言葉のプロが人を動かすための信号機の法則を解説
今回紹介する書籍は『ほしいを引き出す 言葉の信号機の法則』。著者はコピーライター/クリエイティブディレクターの堤藤成氏です。
堤氏は新卒で電通に入社し、クリエイティブ、デジタル、プロモーションの部署を経てマレーシアのELM Graduate SchoolでMBAを取得。現在はスタートアップのフェズにてクリエイティブ・ディレクターとしてオランダと日本を行き来しながら活動されています。カンヌライオンのGOLD、宣伝会議Advertimes第1回コラムニストグランプリなど、多数の受賞歴がある人物です。
本書では言葉のプロである堤氏が、人を動かす言葉、人が買いたくなるような言葉の作り方を解説しています。
そもそも私たちの日常生活において、「言葉」と関係ない人はいません。仕事で考えても、メールや企画書をはじめ、日誌、マニュアルやSNS等、様々な場面で言葉を使います。堤氏は言葉を「音と形を通じて、意思を伝える方法」と定義し、次のように本書の背景を示しています。
「言葉が信号(シグナル)であるならば、「言葉で人を動かす」ための原理原則は、『信号機』から学べるのではないか?」(P.19)
では信号機に学んだ原理原則とは一体どんなものでしょうか?
売れる言葉は「とどめる赤」「すすめる青」「きになる黃」の3つで理解
堤氏は人を動かすのに優れた言葉が、信号機の赤、青、黄色に合わせて3つの用途に分けられるという法則を見出し、下記のように説明しています。
- 「とどめる赤」=困りごとを抱えた相手に振り向いてもらうための言葉
- 「すすめる青」=相手に価値を感じ、変化を感じてもらうための言葉
- 「きになる黄」=迷っている相手が踏み出すための理由をつくる言葉(P.33)
堤氏がコピーライティングにおいて重要とするのは「どうやって人に『売る』か、ではなく、どうやって人を『うるおす』か、を考え抜くこと」。これらの3つの原則は、困っている誰かの目にとめてもらい、望ましい未来に進んでもらうための言葉だと述べています。
本書では、人を「うるおす」言葉への理解を促す解説が豊富です。世に知られている代表的なコピーが多くの人を動かすことができた理由を、「言葉の信号機の法則」に基づいて分析、解説しており、顧客視点の言葉の考え方がわかりやすく理解できます。
キャッチコピーづくりに重要な「ユーザーの不」とその見つけ方
本書は、良い言葉への理解を促すだけでなく、上記の原則に基づいたキャッチコピーの作り方を具体的に説明しているのも特徴です。
たとえば「とどめる赤」に基づいたキャッチコピーを作る場合については、伝える相手が持つ困りごと、つまり「不」に着目することが重要です。そこで「不」そのものを正しく捉えるための方法として「不不不のフィールドワーク」が紹介されています。
これは、オンラインでもリアルでもとにかく徹底的に「観察」をし、ユーザーが「不」に感じている部分をインプットする手法で、これによって「ユーザーの不」の解像度を上げることができると堤氏は説明しています。
本書は全5章の構成。第2章では「とどめる赤」の法則とキャッチコピーの作り方、第3章では「すすめる青」の法則とタグラインの作り方、第3章では「きになる黄」の法則とCTA(Call to Action)の作り方を解説しています。人を動かすような言葉がなかなか思い浮かばない、言葉に苦手意識があるという方はぜひ読んでみてください。