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D2C企業と探る、BX(ブランド体験)の可能性

FABRIC TOKYOがD2Cで実現する、消費者に半歩先の未来を見せるブランド体験

 Webが生活の一部になったことで消費者の興味・関心は細分化され、単一のメッセージを広く発信するだけでは消費者を動かすのが難しくなってきた。多様性を当たり前に受け入れ、自分らしさを尊重する「Z世代」はその傾向が顕著だ。この状況でマーケティングの課題を解決し、売上拡大に必要な概念「BX(Brand Experience:ブランド体験)」をテーマに、wevnal代表 磯山が各社の考え方や取り組みを伺う連載。第4回はオーダーメイドのビジネスウェアを展開するD2Cブランドを手掛けるFABRIC TOKYO代表の森氏に話を聞く。

オーダーメイドスーツの敷居を下げ、より身近なものにしたい

磯山:FABRIC TOKYOさんは、店舗でサイズを計測し、登録するとオーダーメイドのスーツやシャツをWebから購入できるD2Cサービスを展開しています。実は私も渋谷の店舗へ計測に行ったことがあります。

森:そうだったんですね。 ありがとうございます。

磯山:オンラインとオフライン両方で商品・サービスを展開するブランドが増える中、すでにOMOの取り組みを進めているFABRIC TOKYOさんにD2Cブランド立ち上げの経緯や消費者とのコミュニケーションについてお聞きできればと思っています。まず、事業概要とブランドの特徴についてお伺いできますか。

森:弊社は「Lifestyle Design for All」をミッションに、誰もが自分らしいライフスタイルを自由にデザインできるオープンな社会を目指しています。

 そのための具体的な取り組みが、オーダーメイドの洋服を広めることです。2027年までの期限付きのビジョンを「Custom Wear for All」として、カスタムウェアの民主化に取り組んでいます。

磯山:これまでのカスタムスーツやオーダースーツはとても高価なイメージがありましたが、FABRIC TOKYOさんの参入によって、本当に大衆化が始まっていると感じます。

森:創業にあたってたくさんの方にインタビューした際に、オーダーメイドスーツの購入におけるハードルとして最も多かった回答が、「値段」と「店舗に入るハードルの高さ」でした。多くの街にテーラーさんはあると思いますが、多くの人はそもそも入れない。

 だからこそ、私たちは中間マージンの発生しないD2Cとファクトリーダイレクトによって価格を下げることとともに、「コンビニに入るかのごとく気軽にサービスに触れていただきたい」という思いで、Web販売にすることで入店のハードルを下げました。価格面では、創業のときから3万円台でオーダースーツが買えるということを実現していきました。

株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役CEO 森 雄一郎氏
株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役CEO 森 雄一郎氏

磯山:D2Cという言葉が日本で一般的になったのは直近3~4年です。ブランドの立ち上げは2014年ですよね。

森:そうですね。D2Cという言葉はまだ日本に入ってきていませんでした。ただ、既存のECプラットフォームにはオーダーメイドの商品を販売する仕組みがありませんでしたし、そもそも手数料が高い。となると、自社サイトを作って直接ユーザーに販売するしかありません。

 自分たちがやりたいことを追求した結果、海外でD2Cと呼ばれている仕組みにたどり着いたという流れですね。

メルカリで体験した「情報の接触革命」が、ブランド立ち上げの追い風に

磯山:楽天やZOZOなど大手ECプラットフォームもある中で、自社サイトでオーダーメイドの商品を買ってもらう。当時はかなりハードルが高かったんじゃないですか。

森:ブランド立ち上げ当時は、スマートフォンが普及してSNSも伸びて、世の中のマクロトレンドがPCからモバイルインターネットに移り変わる時期でした。ネットへのアクセス回数も時間も増えて、「情報の接触革命」が起きていたんですよね。

 すると洋服との出会い方も、ファッション雑誌や大手サイトだけではなく分散していきます。自分たちでコンテンツを提供してメディアコマースを実現すれば、大手のプラットフォームに頼らなくても消費者からのトラフィックが取れるようになってきていたんです。

 新興ブランドが参入しやすくなったタイミングでもありました。ミレニアル世代って、ハイブランドへのこだわりがなくなっている世代なんです。周りが良いとするものを選ぶのではなく、情報を取捨選択して自分の判断軸で選択する人が増えています。丁寧なコミュニケーションで信頼を得ることができれば、有名ブランドでなくても選んでもらえる時代になっていきました。

磯山:時代や技術、トレンドの変わり目に上手く乗ることができたんですね。

森:そうだと思います。当時、私は創業期のメルカリにいたんです。メルカリはサービスリリースから数ヵ月でPMF(Product Market Fit)に至りました。普通のプロダクトであれば2~3年でPMFを目指すにもかかわらず、です。PCからスマートフォンの時代に変わり、ユーザーとの接点がWebサイトからアプリに変わってきたという時代の波に乗れたんですよね。そこで「情報の接触革命」が起きているのを肌で感じました。

磯山:メルカリでの成功体験を踏まえて、ファッション業界も変えられるかもしれないと。

森:メルカリほど上手くやれませんし、比較するのもおこがましいです。ただ、メルカリでの経験で、変化を感じ取る力は養われた気がします。

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この記事の著者

磯山 博文(イソヤマ ヒロブミ)

株式会社wevnal 代表取締役

 2008年大手インターネット企業に新卒で入社し、メディアレップ事業、新規事業開発に携わる。2011年4月に株式会社 wevnal を創業し、LTV最大化を実現するBXプラットフォーム「BOTCHAN」を展開。累計導入社数は600社を超える。

 12期目を迎えた20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/27 07:30 https://markezine.jp/article/detail/40301

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