「ゴールを決めたらビール一生分」のメリット
今年行われているサッカーの年欧州選手権で、共催国であるオーストリアのビール会社が、1次リーグB組でのポーランド戦とドイツ戦でゴールした自国選手に、ビールを一生分無料で提供すると発表した。
ビール会社オッタクリンガーのメンツ最高経営責任者(CEO)は、今回のビール無料提供の発表が、オーストリアチームが勝利するための動機付けになるだろうと述べている。一体、この会社にとってどういう利益があるのだろうか?(利益がないのであれば、株主は納得すまい。)
第一に考えられるのは、スポーツの国家代表を支援することによるPR効果である。スポーツを通したマーケティングは、スポーツマーケティングの重要な機能だ。
スポーツ界ではこの手の話は掃いて捨てるほどある。たとえば、東京五輪でマラソン2連覇した「裸足の英雄」エチオピアのアベベは、帰国後、軍隊で2階級特進して大尉になった。おそらく、日本の自衛隊でも同じような配慮はなされているはずだ。
「ドーハの悲劇」で、ホイッスルを聞いた日本代表ががく然としている一方で、辛うじて出場権を得た韓国は、急きょ大統領が衛星回線で選手の労をねぎらった。そして、選手たちに何頭分かの牛肉と年金を約束したのではなかったか、と記憶している。
韓国では、スポーツの国際大会でメダルを取ると、兵役が免除されるとも聞いた。こういう形で目の前にニンジンをぶら下げられれば、確かに根性の入り方は違うだろう。「きれいごとだけでは勝てない」という聞きなれた議論が浮上するわけだ。
第二に、世界を舞台に戦う自国チームを支持すれば、「ナショナル」な企業としてPRができるというメリットだ。詳しく説明する前に、ここで「スポーツとナショナリズム」という問題に触れないわけにはいかないだろう。