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インターブランドジャパン発表「Best Japan Brands 2023」

成長率TOPはヤクルト/日本の成長ブランドに見られる3つの共通点と、差別性重視の古典回帰が示すこと

 2月16日、インターブランドジャパンは日本のブランド価値ランキング「Best Japan Brands 2023」を発表した。評価価値を上げたブランドに見られたのは、「俊敏力」「整合性」「独自性」の3つの指標を伸ばしているという共通点。これをグローバルの動向と比較して分析すると、日本企業のブランディングが遅れを取っているという状況が見えてくる。インターブランドジャパン 代表取締役社長 兼 CEOの並木将仁氏に、「Best Japan Brands 2023」の概況とそこから読み解ける日本のブランドの現在地、そしてこれからのブランドのあるべき姿を聞いてきた。

「日本のブランド価値ランキング2023」が発表

MarkeZine編集部(以下、MZ):今年も「Best Japan Brands」が発表されました。まずは、このランキングがどのようなものなのか教えてください。

並木:「Best Japan Brands」は2009年から毎年発表しており、今年で15回目となりました。これより先に2000年にスタートしたグローバルのブランド価値ランキング「Best Global Brands」がありますが、日本からこのランキングに入っているのは、直近では「Toyota」「Honda」「Sony」「Nissan」「Nintendo」「Panasonic」「Canon」の7ブランドのみです。それ以外の多くの日本企業においても、客観的な物差しで自社ブランドの価値をベンチマークできるものは必要でしょう。

 「Best Japan Brands」を通してその機会を提供するとともに、ブランド価値をブランディングのゴールやKPIに活用してもらえればと考え、毎年このランキングを発表しています。ランキングの入れ替わりや全体的な動向の変化など、回数を重ねてきたからこそ見えるものがあるのは、おもしろいところです。

株式会社インターブランドジャパン 代表取締役社長 兼 CEO 並木将仁氏戦略コンサルティングファームにて、企業戦略、事業戦略、ブランド・マーケティング、デジタル、M&Aなどにおけるコンサルティングを中心に、包括的に企業の成長を支援。特にオムニチャネル&デジタル時代における顧客体験の向上を通じたブランディング実現を強みとしたコンサルティングサービスを多数実施。インターブランドには2015年に参画。顧客体験をベースとしたブランド価値の向上を、ロジックとクリエイティブの融合から実現することを主眼として、クライアント支援を実践している。
株式会社インターブランドジャパン 代表取締役社長 兼 CEO 並木将仁氏
戦略コンサルティングファームにて、企業戦略、事業戦略、ブランド・マーケティング、デジタル、M&Aなどにおけるコンサルティングを中心に、包括的に企業の成長を支援。特にオムニチャネル&デジタル時代における顧客体験の向上を通じたブランディング実現を強みとしたコンサルティングサービスを多数実施。インターブランドには2015年に参画。顧客体験をベースとしたブランド価値の向上を、ロジックとクリエイティブの融合から実現することを主眼として、クライアント支援を実践している。

 ランキングは、インターブランドの独自手法である「ブランド価値評価」を用いて算出しています。ブランド価値評価は、「財務分析(どれくらい儲かるか?)」「ブランドの役割分析(ブランドはどれくらい将来利益に役立つか?)」「ブランド強度分析(ブランドによる将来利益がどれくらい確実か?)」という3つの枠組みで数値を算出しており、ブランド強度分析では社内/社外で10の指標を設けています。

ブランド価値を高めるための10の視点
【クリックして拡大】ブランド価値を高めるための10の視点

MZ:では、今年のランキング「Best Japan Brands 2023」の概況をお聞かせください。

並木:昨対比で見ると、100ブランドの総体的な成長率は+7.7%と回復基調になっています。ただ、グローバルの成長率+16%と比べると回復の規模やスピードは鈍的です。この違いを分析すると、コロナ禍のパンデミックが明けた後もパーパスを軸にした活動でブランド価値を伸ばせているグローバルに対して、日本は“差別化”と”仕組み化“という古典的なブランドの戦い方に回帰してしまっているという傾向が見えてきました。

「Best Japan Brands(右)」のほうが価値金額の規模が小さいブランドが多く、伸び率の分布もグローバルと比べ0%~マイナス10%に集中している
【クリックして拡大】「Best Japan Brands(右)」のほうが価値金額の規模が小さいブランドが多く、伸び率の分布もグローバルと比べ0%~マイナス10%に集中している

日本の成長ブランドと、グローバルの成長ブランドの違い

MZ:日本とグローバルでそのような傾向の差異が見られるのは、なぜなのでしょうか?

並木:グローバルブランドと日本ブランドの違いを分析するとき、ブランド価値が成長している要因は何か? という論点があります。

 「Best Japan Brands 2023」でブランド価値を成長させた企業には、「俊敏力」「整合性」「独自性」の3つの指標を伸ばしているという共通点が見られました。対して、グローバルの「Best Global Brands 2022」では、それが「志向力」「俊敏性」「共創性」の3つなんですね。大事なのは、これをどう捉えるか? です。

 「志向力」や「共創性」のキーワードは、パーパスブランディングやカスタマーセントリックといった言葉と親和性があります。グローバルでは、「企業(ブランド)として、こんな世界に向かっています」「その世界を生活者と一緒に作っていきます」と明示し、アクションを起こせているブランドが成長している。つまり、消費者もそういったブランドを評価していると捉えられます。一方、日本の成長ブランドに見られた共通点「整合性」と「独自性」を読み解くと、差別性をもたらすブランドを企業としてシステマチックに創造しているというストーリーになります。

 パーパスに基づいて新しい価値を作っているグローバルブランドと、競争環境の中で「いかに勝つか?」にブランドの力を発揮させている日本ブランドとでは、市場を創造し拡大させていくのか、パイの奪い合いをするのかという違いがある。前者のほうが成長率が高くなるのは自明でしょう。

Best Japan BrandsとBest Global Brandsの100ブランド価値総額対比
【クリックして拡大】Best Japan BrandsとBest Global Brandsの100ブランド価値総額対比

 「整合性」は、あらゆるタッチポイントで一貫した良い体験を提供できているかの指標であり、しっかりとブランディングができていることを示す証でもありますから、もちろん日本ブランドのアプローチも正しいと思います。ただ、やって当然とも言えます。「整合性」が成長要因となっているということは、つまり、まだ日本においてはこれが強みになり得るということ。日本が遅れを取っている状況がうかがえます。

MZ:消費者がブランドを評価することを考えると、日本とグローバルとでは消費者の意識の違いもありそうです。日本はブランドの在り方が遅れており、それが市場や消費者に反映されているということでしょうか?

並木:ブランドの経営者やマーケターと話をすると、みなさん「顧客は変わらない」と言われます。消費者は、社会価値や環境価値に対してプレミアムを払わない。つまり、社会価値・環境価値の高い商品にその分高い価格設定をすると、競合にスイッチされてしまうというわけです。

 ただ、これに関しては、私は「鶏が先か、卵が先か」に似た部分があると思っています。市場や消費者においても、どこかでイノベーションとブレイクスルーを起せるはずで、社会価値・環境価値に対するプレミアム価格も今は相対的に高くなっていますが、高止まりし続けることはないでしょう。ですから、やはり、ブランドは社会価値・環境価値をもって、適切な価格で商品やサービスを消費者に届ける努力をし続けなければなりません。消費者だけでなく、投資家の目線もあります。消費者と投資家の目線をブランドがいかにシフトさせていけるかが重要なのではないでしょうか。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/16 14:15 https://markezine.jp/article/detail/41356

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