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第107号(2024年11月号)
特集「進むAI活用、その影響とは?」

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最新動向を掴む Z世代とシニア世代、広告市場、プラットフォーマーの変化

 トレンドの発信源となり、消費力の増しているZ世代。そして、国内では最大の人口規模となるシニア世代。近年のマーケティングにおいては、この両世代に注目が集まっている。また、Amazonが広告媒体として大きな存在感を持つようになり、TikTokの影響力が一気に増すなど、プラットフォーマーの新たな動きも見逃せない。MarkeZine編集部ではこれらの動向をまとめ、一望できる調査レポートとして『マーケティング最新動向調査2023』を刊行した。今回は同レポートから、消費者や広告市場、さらに主要プラットフォーマーの動向について一部を紹介する。

※本記事は、2023年2月25日刊行の雑誌『MarkeZine』86号に掲載したものです。

メディア接触とSNS利用率

 日本国内ではインターネット利用率はここ10年ほど80%前後で推移している(*1)。データトラフィックは右肩上がりを続けており、2022年5月のブロードバンド契約者の総ダウンロードトラフィックは推定で月間約26.0Tbps。2017年5月の約8.0Tbps、2018年5月の約10.0Tbpsと比べると激増していることがわかる(*2)

 メディア接触時間(1日あたり・週平均)は2022年に445.5分(*3)。2021年の450.9分から微減しているものの、10年の推移で見ると約1.3倍である。特に、2022年には初めて「携帯電話/スマートフォン」の接触時間(146.9分)が「テレビ」の接触時間(143.6分)を超えた。性・年代別に見ると、10代~40代の男女で「パソコン」「携帯電話/スマートフォン」「タブレット端末」の合計接触時間が過半数を占める。

 SNSの利用率は2021年に78.7%に達し、前年より4.9%上昇した。特に60代、70代の高齢層において10%以上も上昇している。SNSの利用目的は、「従来からの知人とのコミュニケーションのため」が88.6%、「知りたいことについて情報を探すため」が63.7%となっている。「自分の情報や作品の発表のため」は10.1%と、身近な人とのコミュニケーションと情報収集に利用目的が集中している。

図表1 SNS利用率(年度軸)(タップで画像拡大)
図表1 SNS利用率(年度軸)(タップで画像拡大)

 各サービスの利用率を見ると、LINEの利用率が81.6%となり、Twitterの41.6%、Instagramの35.6%が続いた(*4)。2019年と比較すると、2022年にFacebookが33%に減少したのを除き、いずれのサービスも利用率が増加している。特にTikTokは2020年の3.9%から2022年には8.5%へと増加した。LINEについてはどの年代でも約70%~約90%となり、70代では2021年から6.1%も増加して69.0%に。国民全体のサービスインフラとなりつつある。

Z世代は男女で検索行動に違い

 Z世代の消費者動向としては、やはりソーシャルメディアの活用が挙げられる。「ソーシャルメディアに積極的に投稿をしている」と回答したZ世代は37%で、ミレニアル世代(18%)の約2倍だ(*5)。また、「テレビを視聴しながら、スマートフォンで利用するコンテンツ」としても「ソーシャルメディア」と答えたミレニアル世代は45%の一方で、Z世代は68%にのぼる。

 Z世代は新しい情報と接するのもSNSの比重が大きい。「あなたは新しいブランドや商品をどこで知りますか」という質問に対して「Instagram」が全体で51.0%、「Twitter」が48.5%、「動画配信サービス」が45.0%、「TV番組、CM」が43.0%と続いている(*6)。また、「Instagram」の利用率は男性が33.0%なのに対し、女性は69.0%とInstagram重視であることがうかがえる。

 SNSで出会ったブランドを知るためにZ世代も検索を活用するが、トップは「検索エンジンで検索(Google等)」の43.3%となっている。「Instagramで検索」は31.5%、「Twitterで検索」は29.3%とSNSも多用されている。ここでも女性だけを見ると「Instagramで検索」は43.5%で、「検索エンジンで検索(Google等)」の41.5%を上回っている。

シニア世代もスマホとLINEを利用

 シニア世代の消費者動向では、インターネット利用率の増加が注目に値する。2019年の時点で60代は90.5%、70代は74.2%、80代は57.5%となっている(*7)。利用している端末は、60代は「パソコンでのネット利用」が46.0%に対し、「スマホでのネット利用」は52.2%である。70代ではパソコンが27.4%、スマホが23.7%とパソコンのほうが上回るが、パソコンの利用率はほぼ横ばいに対してスマホの利用率はこの数年で急増している(いずれも2019年時点)。

 SNSの利用率は、60代においてLINEが76.4%、Twitterが26.2%、Facebookが23.9%、Instagramが20.6%、TikTokが4.1%である。70代では順に69.0%、14.8%、19.9%、11.5%、1.3%となっており、LINE以外の利用率が他の年代に比べて低いが、毎年少しずつ増加している。

本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、 「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査 2023』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。

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『マーケティング最新動向調査 2023』の詳細をみる

EC市場とメタバースの動向

 ここで、コロナ禍を経てEC市場がどのような状況になっているかを確認しよう。2021年のBtoC-EC市場の規模は20兆6,950億円、前年比7.35%増と前年を上回った。物販系分野が13兆2,865億円(前年比8.61%増)、デジタル系分野が2兆7,661億円(同12.38%増)、サービス系分野が4兆6,424億円(同1.29%増)と、すべての分野で増加傾向にある(*8)、いずれも2021年と2020年との比較)。ただし、コロナ禍の影響がまだ色濃いカテゴリもあり、「旅行サービス」は前年比9.62%減の1兆4,003億円、「飲食サービス」は前年比17.36%減の4,938億円となった。

図表2 BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)(タップで画像拡大)
図表2 BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)(タップで画像拡大)

 物販系分野のEC化率を商材別で見ると、「書籍、映像・音楽ソフト」(46.20%)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(38.13%)、「生活雑貨、家具、インテリア」(28.25%)などが続いている。

 また、デジタル系分野は、コロナ禍に置ける巣ごもり需要以降勢いが続いている。全体の6割近く(58.3%)を占める「オンラインゲーム」が、前年比7.82%増で1兆6,127億円。これに続く規模の「電子出版」が前年比24.23%増で5,676億円、「有料動画配信」が前年比18.47%増で3,791億円となった。

図表3 物販系分野のBtoC-EC市場規模(タップで画像拡大)
図表3 物販系分野のBtoC-EC市場規模(タップで画像拡大)

 2022年に大きく話題となりECとの親和性も期待されるメタバースについては、3月時点での「メタバースの認知状況」は「知らない」が53%、「自社でのビジネスへの活用に関心がある」は10%にとどまった。一方で、87%が「これからビジネスチャンスがある」と捉えており、「新規ビジネスの創出」が47.4%と突出した。

動画、ソーシャルとも広告費拡大

 2021年の日本の総広告費は6兆7,998億円、前年比は110.4%となった。そのうちインターネット広告費は2兆7,052億円で121.4%、マスコミ4媒体広告費の(2兆4,538億円)を初めて上回った(*9)

 ネットにつながったテレビとして急成長しているのがコネクテッドテレビで、普及率は2021年に52.1%に(*10)。同広告市場は前年比337%の344億円、2022年には前年比189%の650億円に達すると見込まれている(*11)。動画広告の配信先となるOTTサービス市場も好調で、国内では2021年(7,151億円)以降、毎年10%から15%成長し、2024年には1兆円市場に到達すると予測されている。

 インターネット広告費の内訳を見ると、2020年時点で合計が2兆1,571億円(前年比22.7%増)、動画広告費は5,128億円(前年比32.7%増)、ソーシャル広告は7,640億円(前年比34.3%増)とそれぞれ大きく市場が拡大した(*12)

本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、 「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査 2023』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。

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『マーケティング最新動向調査 2023』の詳細をみる

主要プラットフォーマーの動向

 最後に、主要プラットフォーマーの2021年の動向を簡単に見ていこう。

 Amazonは近年問題視されているオンラインストアのフェイクレビュー対策を強化し、2020年には2億件以上の疑わしいレビューが顧客の目に触れる前にブロックされたという。また、実店舗の食品スーパーであるAmazon Freshが新たに12店舗オープンした他、7月のPrimeDayでは期間中のAmazon Prime会員の購入は3億アイテム以上、受けた割引は合計17億ドルと過去最大規模となった。

 Googleは2021年10月に大規模な広告主や代理店のニーズを満たす機能を備えた「Analytics360」を発表した。さらに、2022年2月にはGoogle AdsのPerformance MaxキャンペーンやDiscoveryキャンペーンの新しい機能も利用できる「Search Ads 360」を発表。5月には広告主が視覚に訴える広告体験を表示できるサービスを米国で提供することも明らかにした。YouTubeがShopifyと提携するなど、ライブコマースも進展している。

 Microsoftは2022年5月に日本国内で「Microsoft Advertising」をローンチした。検索エンジン、ニュースパブリッシャー、ブラウザなどを広告活用できる。また、Microsoft Edgeでショッピングをする潜在顧客にキャッシュバックキャンペーンを紹介する「Cashback promotions」も発表、広告プラットフォームXandrの買収やNetflixと広告付きプランで提携するなど、広告事業は拡大している。

 TikTokは2022年5月に日本でのサービス開始5周年を迎えた。ユーザーは若年層のイメージが強いが、ユーザー平均年齢は34歳。企業アカウントの運用、官公庁や地方自治体との取り組みも増え、マーケティングメディアとしての成長は著しい。同5月にはブランドがクリエイターに対してUGCの作成を提案できる「TikTok Branded Mission」がリリースされるなど、クリエイティブや広告に関する施策に積極的である。

*1 総務省『令和3年通信利用動向調査の結果』
*2 総務省『我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果(2022年5月分)』
*3 博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所『メディア定点調査2022』
*4 NTTドコモモバイル社会研究所の以下調査をもとに作成 『2019年一般向けモバイル動向調査』『2020年一般向けモバイル動向調査』『2021年一般向けモバイル動向調査』『2022年一般向けモバイル動向調査』
*5 ニールセンデジタル『Z世代とのコミュニケーションでは、動画とソーシャルネットワークの活用方法の把握が重要~ニールセン Z世代とミレニアル世代のメディア消費状況を発表~』
*6 SHIBUYA109エンタテイメント『Z世代のSNSによる消費行動に関する意識調査』
*7 マクロミル『エルダー・シニア層のインターネット利用動向を分析。「VOD」「SNS」のアプリ利用率が伸長、「YouTube」は利用時間が1年半で1.5倍。エルダー・シニア層のデジタルシフトが加速。』
*8 経済産業省『令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)』
*9 電通『2021年日本の広告費』
*10 ビデオリサーチ
*11 サイバーエージェント『AJA、国内コネクテッドテレビ広告市場調査を発表』
*12 CCI/D2C/電通/電通デジタル『2021年日本の広告費インターネット広告媒体費詳細分析』

本調査の全結果とクロス集計の結果に加え、 「マーケティングをめぐる近年の動向の概観」や「主要マーケティングプラットフォーマーの動向」をまとめた『マーケティング最新動向調査 2023』は、翔泳社のECサイト「SEshop」でのみ販売しております。

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『マーケティング最新動向調査 2022』の詳細をみる

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

 翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/03/13 13:37 https://markezine.jp/article/detail/41243