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MarkeZine Day 2025 Retail

データで紐解く、現代子育て世帯のインサイトとその変化

現代子育て世帯のブランド選択の要因を探る/効果的なメッセージを届けるポイントとは?

いかにして「我が子に必要な値上げ」と思ってもらうか

 子育て用品・サービス市場において、「値上げ」は最終手段とされてきた感があります。というのも、満遍なくどの子育て世帯にも区別なく、商品・サービスを行き渡らせることが良しとされてきた日本独特の空気があったように思えるからです。しかし直近の原材料価格の上昇や円安の影響を受け、各メーカーも値上げを検討せざるを得なくなっています。粉ミルクメーカー各社も苦心していたであろうことは想像に難くありません。

 そんな中、業界首位の明治は2022年9月に「乳児用粉ミルク」「フォローアップミルク(1~3歳頃に不足しがちな栄養素を摂るためのもの)」に関して一律7.5%の値上げを、同年11月から順次実施すると発表しました。続けて、値上げを行ったうちのフォローアップミルク「明治ステップ」シリーズおよび「明治ステップ らくらくキューブ」シリーズの、栄養設計を見直した商品を10月下旬以降発売することを発表しました。

 つまり単なる値上げに終始せず、商品そのものをバージョンアップさせることで消費者に値上げの理由の1つとして説明し、納得してもらうようにしています。

 我々が収集している口コミにも「値上げをするなら、堂々とした告知をしてほしい」「内容量を減らして価格を維持するなど、こそこそした値上げはやめてほしい」という声が複数見られました。値上げをする場合、子育て世帯に「我が子に必要な値上げ」と思ってもらえるような丁寧な対応が必要だといえます。

今、現代子育て世帯の意識・価値観に注目すべき2つの理由

 本記事では現代子育て世帯の意識・価値観を分析してきました。ではなぜ今、このトピックに注目する必要があるのでしょうか。その理由として第1に、現在の妊娠・出産・育児におけるモデルケースが不明瞭で、消費行動や購買行動の分析が難しくなりつつあるからです。

 ターゲットであるママ・パパが入れ替わるうえ、時代によって異なる社会情勢や教育、環境などから影響を受け、意識・価値観は変化していきます。これまでのマーケティング研究では消費行動を分析する視点として、「ライフサイクル」「ライフスタイル」「ライフコース」といったアプローチがありましたが、特に近年はこういった「モデルケース」と想定されるものが失われつつあります。これらのアプローチに根ざした分析が難しくなりつつある以上、地道に目の前の子育て世帯を見つめていくしかないのです。

 第2に、好みが分散しているからです。現代の人々はメディアやデバイスに縛られず、好きなときに好きなものを自由に楽しむことができるようになりました。その結果好みが分散し、「みんなが好む一つのもの」に集中することが少なくなっています。子育て世帯も同様に、「子育て世帯ならこう考える」と決めつけて施策や設計をするのではなく、変化する意識・価値観を見つめアップデートし続ける必要があります。

 このように、子育て世帯にアプローチをする際は、意識・価値観を把握することがマーケティングには欠かせません。加えて、どんなに意思決定が簡単になろうとも「最後の意思決定は自らの意思で行わせる、もしくは自ら選択したと思わせる」ことが重要だと私は強く思います。

 次回は、コロナ禍に生じた子育て世帯の意識・価値観の変化と、子育て用品・サービスを選択する際の意思決定に与えるママ・パパの影響の程度などについて紹介します。

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この記事の著者

飯野 純彦(イイノ アツヒコ)

1980年群馬県生まれ。慶應義塾大学大学院修士、博士課程を経て、滋賀大学経済学部特任講師、秋田大学教育文化学部専任講師。2017年より友人らが起業した株式会社コズレに参画。現在、コズレ子育てマーケティング研究所所長としてベビー用品・関連サービス企業のみならず、子育て世代にアプローチしたい多くの企業のマーケティング・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/01 08:00 https://markezine.jp/article/detail/40610

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