メモリアルイヤーになるはずだった2020年
鈴木:この3年間は多くの企業がコロナに振り回されてきましたね。最初は「3年も経てば完全に落ち着くはずだ」と思っていましたが、2019年の暮れに立てた3ヵ年計画にはないことばかりが起きました。コロナ禍を迎える以前、御社ではどのようなマーケティングプランを立てていたのでしょうか。
東海林:2019年、当社では開催を翌年に控えた東京五輪に向けて、インバウンドをターゲットとしたマーケティングプランを練っていました。海外から日本へ来られる方々に、生体認証をはじめとしたNECのソリューションを提供する狙いです。「少し先の未来の暮らし」というビジョンの実現に向けて、マーケティング施策を数多くセットしていました。
茂木:日本全体をショーケースとし、ジャパンメイドのテクノロジーを体感していただく構想でした。海外の方から見ると、NECはコーポレートブランドがそこまで強いわけではありません。だからこそ東京五輪をフックに、グローバル規模でブランドの強化を図る考えがあったのです。
鈴木:なるほど。2020年は御社にとってメモリアルイヤーになるはずだったのですね。
東海林:そのはずが、コロナ禍に突入してしまいました。五輪の開催を前に、国内外でフィジカルイベントへの出展を予定していたのですが、それらも軒並み中止です。五輪の開催も延期が決まり、ショーケースの構想はすべて白紙に戻りました。
鈴木:激動の2020年初頭をどう乗り越えたのですか?
東海林:オンライン化に向かって早急に動き始めました。2020年7月には、BtoB領域のイベントマーケティングを完全にデジタル化。当時は社内にオンラインイベント運営の知見がなかったものですから、ALPHABOATさんに支援していただきながら進めたのを覚えています。
初開催のオンラインイベントにのべ3万人が参加
茂木:お客様側にも変化がありましたよね。営業が提案しに来る環境から、お客様自ら情報を取りにいく環境へと変わったためです。その影響もあってか、初回のオンラインイベントにはのべ3万名の方に参加いただきました。
東海林:1つのセッションを約3,000名の方が視聴してくださったんです。リアルイベント開催時の3倍にあたる新規リード数を獲得できた一方、興味本位で視聴されている方もいらっしゃるため「数だけではない」ということに改めて気づかされました。その気付きを踏まえて、2022年は「誰に何を何のために届けたいのか」をより深く考えるようになりました。
お客様にわざわざ足を運んでいただき、企業が一方通行の説明を行うリアルイベントについては、やり方を見直す必要があるのではないでしょうか。ラウンドテーブルのように、車座になって参加者同士が会話できる形態のほうが、参加者に「時間をつかう価値がある」と感じてもらえると思います。
茂木:お客様の役割やお肩書きによって、求めているコミュニケーションの形態は違うはずです。たとえばトップ同士が交流できる場をつくったり、あえて違う業界の方々を集めて新しい発見の場をつくったり、今後も工夫を重ねていくつもりです。
鈴木:今後リアルが回帰したとしても、ビフォーコロナの状態にそのまま戻るわけではないと思います。リアルあるいはハイブリッド開催の必然性と提供価値を定義しなければ、KPIも正しく設計できませんよね。何が正解かはまだ誰にもわかりませんが、考え続ける姿勢が求められると思います。