CRMは「顧客に関わるすべてのこと」
1989年創業の株式会社ユナイテッドアローズは、独自のセンスで国内外から調達したデザイナーズブランドとオリジナル企画の紳士服・婦人服および雑貨等の商品をミックスし販売するセレクトショップを運営。「ユナイテッドアローズ」「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」などのブランドやレーベルを展開する。2022年3月31日現在の従業員数は3,826名で、2022年3月期における売上高(連結)は1,183億円に上る。
冒頭、池田氏はCRMの定義を聴講者に質問し、改めてイメージするよう促した。道上は一般的な回答例を「顧客管理基盤の整備やメンバーカードの活用など、ロイヤルティプログラムを介して収集した顧客情報を分析し、こうした手段を用いてリピート促進や顧客生涯価値(Life Time Value)の最大化を目指すこと」と説明する。
これに対し池田氏は「CRMは顧客に関わるすべてのことだと思っています。この問いに対する正解はなく、それぞれの企業・組織が顧客との関係を定義する中で見出すのがCRMの定義です」と従来より広義で捉える見解を示した。
KPIは売上やLTVとつながっているか
では、自社が定義するCRMに対し、どのようなKPI(重要業績評価指標)を設定すべきなのか。
池田氏は「多くの担当者は『自社ではKPI設定ができています』とおっしゃいます。しかし、『そのKPIは何につながっているか』を問うと、明確に回答できる方は少ないです。たとえば、アプリの会員登録数やアプリ利用の満足度などをKPIとしている企業は多いでしょう。では、そのKPIが自社の売上やLTVにきちんとつながっているか考えてみてください」と、現状の課題を指摘する。
KPIをLTVとした場合、LTVを求める計算式は複数が考えられる。池田氏は例として4つの計算式を示し、次のように指摘した。
- 継続期間×購買頻度×顧客単価
- 継続期間×購買頻度×顧客単価×収益率
- 継続期間×顧客単価×収益率
- 顧客単価×粗利÷解約率
「上記のどの計算式を用いて自社のKPIを設定するかは、各事業社の収益モデルやサービス形態、大事な要素は何かで異なります。大切なのは、自社にとってのキーファクターを明確にし、担当者やチームをはじめ、全社で『KPIは何なのか』という目線を合わせることです。KPIが何につながっているのかが明確にできなければ、顧客とのコミュニケーションをする際や、各担当者がPDCAを回すうえでも曖昧になってしまうケースが多いと思います」(池田氏)