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『MarkeZine』(雑誌)

第113号(2025年5月号)
特集「“テレビ”はどうなる?」

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【特集】“テレビ”はどうなる?

ショート動画×テレビCMのプランニングは生活者を主語にする。博報堂横山氏に学ぶ考え方

 ショート動画の台頭により、生活者の情報接触行動は大きく変化し、従来のテレビCMの役割も変わりつつある。それぞれの特性を理解し、効果的な連携を図るためにどう考えればいいだろうか。株式会社博報堂クリエイティブ局の横山昴氏に話をうかがった。

※本記事は、2025年5月刊行の『MarkeZine』(雑誌)113号に掲載したものです

ショート動画の隆盛で生活者はどう変わった?

──ショート動画の流行にともなう、生活者の変化について教えてください。

 実は、求められる情報の本質は変わっていません。生活者が受け取りたいのは一貫して有益な情報、知って「なるほど」と思える情報なのです。情報探索のモチベーションは、Googleが提唱する「バタフライ・サーキット」という概念で説明できると思います。

引用:Think with Google「『さぐる』『かためる』を蝶のように行き来するバタフライ・サーキットとはなにか:バタフライ・サーキットと8つの動機」
引用:Think with Google「『さぐる』『かためる』を蝶のように行き来するバタフライ・サーキットとはなにか:バタフライ・サーキットと8つの動機」

 たとえば、最近ではTikTokで投資などの金融知識を学ぶ「FinTok」というジャンルも登場しました。これはユーザーが自分の関心があるジャンルの新しい情報を知って参考にするという意味で、テレビで雑学を知って「へー」となるのと、本質的な動機は同じです。

 ただし、情報獲得の「スピード」と「チャンネル」は変化しています。情報の鮮度はますます重要になっており、ショート動画をスワイプして情報を探すことができるため、情報に出会うマッチングの速度が向上しています。

株式会社博報堂 クリエイティブ局 共創プロデューサー 横山 昴氏 2,000本以上の動画を企画からPDCA運用まで担当した経験から、動画起点でTVCM運用までを統合プランニングすることを得意とする。2021年TikTokとの国内初クリエイティブチーム「TiQuick」を発足。東洋大学、宣伝会議ほか様々な場所で講義を持つ。
株式会社博報堂 クリエイティブ局 共創プロデューサー 横山 昴氏
2,000本以上の動画を企画からPDCA運用まで担当した経験から、動画起点でTVCM運用までを統合プランニングすることを得意とする。2021年TikTokとの国内初クリエイティブチーム「TiQuick」を発足。東洋大学、宣伝会議ほか様々な場所で講義を持つ。

 また、ここで言う「チャンネル」とは、テレビのチャンネルと同じ意味です。今やテレビだけでなく、YouTube動画やコネクテッドTV、フィードに流れるショート動画の一つひとつをチャンネルと呼べるでしょう。視聴者はその瞬間の気分に合わせて、指先一つで簡単にこれらのチャンネル間を行き来し、コンテンツを消費しています。

 ショート動画に対する視聴態度として、特徴的なものがあります。スワイプすれば動画は無限に流れてきますよね。その中からなんとなく目に留まったものを「今はこれでいいや」と選んで視聴する動きです。誰かがシェアしている何次情報かわからない情報であっても、気にしない。私は「これでいいや消費」と呼んでいます。

 妥協的な視聴態度に見えますが、これは前述したバタフライ・サーキットの8つの動機が判断軸となっているため、当てはまるコンテンツは視聴する先の行動までつながることが多いのです。私たちはすべてのチャンネルでこれを意識しなければいけなくなっています。

──これらの変化を踏まえ、テレビCMとショート動画の役割の違いを教えてください。

 テレビもショート動画も、どちらもユーザーにとって有益な内容が求められることは変わりません。両者の大きな違いは、テレビは「インフォメーションの交換」、ショート動画は「インテリジェンスの交換」の役割を持つことです。

 インフォメーションの交換であるテレビCMには、「セール開始」「新発売」または「長年愛されている商品である」といった様々な情報が詰め込まれています。一方のショート動画は、インテリジェンスの交換。専門家が実際に商品を使ってみたレビューや、ショートドラマなど、誰かの「解釈」が含まれるため、N1マーケティングや特定の界隈に向けたコミュニケーションに向いています。

 実際に、ショート動画は「新しい発見がたくさんある」「自分にあっている」人がテレビCMより多いという結果が出ている調査もあります。これもインテリジェンスの交換が加速した結果でしょう。

 特定の界隈の生活者を狙う場合はショート動画でアプローチするのが有効な一方で、テレビCMが持つインフォメーションの交換としての役目がますます大事になってきます。つまり、テレビCMは、生活者以外の企業のステークホルダー全体へのブランディングの側面が強まっていると思います。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/29 09:30 https://markezine.jp/article/detail/48716

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