マーケティングの本質は変わらない
鈴木:逆に、コロナ禍を経ても変わらなかったことはありますか。
茂木:「誰に何をどうやって届けるかを考える」というマーケティングの本質は、コロナ禍が到来しても変わらなかったです。使うツールや得られるデータは変わりましたが、本質は何も変わっていないなと。
鈴木:おっしゃる通りだと思います。お客様のことを深く知り、ライトタイミングにライトビークルとライトクリエイティブでライトメッセージを伝えることがマーケティングです。そのためにはデジタルだけでなく、紙のダイレクトメールや声のコミュニケーションだって有効かもしれません。オンオフ多様なツールを統合可能な環境が、やっと整ってきたような気がします。

茂木:コロナ禍でデジタル化が加速し、最近になってフィジカルの接点も戻りつつありますが、データドリブンのカルチャーは引き続き残るのではないでしょうか。SFAに登録してあるデータを皆で分析したり、効果的なマーケティングやセールスのアプローチをデータドリブンに導いたり。「データを活かす」という観点がデジタル・フィジカル関係なく定着しました。
先端テックカンパニーとして未来の市場を喚起する
鈴木:コロナ禍で変わったことと変わらないことをうかがってきましたが、今後に向けて取り組んでいることがあれば教えてください。
東海林:2023年1月より、約20年振りにNECのID基盤を刷新しています。長らく同じ基盤を使っていたため、データ統合やデータドリブン経営を目指すにあたり、次のマーケットに向かうための認証基盤とする狙いです。

茂木:NECが率先してデータドリブン経営を実践していく必要があると思います。
鈴木:人間が全員ロジカルに考えられているかというと、そうではありません。どんなに意思やパッションがあっても判断を間違ってしまう可能性はありますから、意思をロジックで補完して正当化していく姿勢が大切ですね。最後に、おふたりがチャレンジされたいことをお聞かせください。
東海林:先行きはわからないことだらけですが、想定しているシナリオはいくつかあります。当社はAIや秘密計算、暗号技術などのテクノロジーを持っている会社です。たとえばメタバースの世界に当社のテクノロジーを搭載したら、新たな価値が社会に提供できるかもしれません。自分たちの技術を駆使して、未知の市場を喚起していくことがマーケティングとしてのチャレンジです。
茂木:AIは効率化の用途で注目されることの多い技術ですが、実はそれ以外にも活用の可能性があるんです。たとえば当社では、お菓子づくりやビールの醸造にAIを使って、その取り組みを発信しています。そんな風に、マーケティングを通じてテクノロジーの新しい使い方を啓発するチャレンジもしていきたいです。