど、より多くの広告を表示できる機会が生まれるからです。そのため、私たちもCTV専門の部署を設けて積極的に取り組んできました。

2012年サイバーエージェント入社。Ameba事業本部に所属し、アメーバピグを中心としたアライアンス業務に従事。2022年より株式会社AbemaTVのABEMAマーケティング本部にて営業宣伝室兼CEグロース室長に就任し、CTV専門部署のマーケティングにおける責任者を務める。2024年よりABEMAのGM(ゼネラルマネージャー)に就任。
テレビデバイスと相性の良いコンテンツとしては、長時間配信されるスポーツ試合が挙げられます。ABEMAでも2025年3月に、日本人選手が挑戦・活躍する世界最高峰の米国の野球リーグ「メジャーリーグベースボール(MLB)」2025シーズン公式戦の生中継をSPOTVNOW様とのパートナーシップにより配信開始しました。
加えてアニメ、そして最近は韓国ドラマへの需要も見られます。この傾向は、必ずしも新作コンテンツとは限りません。大々的なプロモーションを行っているわけではないのですが、自然検索からテレビを通じての流入が非常に多く見られています。お気に入りのドラマを何度も見たいと検索した結果、無料視聴できる点でABEMAを選ぶユーザーが多いのだと考えられます。
──ABEMAでは、どのような点を意識してコンテンツ制作・提供に取り組まれていますか?
番組制作の観点で申し上げると、テレビデバイスに特化した形で企画を作ることはありません。ABEMAではユーザーファーストを大切にしていますから、テレビのみならず、どのデバイスでも楽しんで視聴いただけることが大前提です。
また、ABEMAの強みはすべてのコンテンツ制作をプロフェッショナルによって行っており、品質が保証できる点です。広告を掲載いただく以上、広告主様のブランドにそぐわないコンテンツに広告が表示される事態は確実に防止せねばなりません。そのため、プロダクトのブランドを広めたい、またブランドをしっかりと育てていきたい広告主様のニーズに応えられるプラットフォームであることを重視しています。
──ABEMAのユーザーについてもお聞かせください。特にテレビデバイス利用層、およびスマホやテレビをクロス利用する層の傾向を教えていただけますか。
「鶏が先か、卵が先か」のような関係性ですが、スマホ・PC・テレビといった複数のデバイスを利用される方ほど、サービス利用時間や滞在時間・継続率・頻度も高い傾向にあります。スマホとテレビのIDを連携させると、視聴履歴も連携されます。10話あるドラマの場合、たとえばスマホで3話の途中まで移動中に視聴し、帰宅後にテレビで残りの7話を一気に視聴するといった楽しみ方が可能です。続きから視聴できる便利さを実感いただくことで、よりコンテンツに没頭してもらえているのではないでしょうか。