PMFへの至り方(2)マーケットを変える
続いて、マーケット側を変えることでPMFを達成する3つの方法についても解説した。「こちらもプロダクトをいじる必要性が低いので、マーケターでも取り組みやすい」と栗原氏。
1つ目はマーケットの「ターゲットを変える」。栗原氏は、Akerunの事例を用いて説明した。元々家庭向けにスマートロックのサービスを展開していた同社。資金調達をして反響も大きかったが、リリースから数ヵ月後、顧客に使い続けてもらえていない、つまりPMFしていないことがデータから明らかになったという。そこで過去の問い合わせから顧客の課題を分類して、ニーズのある市場を探索。リリースからわずか3ヵ月で方針転換し、オフィスの入退室管理という市場を発見してPMFに至ったわけだ。この方法について栗原氏は「再現性高くマーケターがやれることではないか」と提言した。
2つ目は「市場の変化に対応する」という切り口だ。たとえばスキマバイトアプリのタイミーは、飲食店のアルバイトを中心に扱っていたためコロナ禍で大打撃を負い、達成していたPMFが外れる形に。しかし逆にコロナ禍で人手不足になっていたフードデリバリーや小売・物流業界へアプローチ。新たな顧客セグメントに展開したことで最高売上を達成したという。
3つ目は「市場を創出する」。カテゴリー自体の認知を増やすことでPMFを達成する方法だ。栗原氏は、電話代行サービスのfondeskの取り組みを例に説明した。代表電話への問い合わせをアウトソーシングして、Slackなどの社内チャットへの通知に変えるというサービスだ。同社が事業を展開するにあたって、電話業務をアウトソースできるという認識がなく、市場が小さいという課題があった。そこで電話代行というカテゴリー自体を認知させるための広告やセミナーを実施。潜在的顧客に向けたプロモーション活動を強化したことで、市場を作り出していったという。
マーケターがすぐに実践できる2つのアプローチ
最後に栗原氏は、マーケターが明日からでも取り組める2つのアクションを紹介した。プロダクト側の「メッセージの見直し」とマーケット側の「ターゲットの見直し」だ。
メッセージの見直しは、シンプルで始めやすいので「ぜひ皆さんやってほしい」と栗原氏。例として、ferretOneというBtoBマーケティングツールを提供するベーシックの事例を取り上げる。同社は元々図表4左側のメインメッセージを置いていたが、ユーザーインタビューを実施したところ「どんなツールかわからない」という印象を抱く人が大半だった。訴求を見直して右側のメッセージに修正してからは、リード獲得数が3倍になったという(他の施策も平行して実施)。
栗原氏は「左側のようなWebサイトや営業資料、広告クリエイティブは多いので、今日・明日からできる改善の事例として参考にしてほしい」と述べる。
もう一つの「ターゲットの見直し」については、Web広告運用の自動化ツールを提供するShirofuneの事例が紹介された。売上が伸び悩んでいた同社は、顧客をビジネスモデルと企業規模などの軸でセグメントしたという。当然、セグメントごとに異なるニーズや必要な機能が見えてきたが、注力するセグメントを絞って機能開発・プロモーション活動を行ったところ、一気に売上が増え、さらなるPMFにつながったという。栗原氏は「こうした既存顧客の分類は、皆さん日々忙しいなかで後回しになりがちですが、やってみると再現性高く売り上げにつながります」と強く推奨した。
今回PMFに至るためのプロセスとして紹介されたのは、プロダクト側からの4つのアプローチと、マーケット側からの3つのアプローチ。「こうしたやり方で自社サービスを見直されるとPMFに近づいていくと思うので、ぜひ参考にしていただければ幸いです」と栗原氏はセミナーを締めくくった。
本記事で取り上げた事例は、MarkeZineの連載「僕たちのPMFの話をしようか」でより詳細にまとめています。ぜひあわせてご覧ください。
