生活者の心を動かすのに必要な「インサイトの発見」
今回紹介する書籍は『センスのよい考えには「型」がある』。著者は、電通の第3マーケティング局でシニア・マーケティング・ディレクターを務める佐藤真木氏と、第4マーケティング局でマーケティング・コンサルタントを務める阿佐見綾香氏です。
佐藤氏は、これまで電通にて、主にマーケティングやブランディング、戦略立案に従事してきた人物。100社以上のキャンペーン設計や広報戦略、新商品開発、新規事業戦略、ブランディング、アート思考研修などの企画・実施・ディレクションを担ってきました。
一方、阿佐見氏は、これまでマーケティング・コンサルタントとして、企業のマーケティング、経営戦略、事業・商品開発、リサーチ、企画プランニングに従事。化粧品・アパレルや食品・飲料、自動車、レジャー・家電など様々な業種の支援を行ってきました。

佐藤 真木、阿佐見 綾香(著)、サンマーク出版 1,870円(税込)
商品・サービスのマーケティング戦略を立てる上では、いかに生活者の心を動かし、施策効果を最大化させるかが大切です。
しかし、「施策のアイデアがついありきたりになってしまう」「良いアイデアを思いついて取り組んではみたものの思うような効果を発揮しない」などと、日々頭を悩ませている担当者は多いでしょう。こうした課題を解決するために、必要となるのが「インサイトの発見である」と著者は語ります。
本書では、実際に業界内で実績を出しているマーケターの思考プロセスを分析。センスの有無で捉えがちなインサイトの発見を、誰もが真似できる“思考法”として紹介しています。
インサイトの定義は“人を動かすホンネ”
本書では冒頭にて、人によって解釈が異なりがちな「インサイト」を定義している点が印象的です。その定義づけのために著者はまず、実績豊富なマーケターに対して「インサイトとは何か」を問うインタビューを実施。そしてその回答の共通点を抽出した結果として、「インサイト=人を動かす隠れたホンネ」と定義しています。つまり、生活者自身が気づけていない本当の欲望こそがインサイトであるというのです。そしてこの欲望を正しく言語化し、欲望に見合うような価値を提供することで、生活者の行動を促すことができるのだと著者は説明しています。
とはいえ、たとえインサイトの定義がわかったとしても、実際にその「インサイトを発見するための方法がわからない」という方は少なくないでしょう。
そこで著者は、高い確度でインサイトを発見するための思考プロセスとして「出世魚モデル」を紹介しています。
センスの良い人が行っていた「出世魚モデル」の思考法とは?
出世魚モデルでは、インサイトを発見するための思考モデルを次の五つのステップとして定型化しています。
- 日常の中の違和感に目を向ける
- 違和感を抱いたのはどんな常識か?
- 常識の裏には、どんなホンネが隠れているのか?
- 隠れたホンネを、自分の納得いく言葉にする
- 自分の言葉をみんなに信じてもらう
インサイト発見のプロたちは、誰もがこの五つのプロセスを共通で辿っているのだと著者は言います。つまり、一般的にセンスが良いと思われている人は、「瞬間的にインサイトを見つけている」のではなく、「経験や鍛錬を重ねることで五つの思考プロセスを瞬時に処理している」と語っているのです。
本書では、このような五つのステップにしてインサイト発見の方法をわかりやすく解説。センスの良し悪しで語られがちな「インサイトを発見する方法」を一つの思考法として再現性の高い形で紹介しています。
「センスの良い施策が考えられない」「消費者インサイトの捉え方がわからない」と悩む方や、消費者インサイトを正しく把握して多くの人の心に届くプロモーション施策を実施したいと考える方にお薦めの書籍です。