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コロナ禍で変わったこと・変わらないこと

立ちはだかる「ポテチの壁」をベビースターはどう回避した?おやつカンパニー髙口×ALPHABOAT鈴木

 本連載では、コロナ禍においてもビジネスを成長させ続ける一流企業のマーケターを招き、各社が今描いているコミュニケーション戦略などをうかがいます。聞き手を務めるのは、ブランドコミュニケーションの支援を担うALPHABOATの鈴木睦夫さん。P&Gや日本コカ・コーラなどにおいて、コミュニケーション戦略を推進してきた自身の経験を踏まえつつ、時代に取り残されないコミュニケーション戦略のヒントを引き出します。第4回のゲストは、おやつカンパニーの髙口さんです。

「ポテチの壁問題」をいかにクリアするか

鈴木:コロナ禍はだいぶ落ち着いたと言われていますが、多くの業界・企業はこの3年間で大きな変化を経験しました。おやつカンパニーの場合はどうでしたか?

ALPHABOAT General Manager, Marketing 鈴木睦夫さん
ALPHABOAT General Manager, Marketing 鈴木睦夫さん
1988年にP&Gでキャリアをスタート。NTT/IMJ/コカ・コーラと一貫してマーケティングおよびデジタルマーケティング領域を歩んだのち、2015年に日本郵便へ転じる。DM市場拡大をミッションに、デジタルとアナログを組み合わせる有用性と最適解を3年半に亘って発信。DMに限らず、全てのプリント技術とマーケティングを結びつけて活動をブーストすることを目指し、2018年7月に独立。イーリスコミュニケーションズの共同設立に参画する。2020年4月、全てのマーケティングソリューションと等距離を保ちながら、真のオムニコミュニケーションを実現することを目的に、オムニコミュニケーションコンサルティングオフィスのCEOとして活動を開始した。2021年10月、マーケティング担当のGMとしてALPHABOATに参画。

髙口:実はそれほど変わっていないんです。コロナ禍初期の買いだめ特需により、一時的な売上の変化は確かに見られましたが、マーケティングチームではコロナ禍以前からトライしていた戦略を変えることなく続けていました。

おやつカンパニー 取締役 専務執行役員 マーケティング本部長 髙口裕之さん
おやつカンパニー 取締役 専務執行役員 マーケティング本部長 髙口裕之さん
大学卒業後、中埜酢店(現Mizkan HD)に入社。営業からマーケティングへ。みりんカテゴリー、たれカテゴリーのブランドマネジャーを歴任し「レトルト鍋つゆ」シリーズや「金のごまだれ」などのブランドを開発後、食酢カテゴリーのマーケティングを統括。食品マーケティングコンサルタントなどを経て、日系PEファンド投資先食品メーカーであるフードレーベルセールスの代表取締役に就任し、Exit。2017年に米系PEファンド投資先であったおやつカンパニーへ参画し、マーケティングを導入。2023年1月にExit。

髙口:私が入社した2017年の状況をお話ししましょう。当時は会社全体の売上が伸びていたものの、主力商品である「ベビースターラーメン」で、これまでと違う戦い方が求められていました。

鈴木:ベビースターラーメンと言えば、御社を代表するロングセラー商品ですね。

髙口:調査結果を見ると、ベビースターラーメンは非常に高い認知度を誇っています。しかも総じてポジティブなイメージとともに認知されている。愛されるブランドに必要な要素が揃っているように見えますが、「スナック菓子を買おうかな」と思った人が真っ先にベビースターラーメンを思い浮かべるかというと、そうではありません。いざ買おうとすると「ポテチの壁」がどんと立ちはだかるんです。

 スナック菓子という市場で戦うスタイルがベビースターラーメンにとっての“王道”ですが、その王道が渋滞してしまっている状態でした。信号の前に大きなダンプカーが停まっている状態をイメージするとわかりやすいかもしれません。消費者はベビースターラーメンが嫌いなわけではなく、ポテチの壁によってその姿が見えていないだけだと。そこで、カテゴリーエントリーポイントを増やす作戦に出ました。ポテチの壁でベビースターラーメンが消費者から見えなくなっているのなら、見えやすい道を新たにつくれば良いわけです。

料理に使えるスナック路線に勝機

髙口:新しいカテゴリーエントリーポイントとして「料理に使えるスナック菓子」を考えました。ポテチはサンドイッチの横に添えられていることはあるものの、「料理に使える」というイメージはそこまで強くありません。一方、ベビースターラーメンはスナック菓子と食材の両方に足を突っ込んでいる感じがあります。

ベビースターラーメンの商品ラインナップ(一部)
ベビースターラーメンの商品ラインナップ(一部)

髙口:実際調べてみたところ、スナック菓子市場でのシェアはポテチのほうが高いものの、レシピサイトに掲載されているレシピの数ではベビースターラーメンが上回っていたのです。もんじゃ焼き屋さんやお好み焼き屋さんなどでも、トッピングとしてベビースターラーメンが用意されていますよね。このことから「ベビースターラーメンは料理に使える食材として受け入れられている」と考えました。さっそく2018年から「料理に使える」というブランドコミュニケーションを実施したところ、過去5年間で下降傾向に陥っていた需要がV字復活し、一つの成功モデルとなりました。

鈴木:私が以前在籍していた日本コカ・コーラでも、様々な“ウィズ・コーク”のオケージョンを考えていました。「喉が乾いた時」という王道のオケージョンだけでなく、「食事の時」「カウチに座って映画を観ている時」「お酒を飲んでいる時」など、様々なオケージョンが考えられます。オケージョンの広がりとともに売り場も拡張し、ドリンクコーナーだけでなくサンドイッチの売り場にコーラが置かれるなど、結果としてクロスマーチャンダイジングやアップセルを実現できるようになりました。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/06/16 07:00 https://markezine.jp/article/detail/42486

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