※本記事は、2023年2月25日刊行の『MarkeZine』(雑誌)86号に掲載したものです。
PMFはなぜ重要か
栗原氏は、新卒で入社した企業で新規プロダクトの営業・マーケティングを担当し、そこでの苦い経験が、今回の『新規事業を成功させるPMFの教科書』の執筆につながったという。リードや商談、受注を獲得するために試行錯誤を重ねたものの、そもそもPMFしていない状態であったため、成果を出し続けることが困難だったのだ。
栗原氏は「営業のロープレやWebサイトのUI改善よりも、マーケットにフィットするように商品の強みを磨くなど、プロダクト自体にもっとフォーカスするべきだった」と振り返る。そして、現在多くの企業のマーケティング支援をする中でも、同じ状況でつまずくクライアントが多いという。
では、「PMFしていない」とはどういう状態か。栗原氏によると、たとえば【図表1】の項目に心当たりがあれば、それはPMFしていないシグナルだという。
「お客様から、『新規事業としてサービスをリリースし、競合に対する差別化要素は正直まだないけれども、数字の目標があるので何とかしたい』という相談を受けることがよくあります。しかし、これは明確にまだPMFしてないというシグナルなので、PMFを見直したほうがいいです」と栗原氏は断言する。
では反対に、「PMFしている」とはどのような状態か。PMFとは、「市場を満足させることができる商品で、正しい市場にいること」だというが、かみ砕くとどういうことだろうか。栗原氏は、PMF前後の状況を、山登りに例えて説明する(図表2)。
「PMF前は、必死にテレアポをしたり展示会で名刺を配ったりとエネルギーをかけても、商談や受注にはつながりません。ですが、PMFを見つけることができれば、『問い合わせが殺到する』『組織が拡大して人手不足になる』『サーバーがパンクする』といった状況の変化が起きます」(栗原氏)